裁判員裁判導入による死刑判断への影響
死刑判断を担う裁判員の変化
裁判員裁判を導入していない支部では重大事件がなくなってしまったというほど、重大事件はもはや職業裁判官の執務対象ではなくなり、裁判員対象事件がすべて本庁へ行くようになった。つまり新しい時代の死刑判断ではそれを市民が示さなければならない。
裁判員裁判における死刑判断
永山基準(未成年者に対する死刑の適用が問題となった最高裁での基準)というものがかつてはあった。これまでの職業裁判官の死刑基準としては第一に被害者の数を尺度とし、殺害された被害者数が3人以上なら死刑・2人ならケースバイケース・1人なら死刑は選択しないという原則的な死刑基準があった。そして次なる尺度として金銭目的や計画性の有無が考慮されてきた(最初から殺害して保険金を取るために従業員を採用した事例のように。被害者が1人でも死刑になる場合は、計画性及び金銭目的が備わる身代金目的誘拐殺人・保険金殺人・強盗殺人に限られる)。また、殺人を犯して無期懲役の判決後に仮釈放された後の殺人も死刑判決が出されることが多い。終戦直後は毎年100件ほどあったが、1962~2008年では一年間の死刑判決は裁判員裁判導入の前には毎年一桁から十件台。三人以上殺害は死刑率94%・2人殺害は死刑率73%・1人殺害は殺人既遂事例全体に占める死刑判決はわずか0.2%(責任能力的に法的な問題があるとそれだけで他の事情は問わず死刑は無くなるのでそれらは除外したデータ)。死刑求刑判決事件の場合に被害者に落ち度がある場合はかなり稀なので、共感や同情で死刑判断はできないため、死刑判決は道徳や倫理や共感を突き抜けたもの。