『「不確実性」超入門』田渕 直也
概要
『「不確実性」超入門』は、予測不可能な時代において、投資家やビジネスリーダーがどうリスクと向き合い、どのように決断すべきかを解説した書籍です。著者の田渕直也さんは、数多くの投資書を読んだ経験から、不確実性に関する知識や歴史的な教訓を豊富に盛り込み、投資だけでなく幅広い分野で役立つ不確実性の考え方を提供します。不確実性を正しく理解し、適切なリスク管理を行うことの重要性を学ぶことができる一冊です。
本のジャンル
自己啓発、ビジネス、経済
要約
1. 不確実性とは何か?:未来の見えないリスク
本書の根幹には「不確実性」という概念があり、田渕さんはこれを未来の「予測できないリスク」として定義しています。不確実性は、しばしば「ランダム性」とも呼ばれることがあり、突然の株価の変動や予測不能な災害など、予測不可能な要素が影響を与えるリスクです。私たちは通常、予測可能な未来に基づき計画を立てますが、不確実性はその計画に突然影響を及ぼす可能性があるため、その対処が求められます。
この考え方は、単なる「未来を見通す力」ではなく、「予測できない事態にどう対処するか」という視点を重視しています。例えば、過去のデータに基づいて株価の上昇を予想しても、大統領選挙や戦争などの突発的な出来事で株価が大きく変動する可能性があるという点です。田渕さんは、「未来は予測できる部分と予測できない部分がある」として、両者を分けて理解することの重要性を説いています。
2. 歴史から学ぶ不確実性:フィッシャー教授の失敗
著者は過去の事例として、1929年のアメリカ大恐慌前にアービング・フィッシャー教授が行った「株価はこれ以上下がることはない」という発言を取り上げています。フィッシャー教授は当時、経済学の権威であり、株価の安定を断言しましたが、その数日後に株価は大暴落し、大恐慌が始まりました。この例は、不確実性を無視した結果がどれほど深刻な影響をもたらすかを象徴しています。
田渕さんは、この失敗が「誰もが陥りがちな盲点」であると指摘します。どんなに権威ある専門家でも、不確実性が支配する未来を完全に見通すことはできません。この話は、私たちが日々の投資やビジネスでどれほど不確実性を軽視しがちであるかを教えてくれる重要な教訓となります。
3. 不確実性の2つの要素:ランダム性とフィードバック
不確実性をさらに理解するために、田渕さんは「ランダム性」と「フィードバック」という2つの概念を取り上げています。
• ランダム性:これは完全に偶発的な要素で、株式市場で予測不能な変動を起こすものです。たとえば、ニュースの急な発表が株価を一気に上下させることもあります。こうした変動はサイコロを振るように偶然に発生するものであり、統計的に予測することは困難です。
• フィードバック:フィードバックとは、行動が再び元の原因に影響を与える現象を指します。例えば、株価が下がると投資家が不安になりさらに株を売ることで、株価が一層下がるという増幅的フィードバックが生まれます。このようなフィードバックは、単純なランダム性とは異なり、結果が原因に直接影響を及ぼし、予測不能な流れを作り出します。
4. テクノロジーと不確実性:AIや量子力学の影響
本書では、AIや量子力学といった現代のテクノロジーに関連する不確実性についても触れられています。田渕さんは、これらの技術が未来予測に新たな可能性をもたらす一方で、予測不能なリスクも含むことを指摘します。
例えば、AIの予測モデルが株価を左右する時代になりつつありますが、AI自体が不確実な要素を多く含むため、必ずしも正確な予測ができるわけではありません。また、量子力学の不確実性に関しても、私たちがすべての情報を持っていても、将来の出来事を完全に予測することはできないという例として言及されています。このことは、ビジネスにおいても「予測できない事態にどう対応するか」という視点が求められていることを示唆しています。
5. リーマンショックに学ぶ:フィードバックと増幅の恐怖
リーマンショックもまた、不確実性が連鎖的に増幅された例として田渕さんは紹介しています。サブプライムローンの問題から始まったこの経済危機は、金融機関の破綻が連鎖し、世界全体の経済を揺るがす事態に発展しました。フィードバックの影響で、最初の損失が次々と拡大し、最終的には数十兆円規模の損失を生むに至ったのです。
この事例は、フィードバックが引き起こす連鎖的な増幅現象が、不確実性の要素としていかに重要かを示しています。小さなリスクが放置された結果、大きな影響を引き起こし、コントロールが効かなくなることがあるため、不確実性の存在を軽視せず、適切にリスク管理することの重要性が強調されています。
6. バブルと人間心理の影響
著者はまた、バブル経済も不確実性の一例であり、特に人間心理がどのように市場に影響を与えるかを分析しています。バブル経済では、多くの人々が「今の相場は特別だ」と信じることでさらに資産価値が上昇しますが、その背後には特定の心理的なフィードバックが働いているといいます。
たとえば、株価の上昇が「このまま価格が上がり続ける」という期待を生み、それが再び株の購入を促し、さらなる上昇を引き起こします。しかし、ある時点で価格が急落し、多くの投資家が損失を被ることになるのです。このように、人間の心理が市場に自己増幅的なフィードバックをもたらし、それが不確実性を引き起こす原因となっています。
7. 不確実性と柔軟な思考の重要性
著者は、不確実な未来に対処するためには、固定観念に縛られず柔軟に対応することが不可欠だと説きます。未来予測に固執せず、変化が起こったときには素早く対応する姿勢が求められます。著者は、「特定の予測に固執すると、その予測が外れた時に取り返しがつかなくなる」と述べ、変化に対する適応力を養うことの重要性を強調しています。
まとめと感想
『「不確実性」超入門』は、投資家やビジネスリーダーだけでなく、日常生活での意思決定にも役立つ一冊です。未来が予測不可能であることを前提に、どのようにして不確実性に対処するかを学ぶことができます。リンク先のレビューでも「実践的で理解しやすい」と評価されており、多くの読者が不確実性への理解を深める助けとなると感じています。不確実性に対する理解を深めたい方や、リスク管理に興味がある方にとって、非常に有益な書籍です。ぜひ、この機会に手に取って内容を確認してみてください。
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