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学生の間に読破しといて良かった名作長編3選

さてさて。noteを初めて無事7ヶ月たちました。
感想文がいちいち結構な長文になってしまうので、下書きが尽きたりと色々ありますが、なんとか続けております。
勝手にマイベストなども始めてみたりしておりますが、この際色々試してみようかなあと思ったりしております。
とはいえ自分でネタ考えるにもそんなに引き出しの多い人間ではないので、よく名前を出しているほんタメさんの、〇〇な本3選(または6選)的な企画を参考にさせてもらいながらやってみようかなあ、などと思っております。

そんなわけで、本日は、“学生の間に読破しといて良かった名作長編3選”です!
名作の基準がはなはだ曖昧ではありますが、とりあえず、学校の国語の便覧とか教科書とか、はたまた歴史の文化のあたりで出てくるような類の作家さんから選んでみました。

では本日も、独断と偏見でお送りします!
まず1つ目はこちら!

清朝末期から辛亥革命頃までの中国を、王龍の家族を中心に描いたこの作品。
こちら、魔女セレクトではないんですが、やはり魔女、関係しております。
小学生の時かなあ、もやしの芽と根を取っている時に、うちの魔女が「昔の中国はなあ、こうやってもやしの芽と根を取るだけのお手伝いさんがおったんやで。『大地』っていう本で読んだんや」と言っていたのをなぜか覚えておりまして。高校の図書室で急に思い出して借りて読んだんですよね。高3の冬休み前に(笑)。
図書室の先生にド叱られた例のアレです。
時間のある学生時代と言っておきながら、全然時間のない受験時に読んでますが、現実逃避も必要なんです😆
そんなアホな思い出は置いておきまして。
貧農だった王龍が様々な困難もありつつ成り上がっていき、激動の中国を生き抜いていく物語なんですが、当時の風俗や社会情勢などがきっちりと描き込まれていて、この時代を想像することができるようになるので教科書のこのへんの歴史も掴みやすくなりました。実際パール・バックは辛亥革命の時はアメリカに戻っていたとはいえ、この描かれている時代に中国で暮らしていたわけですから、そりゃあリアリティありますよね。中国の富豪の桁違いさとか、日本とは違う感覚で面白いです。あと奥さんの阿蘭がかっこいい。寡黙で聡明、王龍を支え、財を成した夫から疎まれるようになっても慌てず騒がず妻として女主人としての役割を果たし、王家は阿蘭でもってるんじゃないか、なんて思います。時代が変わり、価値観が変わり、王龍が手に入れてきたものが虚しく感じられるようなラストですが、その寂寥感もまたいいんですよねえ。訳も良かったのか、翻訳物ですがスイスイ読めました。
この『大地』とファミリーヒストリーとして書かれたノンフィクション、ユン・チアンの『ワイルド・スワン』もセットでおすすめです。こちらは清朝末期から文革の混乱期を描いていて、これで中国現代史はいけます!(笑)

さて2つ目はこちら。魔女セレクトです(笑)

時は1935年(昭和10年)、帝大を退学した26歳の菅野省三は、東京で故郷由木の旧藩主阿藤子爵家の古文書整理や同家子息の家庭教師をして暮らしていた。帝大同期生との交流、同郷のブルジョア垂水家、増井家との交際の様子が描かれ、2・26事件(1936年)前後の東京、また両家別荘のある軽井沢での生活を通して、戦争に向かう時代の空気が仔細に語られる。ある出来事により阿藤家を辞した省三は、郷里の図書館の職を得る。九州大分の風景の中で、同じ町の若者伊東慎吾との触れ合いがあった。そして1943年のある日、省三に赤紙が来る。中国中部へ赴いた省三は軍隊生活の中で思わぬ人物と再会し、延安の反戦組織の活動を知る。1944年11月、省三は延安めざし、脱走をはかる。

Wikipediaより

大戦直前から戦中にかけてをいわゆるブルジョワ階級(知識階級といってもいいかもしれません。)に属する省三を中心に、様々な出自の人物を描きながら全体主義の時代を悩み苦しみながら生きる青年たちの姿を描いています。それと同時に、いわゆる支配層に属していた人物たちも描くことで、当時の時代の空気を多層的に感じることができる小説です。
正直、読みやすくはないです。慣れてくるとすーっと読めるようになるんですが、その前にひと山越えないといけないタイプの作品です。
ただ、読んで良かったと思います。
これ、初出はこの物語と同じく昭和11年なんですよね。時節柄発表し続けることが難しくなり、翌年中断し、戦後昭和23年に第1部、第2部が出版され、昭和31年に連載完結、第6部出版されたという、長い年月をかけて、書かれた作品です。これもまた、その時代を見つめ続けてきた作者による大河小説なんですよね。
戦争文学というのはこの作品によらず多々あると思うのですが、いわゆる左翼思想というものが日本の知識階級にどのように受け入れられていったのか、そして彼らがどのように抑圧され思想というものが制限されていったのか、ということを知ることができます。自分の主義主張が左右どちらかとかそうしたことは関係なく、省三の悩みもがきながら自身の思想と向き合いながら、社会に飲まれそうになりながら、凄烈に生きる姿に圧倒されます。
また資本家側もしっかりと描き込まれていて、立場の違う者の目線を交差させることで、例えば省三たちの青さや甘さもまた感じられますし、資本家側の俗さやしたたかさもまた感じられます。
ふにゃーっと生きている自分を思わず省みてしまうような作品です。
ちなみに省三のラストシーンがものすごく印象的で、これはもう心に残るラストシーン◯選とかしたら入ってくるぐらいのラストです。
ちなみに私は魔女の熱いオススメの中でネタバレされた状態で読んだんですが、それでも強烈なラストでしたので、これはなんとかひと山越えて読み切って欲しい1冊です。

つづいて3冊目はこちら!

挫折する、でお馴染みのドストエフスキー。
頑張って読みました。
なぜかというと私の大好きな森雅之氏が主演の黒澤映画の原作だから。
映画の方も素晴らしいんですが、やはり舞台を日本に移しているし、ドストエフスキーだけに描き切れてないところはあるだろうということで読みました。ちなみに『カラマーゾフの兄弟』は挫折しましたよ(笑)。
個人的には読みづらいとはいえ、ドストエフスキーの中では読みやすいんじゃないかと思います。一応恋愛小説ですしね。
いわゆる“聖なる愚者”を中心に据えた作品だから読みやすかったのかな、と思うんですよね。
そもそもロシアで生まれた概念だったと思うんですが、遠藤周作さんがよくこの手の人物を描きこむんですよね、重要な役割で。ガストンさんという外国人を小説にたびたび登場させるんですが、片言でもしかするとすこし知的な遅れがあるんじゃないかと感じさせるような人物像で、その分無垢さが強調されていて罪を抱える者に赦しや光を感じさせる人物として登場します。愚かゆえに世俗の穢れから遠く、神の真意を表す者、ということを頭に置いて読めたから読み通せたのかも。
黙示録の引用とかめっちゃ多いし、かなりキリスト教的な物語です。
読みにくさはあれど、美しいんですよね、物語として。説明するのがほんとに難しいのであれこれ書くのは諦めますが(笑)、なんにせよ読んで良かったな、とは思います。
ちなみに、なんだ、映画があるんならそれ見ればいいや、と思った方!映画版も2時間46分のなかなかの大作でございます(笑)。
原節子も久我美子も綺麗だし、三船敏朗はあいかわらずワイルドな男前だし、森雅之は言うに及ばずですので映画版もオススメではありますが、気合はいります😆

ウチの魔女に義理立てして『ジャン・クリストフ』や『魔の山』、『ブッテンブローク家の人々』あたりも入れようかと思ったんですが、とりあえず自分に素直に3つ選んでみました。どれも気合いをいれないと読めないので、社会人になってしまうとなかなか読み通すのが辛いので、ほんと、学生の間に読んでおいてよかったと思ってます。
こんな感じでなんか思いついたらまたやってみようと思いまーす!

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