瓶詰の手紙はネットの海をさすらう
■書店員のイメージって? 私は未確認生物みたいなものだと思ってました
本が好きでたまらなくて、本に対する知識があって、おススメの小説なんかを訊くと教えてくれる……、そんなイメージをもっていませんか?
私もそうでした。書店員として入社したときは、さてどんな本好き、いや、ブックフリークがいるものかと期待しながら出社したものです。
都会の書店では違うのかもしれませんが、私がいたのは地方都市。場合によってはさらに田舎の店舗に異動することもありました。
パートの方は仕方ないと思うんです。生活のためにパート先を選んだのであって、本好きだから書店を選んだという人が少数派であっても。
でも、私のいた会社では正社員でもほとんどの社員が本に興味がないまたは読書する習慣なんかないという人たちばかりでした。
たまに本好きだよ! という社員を見つけても、話を聞くとアイドルの写真集しか見ないとか(アイドルの写真集が悪いわけではありませんよ。悪しからず)。
そのため、私は本好きな書店員というのは架空の幻獣とまではいいませんが、未確認動物くらい希少な存在なのでは、と思うに至りました。
■ネットの中には存在している
X(旧Twitter)なんかを見ていると、読書アカウントとして活動している書店員さんをちらほら見かけます。彼らは一体どこのお店にいるのだろうと思います。
もしこの記事を読んだ方で、本に造詣の深い店員さんがいるよ、とご存じの方は教えていただけると嬉しいです。お店とか聞いても、押しかけたりはしませんのでご安心ください。
今は個人の趣味趣向を前面に押し出した個人書店が流行ってきているので、そこには本好きな書店員さんがいるのだと思うのですが、生憎と私の住んでいる地域までその流行の波は届いておらず……。むしろ将来自分がやりたいなとも考えます。
■棚に上がった未確認生物
あんた本好きな書店員だったんでしょ、なら未確認生物じゃない。
そう言われてしまうと言葉に詰まってしまうのです。本好きです。本好きですが、入社し、仕事を覚えていくにしたがって、読書好きから、商人に変わってしまったのです。
本は売る商品であり、売れる商品が正義。
私が好きな本は大抵「売れない」に属する本でした。田舎の書店に「ユリシーズ」が置いてあっても、売れやしません。需要がないので。
本を読む暇がないので、中身は知らず、売れるからという理由で売っていました。中身を読まなくても、あらすじや設定などだけ確認すれば、売れそうかそうでないかある程度かぎ分ける嗅覚も身に着けていました。当時は。
後はPOPの出来が売り上げを左右することもあります。
文章系のPOPは基本的に読まれないので、一言、キャッチコピーでいかにお客様の購買意欲を刺激できるかにかかっています。
売りたいものは、とにかく目立たせる!
数を集めて迫力をもたせたり、お店の一等地に表紙を見せる面出しで複数並べたり、やり方は色々あります。
という商人ぶりだったので、本好きと言えたかどうか。
書店員時代はあんまり本も読みませんでしたし。商品だと割り切ってやらないとやってられなかったというか。
■瓶詰の手紙
メッセージがどこの誰に辿り着くか分からないという点で、瓶詰の手紙を海に流す行為と、メッセージをネット上に発信することは似ていると思います。
ですので、今日の記事は瓶詰のメッセージにしたいと思います。
どこかにいる本好きの書店員さんへ
私のような商魂たくましいだけの書店員にはならず、あなたのその「スキ」を大事にしてください。そして本を探している人、そもそも自分がどんな本を読んだらいいかも分からないような人、そんな人たちの灯火となってほしいと思うのです。
あなたに訊けば、新しい本の発見がある。そんな書店員さんに。
本好きの書店員さんを知る方へ
どうかその書店員さんを大切にしてあげてください。
本屋もクレームなど、苦労が多い仕事です。書店員さんが心折れてしまうことのないよう、見守ってあげて、ときには声をかけてあげてください。
あなたが並べていた本、面白かったよ、でも、いつ来てもいいお店だね、とか。
それだけで報われた思いがするものです。
そしてどちらでもない方へ
手紙を瓶に戻し、再びネットの海に流してください。きっと次の誰かの手に届くでしょうから。
今度本屋に行くときは、そのお店の店員さんが本好きかどうか、眺めるのもいいかもしれませんね。でも、じっと観察しすぎて不審者扱いされても私は責任をとれませんので、ご注意ください。
それでは、ネットの海の畔で流れゆく瓶を眺めながら、みな様のお手元に届くことを祈りつつ。