「HSP」「繊細さん」と、「Disease Mongering(疾患喧伝)」
HSP。
繊細さん。
最近の流行。
他者の言葉の揚げ足を取り、言葉尻をつかまえ、「傷ついた!」「あなたには私の辛さが分かってない!」「医者としてどうなの」「看護師に向いてない」と攻撃してくる人がたまにいる。
そして、そういう人から「この本を読んで、自分がHSPなんだと気づいた」と言われたりして、ちょっと戸惑う。
傷つきやすいが無神経な人、揚げ足をとったり言葉尻をつかまえたりして「傷つけられた!」と攻撃して相手を傷つける人、というのはわりとたくさんいる。そして、彼らが「HSPと自認する人たち」の中にたくさん紛れ込んでいる現状、HSPはなかなか支持を得にくい気がする。
除外基準が必要なのだ。
たとえば「傷ついたと感じたとき、傷つけた相手を直接批判できる」を除外基準として入れる。こうすると、冒頭に述べたような人はHSPには含まれなくなる。
これによってHSPから除外されたと不満に感じる人も多く出るだろうが、「真のHSP」と言うべき人たちへの誤解が少し解かれる利点のほうが大きいはずだ。
ところが、「HSP」周辺の本や仕事からすれば、裾野は拡げたほうが売れる。だから、除外基準を設けて市場を縮めるよりは、細分化するほうに向かうのではないか。
「人を傷つけることへの心配が過剰すぎて身動き取れなくなるHSP」と「人の言葉に傷つきやすく過剰反応してしまうHSP」というふうに、すべてを呑み込んでしまうのだ。
こうなると「Disease Mongering(疾患喧伝)」と同じ状態である。
私が製薬会社の上層部にいるなら、まず、自分たちが関与していることを悟らせないようにして、HSPという概念を広く認知させる。
次に、精神科の疾患として認められるようロビー活動する。
最後に、HSPに対する向精神薬の治験を行ない適応をとる。これで大儲けだ。
現時点で、すでに第2段階くらいまでは来ているんじゃないか……、なんてのは陰謀論が過ぎるだろうか……?
たとえば、かつて「うつは心の風邪」という言葉が生まれ、精神科受診のハードルが下がり、それによって救われた人たちがいたという。だが、そのムーブメントが、現在しばしば批判される向精神薬の処方過剰につながっているように思える。
「うつは心の風邪」が製薬会社の作戦だったかは分からないが、同じ道をたどることがないよう、HSPという言葉の拡大には、少し警戒しておくほうが良いのではないかと考えている。
とてもよくまとまっている本だった。