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手ぬぐいは実用的で、身近なアート。まだまだ欲しくて止まらない。
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贈りものというのは、自分の好きなものをさしあげることが多い。迷って迷って、結局決め手は「自分はこれが好きだから」。そのためか、私は手ぬぐいをプレゼントすることがかなり多い。手ぬぐいを迷惑だと思うヒトもいるはずで、いるはずなんだけど、だってこんなに便利でかっこよくておしゃれなんだもの、手ぬぐいの良さに気づいてほしいってキモチも含め、また準備してしまう。ごめんね。
手ぬぐいを使うのは、家庭環境だったのかもしれない。江戸っ子の祖母をはじめ父母はフツーに手ぬぐいを使っていた。キッチンにもそうじにも、ハンカチにも汗拭きにも、UVケアにもなんにでも。乾きやすくて柔軟で、タオルとは違った使われ方があった。
手ぬぐいを洗って干すとき、大きく振って「パチン!」と鳴らすのはなんかのルールなのだろうか、縁起を担いでるんだろうか。鉄化するわけでもなし。単なるしわ伸ばしの作業だろうけど、それすら粋を感じる。
東京銀座の歌舞伎座のはす向かいに、足袋と手ぬぐいを扱う「大野屋」という老舗がある。昔はここの手ぬぐいをよく贈り物にしていた。紺と白のキリッとした古典柄や歌舞伎役者好みなど、柄のうんちくも面白く、いつも迷って選びきれずに自分の分も購入してしまっていた。
国内旅行でも、お土産といえば必ず手ぬぐいを選んでしまう。軽くて運びやすく思い出もいっぱい。地域ごとの注染もうれしい。
伝統工芸や伝統染、模様もぐっと惹かれるけど、デザインの幅がかなり広がってきて、デザイナーの皆さんが手ぬぐいを愛してくださってありがたい。POPあり、おもしろあり、コラボあり、異文化あり、特に好きなのはアートやカルチャー系。かなり尖っているものもあり、ストリートカルチャーにも手ぬぐいはベストマッチすると思う、たぶん。かっこいいからぜひ探してみてください。
古かったり大きかったりする、まあ有名どころの神社仏閣では、お守りだけじゃなくてグッズを授与していたりする。多くの人に愛され楽しみになるようにということもあるだろうけど、古い木造建築を改修し、広い敷地を整備するには膨大なお金が必要になるから、お布施や寄付だけでは心もとないんじゃないか。遷宮もあるし、過去に失われた建築を再建する、薬師寺の西塔のような例もある。薬師寺では写経で寄付を集めたけど、やはりなんらかの経済を回す知恵が必要になってくるわけだ。
お賽銭だけではなく、いわゆる投げ銭のような、クラウドファンディングのような意味を込めて、私は神社仏閣のグッズを購入することが多い。推し活にも近いですな、単なる買い物好きと言えばそこまでなんだけど。そこに手ぬぐいがまた登場する。伝統や歴史の雰囲気をまとっていて親和性が高いのだと思う。ミュージアムショップでもけっこう見かける。
般若心経の手ぬぐいは、芸がないと言うと絶対バチがあたりそうだけど、せめてデザインや色に工夫を凝らしてほしいなあと思いつつ手に取る。愛用しているのは春日神社の猫の手ぬぐい。国宝「金地螺鈿毛抜形太刀(きんじらでんけぬきがたたち)」の猫のモチーフをもとに作られたもので、春日大社の国宝殿で購入した。あまりのかわいさに、色違いとトートバッグも入手して、友人に渡すことすらした。すみません、押しつけですが、国宝由来のうんちくがあるのですわ!
京都の伏見稲荷大社の、鳥居が並んでおきつねさんや杉の葉がデザインされた手ぬぐいも、複数枚購入して食器拭きやらなんやらに使っている。唐招提寺の復元された彩色花文の手ぬぐいは、壁掛けやテーブルセンターにしても面白そうだけど、まだ使えてません。
そう、まだ使えていないものがこれまた大量にあるっちゃある。実際に使っているものとまだ開けていないものが半々くらいだ。使わないのもまたもったいないので、松本民芸館の手ぬぐいをおろしてみた。丸山太郎の描いたあざみの花が、白地に紺と緑のぼかしで表現されている。
おろしたてはぱりっとしていて、きちんと感は出るけど肌触りはまだ固いのだ。さてゆっくりと育てていこうかな。