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レア・ドムナック監督『ベルナデット 最強のファーストレディ』鑑賞しました!

皆さん、こんにちは!書肆喫茶moriの店主です!

11月8日公開の映画『ベルナデット 最強のファーストレディ』観てきました!

名優カトリーヌ・ドヌーヴがフランスのシラク元大統領夫人で元政治家のベルナデット・シラクを演じる最新作!
監督は本作で長編デビュー作となるレア・ドムナック監督。

そう、公式サイトにも記載されているようにレア・ドムナック監督の次回作が、現在クラファン中のフランスの痛快ラブコメマンガ『男の皮(Peau d’Homme)』なのです。

これは観ねば…!!!

強い使命感のもとに観に行ったわけですが……

いやああ~~~!!!
めちゃくちゃ面白かった~~~!!!

これは2024年のベスト映画かもしれません!
この痛快さはポライト・ソサエティと比肩する…!!

ということで本記事では映画『ベルナデット 最強のファーストレディ』を鑑賞した感想をつらつらと書いてみようと思います!

実在の人物を知らなくても面白い!
自分を蔑ろにしてきた社会に反旗を翻す、ひとりの女性の物語!

まず最初にお断りを入れておきたいのですが、私はフランスの政治にはまったくもって疎くて、シラク元大統領の名前くらいは知っていても特段これといった明確なイメージもなく、いわんやベルナデット・シラクさんという政治家についてもお恥ずかしながら全くの無知で観に行きました。

きっと二人のパーソナリティに詳しかったり、実際のエピソードをご存じの方はまた違った観方をされたのだろうなぁと思います。

でもまずお伝えしたいのは、知らなくても十分に面白い!

そして冒頭でもしつこく念を押されます(笑)。
「この物語はフィクションである」と。

もうこの冒頭からしてサイコーなのですよ!
のっけからノックダウンさせられました。この映画は傑作に違いない、と。

教会に行くベルナデット。BGMには聖歌隊の歌声が流れてきます。
ええ、単なるBGMと思っていたら、よくよく聞くと歌詞がこの映画のあらすじになっているのです!
しかも「この物語はフィクションである」と続きます(笑)。

もちろんこの映画は、実在の人物を描いた物語です。
でも私はなんとなくレア・ドムナック監督が描きたかったのは、ベルナデットの伝記映画というより、彼女を通した「あるひとりの人間の生き方」なのではないかと思うんです。

ベルナデットという人物は、貴族の生まれで古い考え方の持ち主。
家父長制どまんなかの夫は、妻は一歩さがって夫をサポートすべきという信条。明晰なベルナデットに頼っているところはあるものの、それを対外的に見せたくないし、自分が威張っていたい人。

ベルナデットも頭は切れるけれど、あまり世渡り上手とは言えない不器用な人なんですよね。
思ったことをまっすぐに言ってしまって周囲から煙たがられたり、夫の広報アシスタントをしている次女クロードからも邪魔者扱いされています。

ベルナデットが言ってることは正論なんだけど、なんか妻がでしゃばるな、的な感じとか、「出る杭は打たれる」というか……。
日本でもよくあると思うんですよ!!
もちろん夫婦間の関係でもそうかもしれないんですけど、会社とかでも上司に正論を率直に言ってしまったがために嫌われたり左遷されたり、何かのコミュニティのなかでも仲間内からはぶられたり……。

もう映画がはじまった直後から、ベルナデットの不器用さに共感の嵐…!

そんなふうに家族にも煙たがられ蔑ろにされてきたベルナデットが反旗を翻して、あの手この手で周囲の人間たちを見返していく物語です!

こんなの面白くないわけがない!!!

ベルナデットとコンビを組むベルナールとの男女バディが熱い!

さてこの映画、もちろん亭主関白な夫をぎゃふん(死語(笑))と言わせる物語であるし、そういう文脈ではフェミニズムの物語ともいえます。
ただ、単純に女性の話だよね、とは言えないのが、ベルナデットの参謀になるベルナール・ニケの存在です!

このふたりのバディが熱い!!

ベルナールもベルナデットと同じく、周囲からその能力を認められていなかった人物。
ベルナデットも最初に自分の広報担当としてベルナールを紹介されたときに「あのぼんくら?」みたいなことを言ってましたね(笑)。

そう、ベルナールもまた、才能はあるけれど周囲からは理解されない、ベルナデットと同じ境遇にある人物なんです。

このふたりがコンビを組んで、悪評あふれるベルナデットのイメージを刷新して、どのようにして有能な政治家として大活躍するまでに至るのか…!!
気難しいイメージのあったベルナデットがどんどんイメチェンしていって、めちゃくちゃカッコよくなっていく!
ふたりを顧みなかった人々をぎゃふん(死語2回目(笑))と言わせるエピソードの数々がものすごくコミカルに描かれていて、サイコーに楽しくて、観ていてパワーが湧いてきます!

それでも夫を愛している…家族の愛の物語

夫は本当にダメダメな人物として描かれています。
ベルナデットが政治家として活躍していくのは、沽券を潰される形になる夫やその取り巻きにとっては、面白くない展開ですよね。

ベルナデットはベルナデットで、テレビに映る夫のアホ面をベルナールと一緒に笑い飛ばしたりするシーンも出てきます(笑)。

とはいえ長年連れ添ってきた夫婦。
夫が脳梗塞で倒れたときにベルナデットはつぶやきます。
それでも夫を愛していると。
あれだけ自分を抑圧し、蔑ろにしてきた夫なのに……。

そして子どもたちとの関係性もこの映画の見ものです。

夫のサポート役として活躍して、ベルナデットをうざがる次女はもちろん。

これまでベルナデットの味方だった長女とも、イメージ戦略に利用する形になってしまったために仲が拗れていきます。

長女とのシーンは、政治家としての必要性に迫られたベルナデットの逡巡や迷いを思うと胸が苦しくなります。

政治家であるとともに、妻であり、母である。
家族の物語としてもとても見ごたえのある作品でした。

ファルセットを起用した、ちょいちょい挟まる聖歌隊のコーラスが最高!

この映画は冒頭から聖歌隊のコーラスで始まるのですが、このちょいちょい挟まる音楽パートが私はとても気に入りました!

とくに最後のコーラス。
ソプラノのパートをファルセットの男性が担当していたのです。
このあたりにも、古臭いジェンダーステレオタイプを打ち破っていくといこうというレナ・ドムナック監督の思いが感じられます!

レナ・ドムナック監督の次回作『男の皮』!

そんなレナ・ドムナック監督の次回作が、フランスで大旋風を巻き起こしたバンド・デシネ(フランス語圏マンガ)『男の皮』の映画化です!

『男の皮』はバンド・デシネ専門店メゾン・プティ・ルナールのティボーさんが語ってくださったように、フランスで2020年の刊行直後から驚きの売上を記録し、マンガ賞を総なめにした大人気マンガなのです!

なんと2025年1月にはフランスのモンパルナス劇場でミュージカル化されます!

音楽を担当するのはBen MAZUÉ。
この方の音楽めっちゃ良いよーとオススメしてもらって最近よく聞いているのですが、マジでめっちゃ良い!
最近のヘビーローテーションになっています(笑)!

レア・ドムナック監督による『男の皮』の映画化は、ちょうどフランスで『ベルナデット』が劇場公開された2023年の時点でニュースになっていました。

Après son succès en librairie, la bande dessinée culte « Peau d’homme » va être adaptée au cinéma(書店でのヒットを受けて『男の皮』映画化)
https://www.ouest-france.fr/bretagne/rennes-35000/apres-son-succes-en-librairie-la-bande-dessinee-culte-peau-dhomme-va-etre-adaptee-au-cinema-4935f3c6-69c2-11ee-b9a5-ad1ff4e9f9fb

『男の皮』のあらすじはこんな感じ。

舞台はルネッサンス期のイタリア。
良家の子女ビアンカは18歳になり結婚適齢期。親が決めた裕福な商人ジョバンニと結婚することになっています。
しかし知らない相手と結婚することは嫌だと感じたビアンカに、親戚の叔母さんが一族の女にだけ伝わる家宝を手渡してくれます。
それが「男の皮」。
なんとその皮を着ると、男になることができるのです!
皮を着たビアンカは少年ロレンツォになって許婚のジョバンニに会いに行くのですが…。

『男の皮』もジェンダーステレオタイプをぶち壊してくる物語です。
理不尽な因習や慣例で主人公を束縛しようとする社会に反旗を翻す、痛快で胸のすくようなコメディなんです!

読んで本当に面白かったー!!と爽快な読後感を味わえる作品だし、ジェンダーやフェミニズムについても思索を巡らせたくなるとても奥深いテーマをはらんでいます。

『男の皮』の原題は『Peau d'Homme』。
タイトルはシャルル・ペローの『Peau d'Âne(ロバの皮)』のオマージュで、フランス人なら『Peau d’Homme』と聞いてすぐに『Peau d'Âne』が思い浮かぶそうです。

『Peau d'Âne』と言えば日本語では『ロバの皮』とも訳されますが、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の1970年の映画『ロバと王女』が有名ですね!

『ベルナデット』で主役を演じたカトリーヌ・ドヌーヴが王女を演じたミュージカル映画ということもあり、『男の皮』の映画もミュージカル仕立てになるのか、といった噂がささやかれているようですが、果たしてどのような作品にしあがるのか…??
『男の皮』作画のザンジムは上述したインタビューのなかで、自由に翻案してもらいたいと述べています。

いずれにせよ、『ベルナデット』も『男の皮』も、型破りな主人公が理不尽な社会に反旗を翻すもの、ものすごく痛快でユーモアあふれる作品という共通点があります。

しかも『男の皮』も『ベルナデット』と同じく、脚本はレア・ドムナック監督とクレマンス・ダルジャンの共同執筆されるそう。
『ベルナデット』があれだけ面白かったのだから、『男の皮』も面白いはず!

2023年の記事だと、2024年2025年くらいに完成予定ということでしたが、完成が楽しみでなりませんし、日本でも劇場公開してくれることを心から願います!

そして、その前に原作マンガである『男の皮』を何とか日本語で翻訳出版したい…!

2024年12月16日までクラウド・ファンディングをしています!

映画『ベルナデット』を観て面白かったなと思われた方、ご興味を持たれた方はご支援・情報拡散をお願いします!!!!


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