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薬剤師のいない薬局!?

「司書がいない図書館って、薬剤師のいない薬局と同じようなものなのよ」
私は司書として2つの学校図書館で勤務をしています。
そして生徒達によくこう言うのです。

 現在日本では「薬局」と看板を掲げているお店は必ず薬剤師が常駐してお客様に対面で医療用医薬品の販売をしています。
ドラッグストアは一般医薬品や化粧品、日用家庭用品・雑貨等を扱っていますが第1類・要指導医薬品を販売する場合には、やはり薬剤師がいることが条件です。

 薬は用法や用量を間違えると命の危険に係ります。まさに毒と薬は紙一重!効き目や副作用が穏やかであると認められた薬は自分で手に取り選ぶことが出来ますが、それでも体質や飲み合わせによっても一人一人合うものは違います。湿布薬やかゆみ止めでさえ、ずらっと並んだ陳列棚の前でしばし考え込んでしまうでしょう?
そんなとき、詳しいスタッフ(薬剤師や登録販売者)に尋ねると、症状を聞かれあっというまにぴったりの商品を選び出してくれます。そのサービスによって私たちは薬を安心して購入できるわけです。

圧倒的な書物の海を自由に漂うことに私たちは飲まれてしまう

 図書館に並ぶ何万冊もの書籍を前にした私たちは
自分の探している本がどこにあるのか、
同じようなタイトルの本のどれが必要なのか、
そもそも何が読みたいのか、知りたいのか
という限りなく自由な海へ放り出されます。
初めて行った慣れない施設なら、なおさら目指す目的地を見失い
書物の海を漂う自由な時間を楽しめる方はそう多くはありません。
中にはこの自由さが苦手で本から遠ざかる方もいらっしゃる位です。

 たしかに本と薬とでは生命に与える影響は全く違います。本によって命に関わる状況には普通はなりません。自分自身で良いと思う本を選ぶことがほとんどでしょう。
しかし、司書は薬剤師と同じように利用者一人一人の要望を汲み取り最適な選択肢を提案できます。なぜなら頭の中に本の世界の航海図を持っているからです。
どこに流行の新しいビーチが出来たのか(Instagramで急に流行ってきた本とかね)。どこに危険な暗礁が隠れているのか(コレ、今のあの子にはキツすぎる内容だワ)。利用者が望む本がどこの国(分類)のどこの島(書架)にあるのか。
好奇心のアンテナを常に高く上げて、伝統と流行の波間を見つめます。

 同じような本をお望みでも利用者の背景によって選書内容は違ってきます。特にセンシティブな内容の本をお望みの場合には提案に注意を払います。お仕事で使われる場合には、関連する考えられる限りの資料をご提案するのですが、心の栄養のためにお読みになる本の場合はその方によって一冊が本当に毒にも薬にもなるという経験をしました。

 人に何かを選んでもらうことにホンの少しの罪悪感と劣等感を持つあなたは間違いなく
他人に迷惑をかけず、
自分のことは自分で決め、
努力が足りない部分は時間をかけることでなんとかする
といった真面目な方です。

 しかし、人はそれぞれ得意なことが違います。得意なことを何十年もやっていればそうでない人よりも近道を知っているでしょう。それぞれが自分の得意なことを持ち寄れば、たくさんの近道が使えます。これを文化と言います。
薬剤師に薬を選んでもらうように司書に本を選んでもらってください。
自分の得意なことをサービスにする。この幸せはお金には代え難いものです。そして利用者が「こんな本があったなんて知らなかった!」と笑顔で言ってくれれば司書たちはそれだけで一日がハッピーです。生きててよかった!

あっ、本のオーバードーズだけはココロの健康に一役買いますから安心して大量摂取なさってくださいね!

次回は薬や本と同じように、プロに選んでもらうインテリアについて書きたいと思います。「毒と薬は紙一重」実はインテリアもそうなんです。


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