
出会い、結婚を決めた地に本屋を構えて文章をばら撒くという良い(肉の)話。
算数の授業。
黒板の前に立つ私。
「はいノート書くぞぉ、ページ数は44ページ。
ほいでぇ、日付は…11月22日っとぉ、
お、今日は、良いふぅ…」
良い夫婦の日。
11月22日、良い夫婦の日。
「良いふぅ…」まで口に出して引っ込めた。
教室には様々な家庭環境をもつ子どもたちがいる。
いらぬ「感情」を生み出さぬよう、
「夫婦の話」は教室では控えている。
「良いふ…ワァン、ワァン、
あぁ、ワンワンニャンニャンの日だな。」
11月22日、ワンワンニャンニャンの日。
我ながら驚きの、緊急回避。

今のところ、教室でペットの話をしてはいけないという空気は、世の中にはない。
でもそのうち。ペットを飼うことができるできないの経済力格差に配慮が必要になる時代が来るかもしれない。
この面白くもなんともない冗談が、100%の冗談とは言い切れないという今の世の中と学校の空気感が、ちょっと怖かったりもする。
話を良い夫婦の日に戻す。
十数年前のある日、若かりし我々ブタコヤ夫婦は、いつ籍を入れるのかということについて、二人で真剣になって考えていた。
いわゆる「結婚記念日」として二人の間に制定される日である。
11月と決めていたので、自然と「良い夫婦の日」が候補に入る。
「ベタじゃない?あまりに」
「ええ、いいんじゃない?忘れないでしょう」
そんなことを話したのを覚えている。
「良い夫婦の日ぃ?まぁねぇ…」
「あ、ちょっと待って、もっと忘れない日がある」
視線を、良い夫婦の日の1週間後に送った。
「11月29日!良い肉の日!」
「いいね!毎年この日に肉を食える!」

かくして我々は、世の食肉関係者がこぞって腕まくりをする日に、区役所へ赴いたのであった。
そして、我々が肉を食える身体である限り、この日は肉を食う日となったのだ。
今思えばこのときから「ブタ」コヤが始まっていたのかもしれない。
夫婦。
夫婦という関係の周りには、人それぞれ、大小様々いろいろある。
職場で口を尖らせてパートナーの悪口を言うあの人にも、ひとつふたつ独特なエピソードがあるものだ。
以前に、名古屋の笠寺という町に配布するタブロイド紙に、私のコラムが掲載されることになったというnoteを書いた。
「コラム」というものを書いたことがなかった私。
これが、なかなかスムーズに書けなかったのだ。
上のnote自体も、コラムを書けないことからの現実逃避で書いている。
「コラム」というものは、noteを書くのとはちょっと雰囲気が違うということを、小田嶋隆氏の書籍から学んだ。奥が深い。コラム。

悩みに悩み、書いては消しを繰り返した。
どうせ書くなら自分にしか書けないものにしたい。
そこで、「夫婦」の話を書くことにした。
なぜなら私たち夫婦は、このタブロイド紙「かさなる」を配る、笠寺という町で夫婦になったのだ。
日本海上を進むフェリーの上。
北海道をバイクで走り回った後、
私はとある決心をする。
「結婚しよう」
思いつくやいなや、当時の彼女、
つまり今の妻に連絡をした。
「今日の夜、見晴台遺跡に来て欲しい」

タブロイド紙「かさなる」が完成したのだ。
私の文章が紙面に掲載され、世の中に放たれた。
紙の本を扱う本屋を志す者としては、これは嬉しい事件である。
相手の目を見て力強く「結婚しよう」の一言が言えるかどうか、当時の私には自信がなかった。
「文章にしよう」 と思いつくやいなや、
フェリーの売店に走っていた。
ノートは売っていなかったので、仕方なく、
フェリーを様々な角度から写真に収めた絵葉書5枚セットを購入する。
窓辺に座り、水平線を見つめながら、
思いを馳せる。
ドッドッドッドッドッドッドッ
フェリーの鼓動と、心臓の鼓動が混ざり合う。
ドッドッドッドッ
ペンが進まない。頭を抱える。
何も書けないまま、
フェリーは港についてしまった。
笠寺というまちに生まれた人と、笠寺というまちで出会い、笠寺というまちで結婚を決めた私が、笠寺というまちに文章をばら撒く。
じゃあ、夫婦のことを書くのが自然だと思った。

ちなみに「見晴台遺跡」とは、笠寺のまちにある大きな遺跡公園のこと。

「見晴台遺跡でプロポーズをした」と答えると、驚かれることが多い。
「なんで?」「遺跡?」「どうして?!」って。
しょうがないじゃないか、
思い出の場所だったのだから。
実家が近かったんだ。
夜の見晴台遺跡。
手元に指輪はない。花もない。
あるのは謎の、白紙のフェリー絵葉書5枚セット。
ここは笠寺公園のベンチ。背後には考古資料館。
ちょっと行ったらきんさんぎんさんの桜の木。
この後妻になる人を目の前に、
わたしは一世一代の大勝負をする。
勧進帳。
こうして読み返すと、まあなんとも恥ずかしい。
わたしはタモリにでもなりたかったのだろうか。
世代じゃない人は「タモリ 勧進帳」で検索してほしい。
真っ白なフェリーの絵葉書を手に、
重たい口を開く。
「えーーっとね…」
笠寺というまちに生まれた人と、笠寺というまちで出会い、笠寺というまちで結婚を決めた私が、笠寺というまちに文章をばら撒く。

そして、笠寺という町に本屋を構える。
そういえば、11月29日って、良い肉の日でもあるけれど、「良いブックの日」とも読める。
良い肉を片手に(?)良いブックを読む。
ブタコヤの日にぴったりじゃないか。

さあ、コラムの続きも、私たちブタコヤの人生も、どうなってしまうのでしょう。
続きは、笠寺で。
笠寺の「かさなる」で。
ぜひともこの「かさなる」を手に取りに、笠寺までお越しいただきたい。

▼マチ・スタンドmotokasa
▼かさでらのまち食堂
▼かさでらのまち箱/かさでら図書館
▼手打ちうどんゆたかや本店
▼喫茶ミハル
▼MUU.
▼マックスバリュ笠寺店
▼喫茶スーズ焙煎所
2024.11.22現在、上記の名古屋鉄道本笠寺駅周辺のお店に「かさなる」は配布されています。この機会に、ぜひ笠寺を訪れ、「かさなる」を手に取っていただけると嬉しいです。
♢♢♢
日本中の本屋巡りの記録を残しています。
ぜひこちらからご覧ください↓↓↓
お出かけ・本屋巡り旅の参考になれば幸いです。
また、本屋をつくろうと計画しています。
応援よろしくお願いします!
♢♢♢
♢♢♢
♢♢♢
♢♢♢
♢♢♢