午前が終わると午後が来る、の窓
おおっきな金魚掬いのポイで、天の川を下る
すり抜ける水は下々のものたちへ
優劣のないA5ランクの哺乳瓶
彼らは育つ、それによって
微かな行先だ
すくすくと育ってくれよ。
芽が出ると途端に早い
指先でつつく玉こんにゃくの連鎖ね
出汁に浸されてツヤツヤと空の光を乱反射
目に優しいね。そう言う声も優しかった。
ドアが軽い音で開く?
カチャ
「いま、いいですか?」
「いいよ、何かな」
「玄関のところ、小さなイスみたいなところ、そこに落ちてました」
小さなその子は、小さな手のひらを最大限に大きく広げて小粒のものを僕の眼前に展開した。
「氷かな?でも、溶けないし、握ると白い団地に水色の扉が可愛らしいんですよ、先生も握ってみて」
言われるがままに受け取る。
本当だ、等間隔に並ぶ水色の扉の、可愛いこと。
「何だろうね。これでぜんぶ?もっとたくさん落ちていたの?」
「えっとね、もうちょっとだけあった。けど持ってくる途中でこぼしちゃったの。階段とかに落ちてると思います」
となると、これは元々一つの球だったのだろう。
今ある分と、こぼしたもう少しでちょうどひとつのビー玉のスケールになる。
いずれなくなる風景を込めて固まっていた球。
砕けて、そして時代が終わる。
目の前にいた小さな子はもういなかった。
やがて全てそうなるよ、と
残り風が喋っている様だった。