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そういえば出版社とのつながりがなかった ~出版コーディネーター編~
「企画書は作れた。マーケティングプランも見えてきた。原稿のイメージも掴めた。でも、出版社とのつながりがない...」
こんな悩みを抱える方は意外と多いものです。せっかく良い企画があっても、それを届けるべき相手にたどり着けないというジレンマ。
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そんな時、多くの方が頼りにされているのが出版コーディネーターの存在です。実際私も多くのコーディネーターの方々から企画を提案され、形にしてきました。そんな私の経験をベースに書いていきたいと思います。
■出版コーディネーターの重要な役割
出版コーディネーターは、単に著者と編集者をマッチングするだけの存在ではありません。役割は多岐にわたります。
まず、著者の「思い」を出版可能な「企画」へと昇華させる重要な役割を担います。
例えば、著者の経験やノウハウを市場ニーズと結びつけ、読者に価値を届けられる形に整理します。
また、出版社の求める要素(3C分析、マーケティングプラン、類書との差別化ポイントなど)を企画書に盛り込み、説得力のある提案へと磨き上げていきます。
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次に、適切な出版社の選定も重要な仕事です。
コーディネーターは各出版社の特徴(得意とするジャンル、ターゲット読者層、販売チャネルなど)を熟知しており、著者の企画に最適な出版社を見極めることができます。
これにより、企画が採用される可能性が高まるだけでなく、本が売れる可能性も上がります。
さらに、出版までのプロセス全体をサポートする伴走者としての役割も果たします。
企画の練り直しから、原稿作成のアドバイス、出版社とのコミュニケーション調整まで、著者が安心して本作りに専念できる環境を整えます。
特に初めての出版に挑戦する著者にとって、この伴走型のサポートは心強い味方となるでしょう。
■なぜ出版社と直接つながることが難しいのか
出版業界の実態をご存知でしょうか。日本には定期的に本を出版している出版社が数百社あると言われています。各社に平均10人の編集者がいると仮定すると、年間で実に2万人もの著者との出会いが必要になります。
400社×10人×新刊5冊=2万人
これだけの数字を見ると、どこかしらとつながれそうなものですが、実際にはそう簡単ではありません。
その最大の理由は、編集者の多忙さにあります。一人の編集者は常時2~3本の企画を抱えており、それぞれの企画で多くの専門家との調整が必要です。
デザイナー、イラストレーター、校正担当者、ライターなど、一冊の本を作るために必要な人材は実に多岐にわたります。
さらに、厳しい企画会議を通過させるための企画の練り直しや、マーケティング戦略の検討も欠かせません。
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新しい著者の開拓にも時間を割きたいところですが、現状の案件をこなすだけで手一杯という状況が一般的なのです。
また、著者側の課題として、効果的な企画書の書き方を理解していないケースも多々あります。3C分析の活用や、トレンド分析、読者ターゲットのインサイト分析、類書調査など、出版社が求める要素が欠落していることが少なくありません。本来なら編集者がサポートして練り上げていくべきところですが、時間的制約からそれも難しいのが現状です。
■出版コーディネーターの重要性
ここで注目したいのが出版コーディネーターの存在です。
彼らは編集者との強い信頼関係を築いており、企画を洗練された形で提案することができます。編集者にとって、信頼できるコーディネーターからの提案は、貴重な情報源となっているのです。
コーディネーターは日頃から編集者と密接なコミュニケーションを取っており、飲み会や食事会を通じて人間関係を構築しています。また、企画のブラッシュアップに長けているため、編集者が求める要点を押さえた提案が可能です。これにより、企画会議への道筋も見えやすくなり、著者、コーディネーター、編集者の三者にとってWin-Winの関係が築けるのです。
■良いコーディネーターの見つけ方
では、どのようにして自分に合った出版コーディネーターを見つければよいのでしょうか。以下のポイントを意識して探してみましょう。
まず、コーディネーターのホームページやSNSを詳しくチェックすることをお勧めします。特に重要なのが、トップページに掲載されているコアメッセージです。大きく分けて「思いを形に」という著者に寄り添うタイプと、「誰でも本を出せる」という実現性を重視するタイプがあります。
前者は、ベストセラーになるかどうかは別として、著者の想いを最大限活かした本作りをサポートしてくれる可能性が高いでしょう。後者は、より実践的なアプローチで背中を押してくれる傾向があります。人生一度きりの出版に挑戦するのですから、「ここでダメなら仕方ない」と思えるくらい信頼できる人を選ぶことが重要です。
次に、過去の実績を丁寧に分析することをお勧めします。
ホームページの実績ページ、特に1ページ目に掲載されている本が、そのコーディネーターの得意分野を表しています。例えば、ビジネス書を出したい方が実用書中心のコーディネーターを選んでしまうと、望むような結果が得られない可能性があります。
さらに、実際に手がけた本を30作品程度ピックアップして、その傾向を分析してみましょう。ノウハウ特化型なのか、着眼点重視なのか、著者の生き方に焦点を当てているのか、経営者向けなのかなど、その特徴を把握することで、自分の企画がどのように展開されるかの予測が立ちやすくなります。
コーディネーター自身が出版している本にも注目です。
特に出版に関する本があれば、必ずチェックしましょう。そこに書かれている考え方やノウハウが、実際の仕事ぶりを反映していることが多いためです。感情論に偏っていないか、マーケティング理論に基づいているか、実績は十分かなどを確認することで、その人の実力がより明確になります。
■コーディネーターの経歴による特徴
コーディネーターの経歴も重要な判断材料です。
大きく分けて、出版業界出身(元編集者など)、マーケティングなど異業種からの転身組、元著者の三つのパターンがあります。
元編集者は本作りの専門的なノウハウに長けており、企画作成から目次構成、ライティング、さらにはカバーデザインやタイトルの検討まで、幅広くサポートしてくれる可能性が高いです。
マーケティング出身者は、市場のニーズ分析や販促戦略、ブランディングの観点から企画を組み立てるのが得意です。市場の動向を見据えた企画作りを重視する方には、この経歴の方が相性が良いかもしれません。
元著者、特にベストセラー作家の経験を持つコーディネーターは、執筆のコツや類書分析、強いコンテンツの作り方に長けています。また、編集者とのコミュニケーション方法も心得ているため、スムーズな本作りが期待できます。
最後に忘れてはならないのが、人柄の確認です。
企画から出版まで約1年という長い道のりを共に歩むわけですから、セミナーなどで実際に会って相性を確かめることをお勧めします。
たとえ実績が素晴らしくても、価値観が合わない人とでは良い本は作れません。信頼関係を築ける人と一緒に本作りができるかどうかが、成功への重要な鍵となるでしょう。
出版の夢を実現するために、ぜひ自分に合った出版コーディネーターを見つけてください。それが、思いを形にする最短の道となるはずです。