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【本087】『失われたものたちの本』
著者:ジョン・コナリー 出版社:創元推理文庫
宮崎駿監督「君たちはどう生きるか」のベースになった小説と聞いて読みました。
母親を亡くした深い悲しみと再婚した両親、弟に対する怒りを抱えた少年デイヴィッドは、本のささやきが聞こえるようになり、やがて、死んだはずの母の声に導かれて物語の王国に迷い込んでいきます。
そこは美しい物語の世界とは真逆。赤ずきんが産んだ人狼や子どもをさらうねじくれ男など、残酷な世界でした。それでも、母の声の謎が知りたくて、旅の途中で出会うキコリやローランド等の助けをかりながら城を目指します。
訳者あとがきに「前半で語られるデイヴィッドの現実世界と、後半のファンタジックな要素とを、線で結びつけ合わせながら読み進めると、この物語を読む楽しさが深まるように思います」とあります。
何度も無理だと思いながらも前に進む少年。訳者の言葉を借りればそのひとつひとつの試練が彼の人生における試練なんだと思います。こうして、最後には自らの家族への葛藤も乗り越えていきます。少しずつ成長を重ねる姿に感動しました。
ただ、かなり描写がダークで残酷です。大人向けのファンタジーかもしれませんね。