【本085】『牧師、閉鎖病棟に入る。』
著者:沼田和也 出版社:実業之日本社
私がずっと積読してて、娘が先に読み「これ面白いよー」と薦めてくれた本です。牧師が精神を患い閉鎖病棟に入り、そこで出会った人や自分が考え感じたことを綴った物語。
さらさらと読めてしまうんだけど、時々、はっとするような文章に出会います。
「わたしが『ありのままのわたし』と思っている自己像は、そもそも、ほんとうに『ありのまま』のわたしなのか?」
「ありのまま」は、自分にとっては「余計な干渉をしないでほしい」、相手にとっては「他者への無関心さ」を見事に包む糖のような言葉なんだと、作者は言っています。私は、言われてはじめて、「ありのまま」と言う言葉が、人を助ける言葉にもなるし、無責任な言葉にもなることに気づかされました。そして、今まであまりにも軽々しくこの言葉を使っていた...と、反省しました。
私たちは、様々な経験を通して、自らの思考パターンを身につけていきます。「ありのままの自分」と思っていることが、じつは、自分の身を守るため、あるいは、心地よく生きるためにまとってきた思考パターンがつくりあげたものかもしれない。そんなことも思いました。
ちなみに、娘は「ありのまま」にはあまり気に留めていなくて「相手にも言いぶんがある」というフレーズが心にささったようです。
それぞれに新しい気づきのあった本でした。