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あっさりと、退職願を出してきた。
昨日の朝、ついに、退職願を提出した。
電話対応、忘れ物を持ってくる保護者対応、ネットでの欠席連絡確認、専科教員との打ち合わせ⋯
朝の職員室は、ドタバタ。
そんな中、この日の最優先課題は
「校長に退職願を渡す」
これである。
朝だ。朝しかない。
放課後に渡すのは嫌だった。日中、授業をしながらずっと退職願のことを考えていなきゃいけないのは、ちょっと嫌だった。
忙しいけれど、朝しかない。
A4再生紙という広大なスペースの中に、
「私はこのたび自己都合により令和7年3月31日をもって退職いたしたいので、ご許可くださいますようお願いします。」
と、だけ印字された、余白をふんだんに散りばめた退職願。
これを抱えて、職員室を抜け出し、校長室を訪れた。
「校長。こちらをですね⋯」
「おお、ついに持ってきちゃいましたね」
どうやら、先日のnoteに書いた「もう一枚の退職願」は、別のところ?に出すものだったらしく、あれと、これは、違うらしい。
「自分の手で退職願が出せないかもしれない」という不安は、すぐに消し飛んだ。よかった。
「すみません、よろしくおねがいします!」
「はい!受け取りました!」
実にあっけないものだった。
某マンガよろしく「……長い間!!!くそお世話になりました!!!」な心意気で校長室を訪れたつもりであったが、現実は、まあ、こんなもんである。
日中、授業をしながらずっと「ああ、ついに出したんだなあ」と思いながら働いた。
提出してしまえばスッキリするもんで、なんか、心が軽くなった感じがした。
これで、ついに、退職が確定したのである。
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帰宅後、まず妻に報告した。
「おめでとう!」と言われた。
照れくさいが「ありがとう」と返事した。
古くからの友人にも報告した。
「これからだ!」と言われた。
照れくさくて「地井武男?」と返事した。
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一部のアラフォー以上にしか伝わらなくても構わない。
とにかく私は「これからだ」というおはなしだ。
退職願を出した今が、ようやくスタートライン。
⋯にもまだ立っていないかもしれない。
退職の日、3月31日まではあと67日。
今年度の教え子とお別れする、最後のチャイムが鳴る修了式までは、残すところ60日。
土日祝を除いた、授業日、教壇に立つ日数は、たったの39日。
いよいよ、カウントダウンの開始である。
今年は36人学級を担当しているので、ひとり一枚ずつ作成した日めくりカレンダーを、36日前からめくり始めることにしている。
6年生を卒業させるときによく行われる取り組みである。
何度も6年生を卒業させたので知っている。
残り日数が20日台に突入した辺りから、ちょっとだけ心がざわつき始めることを。
最後の教室で読む絵本も決めている。
ドクター・スースの『きみの行く道』だ。
何年生相手だろうが、お別れはこの絵本と決めている。
うーん。大丈夫だろうか。
こいつは、もしかして、読んでいる途中で、泣いてしまうのではないだろうか。
今の私自身が、『きみの行く道』過ぎるのだ。
読んでいる自分に響きすぎてしまう気がする。
とにかく。
いよいよ、来るところまで来た。
こうなってしまうと「残された毎日を大切に生きていく」ということが本当に大切過ぎて、「残された毎日を大切に生きていきたいと思います」というありきたりな言葉しか口から出てこない。
残された毎日を大切に生きていきたいと思います。