見出し画像

『ツナグ』っていい

羊毛の世界に触れることなんかないと思ってた。

函館市の隣にある七飯町で工房を開き、羊毛を使った作品制作をしている玉山さんのところに伺った。見たこともないような種類の羊毛の数々が並んでいた。

『羊毛』というもののイメージが特にあったわけではないが、たくさんの色の羊毛、パッと見は同じように見えるが微妙に違う羊毛、玉山さんの作品であるシマエナガ、ホッキョクグマ、ボールに羊毛関連の書籍が置いてあった。羊毛の作品は確かに色が付いているものだが、結構カラフルなものあって、驚いた。

画像1

画像2

画像3

また、羊毛の『状況』によって、名前がつけられている。ここ数年よく聞くようになった『メリノウール』だとすぐに分かるのだが、そういったことではない。もはや全く覚えられていないのでちょっと調べ直したが、糞尿まみれの状態をグリージー、それを洗ったものをスカード、というように状態によって他にも何種類も分けられている。

「そんな刈り取ったすぐの状態で、糞尿まみれだったら、なんにも使い道ないやん!」

と、普通は思うが、脂が化粧品のベースに使われたり、染めた場合の仕上がりも違うらしい。

実は羊毛の歴史は古く、昔から生活につながってきたものだったそうだ。始まりは紀元前6000年頃に牧羊が始まり、紀元前2200年頃にメソポタミアあたりで羊毛を使った毛織物がはじまったという。考えてみれば遊牧民がかなり多かった世界で考えると非常に身近な存在だったはずだ。

遊牧民で有名なモンゴル民族のゲルにも断熱材等で使用されていたそうだ。実際に羊毛は断熱材としても非常に優秀だった。非常に軽く、よく空気を含む素材なので、携帯性にもすぐれ、性能も高い。そして、遊牧民にとっては交換可能で身近な存在だろう。

断熱材は理解されていないことが多いが、空気が1番の断熱だ。焚き火をする場合、焚き火の温度は250℃〜450℃、その焚き火の近くで手を出してもその温度を感じることはない。要するに空気は熱を通さない為、高温であっても空気を伝って人体に熱を伝えることはないということになる。よって、空気が断熱になる。このあたりは細かい話になるので、とりあえずやめときます〜。

羊毛の話に戻ると、フワフワした羊毛を少しだけちぎって手に置いてもらうと、なんとめちゃくちゃ暖かい。これは、羊毛が細い繊維の中に空気を含んでいることで断熱の役目を果たしているからで、手のひらから発する熱を抑えてくれる現象から感じる熱だった。少量でもこんなに暖かく感じるのはすごい!

他にも色々と教えてくれた。フェルト生地、フェルトボール、羊毛のおくるみや布フェルトというものもある。海外では、土に還ることから棺桶を羊毛で作るということもあるらしい。

画像4

今回、ここに立ち寄ったきっかけは、カメラマンが羊毛のことに詳しい人を探しているという話からだ。

前々から玉山さんとは知り合いではあったのだが、きっかけがないとなかなか工房にお邪魔することもなかったので、今回は『人を紹介する』という口実で便乗して伺ってみた。伺ってみて、やはりその世界に精通する人はすごいなと感心しっぱなしだ。

さて、今回のカメラマンの目的というのは、羊毛を使った写真を撮りたいということ。「ここに連れてきてんだから、当たり前やん」…。彼はコスタロウくん。色々と写真に動画にとお世話になっている。そんな彼が力を入れているのは、『ニューボーンフォト』。これはつまり、赤ちゃんの写真だ。

画像5

生まれて間もない赤ちゃんの写真。そりゃ、自分でも撮る!絶対撮る!俺も撮った!でも、こんなにオシャレにはなかなか撮れん!いい瞬間の為にカメラ構えとったら、妻に怒られる!そんな理由で頼むわけではないかもしれないが、こういうのはこの瞬間しかないから、めっちゃいい取り組みだと思う。

そんなコスタロウくんが、「羊毛でおくるみを作ってみたい」という。「めっちゃええやん!」ということで、これは玉山さんしかいない、ということで今回の紹介に至る。

画像6

画像7

まずは、体験してみましょう!ということになり、フェルトボールに挑戦!

『羊毛フェルト』と聞くと、針でチクチクするイメージしかない。というよりも妻が少しやっていたので、それでなんとなく知っているレベル。それが、全然違う方法がある!ということで今回のフェルトボール体験。水に濡らすことで固めていくという。なんとも不思議な話だ。実際に針で刺すだけで固まるのも不思議だった。

『縫う』わけでも『編む』わけでも『織る』わけでもない!

細かい繊維がそれぞれの隙間に入り込んで固まり、まとまっていくというわけだ。奥が深いな〜、専門分野は。それでこのビニール袋に水と羊毛を入れてこねていく。細かい修正をしてもらいながら、とにかくこねていく。今回は、丸い玉ではなく、「しずく型がいい!」というオッサン二人による女子高生のような興奮発言でしずく型にしていった。

画像8

これが完成形!ストラップを通したり、色を均一にしたりとほぼこねただけの我々とは違い、9割は玉山さんに作ってもらったようなもの。まあ、体験てのはそんなもんか。触れて感じることが重要やな。でもいい経験だった!ほんとに!

そんなことまでやってくださり、今後の展開へ!この後は、職人同志がそれぞれの知見と試みで素敵につながっていってもらえればいいなと思う。実際に具体的な話や展望についても話をしていた。今後、どうなっていくか本当に楽しみだ!人と人をツナグというのはほんとに面白い。

いいなと思ったら応援しよう!