「NVC 人と人との関係に命を吹き込む法」を読み始めました
最近読み始めた本「NVC 人と人との関係に命を吹き込む法」の感想や気づきを残します。
NVCって何?
「Non-violent Communication」、本書では「非暴力コミュニケーション」と訳されています。著者でありNVCの提唱者であるアメリカのマーシャル・B・ローゼンバーグ博士はNVCが生まれた背景を本書で次のように語っています。
NVCのプロセス
NVCは4つの要素で構成されており、この要素に注目してコミュニケーションをとることが大事なのだそう。
観察
感情
必要としていること
要求
例として生活態度が芳しくない10代の息子に母親がこの要素に着目して要求する場合は次のようになる。
私の10歳の娘にこの言い方をして態度を改めるかどうかは甚だ疑問ではあるが、少なくとも「何回言えばわかるの?いっつもリビングに靴下脱ぎっぱなしにして、だらしない!」よりかは受け入れてもらえそうだ。
この観察、感情、必要としていること、要求の4要素については各章で詳しく説明されていて、エクササイズもあるのでいかに自分が普段から杜撰なコミュニケーションをとっているのかがよくわかります。
よろしくないコミュニケーション
NVCの目的は「相手からの反発、抵抗を極力小さくして、自分の意図していることを伝える」ことであると読み解いた。その上でこういうったコミュニケーションでは目的を果たすことが困難であるという事例がいくつか紹介されていました。
道徳を持ち出す
自分の価値観や世間の常識にそぐわないふるまいをする相手に対して、いい悪いのレッテルを張る行為。比較をする
メディアで称賛される肉体美や、12歳で偉業を遂げたモーツァルトと自分を比較しても惨めになるだけ責任を回避する
「〇〇しなければならない」という言い回しは、自身の感情と思考に責任を負うことを回避する。
学校で、会社で、家庭内で、多くがこういったコミュニケーションが主になっている気がする。「他の人の迷惑になるから、勝手な行動はやめなさい」とか「時間を守ることは社会人の常識だ」とか言われながら自分たちは育ってきたし、なんなら親になって自分も子供に言っていたりする。子供のころはこの手のコミュニケーションが本当に嫌だったけれど、大人になると最もコストをかけず相手をコントロールできるコミュニケーションの形なのだと気づきました。日本の文化的に道徳や常識に基づいて組織が構造されているから、相手に反論の余地なく規則に従わせることができる。特に人数が多い学校機関や大企業は、ガバナンスを効かせるためにこのタイプのコミュニケーションがとられがちな気がするし、なんなら自分もおそらくとっているのではないかと。
自分の感情に責任を持つ
個人的に一番自分に刺さった章。相手の行動によって自分に沸き上がった感情を、相手の行動の責任にしてしまう言葉は自分の感情に責任を持っていない行為である。きっかけは相手の行動であったとしても、自分が満たされていない、必要としていることを明らかにして感情につなげることで、自分の感情に責任を持つ。
「なんでゴミ出してないの?先週も出してなかったから私が出したんだけど。無責任だよね?」と自分の落胆や苛立ちの責任を相手の行動のせいにするのではなく、「あなたはゴミ出し当番だけれど先週も今週もゴミを出していなくて、捨てられずに置かれたゴミを見たときに私はとても落胆した。朝の忙しい時間は予定外のタスクを入れたくなかったから」と伝えることで自分の要求が満たされていないことに対して責任を持つ。
「そりゃ相手が自分の責務を全うしなかったんだから腹が立ってあたりまえだよね、相手の責任でしょ」と考えていたけれど、「相手が責務を全うしなかった」事実と「腹が立った」感情は切り離して考えないと、相手が反感を買ってしまい「ゴミ出しの責務の範囲とは?」のようなわけのわからない方向に話が向かってしまいかねない。表題の「自分の感情に責任を持つ」という言い回しが、端的にそこを表現できていると感じました。
チームメンバーへのフィードバックにも活用したいNVC
働いていると、メンバーの行動がチームや組織の期待値にあっておらず指導をしないといけない場面に遭遇することも多いと思います。100人も200人も部下を抱えていると一人ひとりに対して対話を設ける時間は難しいけれど、10人前後のチームであれば日常や1on1を通してやりとりをする機会も多いので、日ごろから相手を一方的に評価せず「観察」して事実を把握し、自分の「感情」に責任をとるために「必要としていること」を正しく伝え、相手に明確に「要求」するコミュニケーションをとることは十分可能だし、相手を傷つけることなく意図を伝えるためにかけてもよいコストだと思いました。
最近は同じ会社で働いていても画一的な人ばかりではなく、年代やライフスタイルが異なる多様的な構造になってきていると感じます。「傾聴」や「EQリーダーシップ」など、人との対話スキルが管理職に求められるのもそういった背景があるのかと。「おはなし」に多くの時間を割かざるを得ない現代において、この本はとても役に立つのではないでしょうか。