こんなみだら、あんなみだら
ニュースなどで「みだらな行為」という表現を見聞きする。そのたびに、抽象的で曖昧だと思っていた。あまり具体的に報道するわけにはいかないからしかたがないんだろうな、とも思うがどうもすっきりしない。
漢字では「淫ら」や「猥ら」などと表記する。二つをくっつければ淫猥だ。
みだらの具体的な意味は「男女間の不品行なさま。だらしがないさま。礼儀の正しくないさま。みだり。淫猥。猥褻」(広辞苑第五版)ということらしい。
「だらしがないさま。礼儀の正しくないさま」という意味なら、たとえば部屋を散らかしっぱなしの人などもみだらと言える。「あたし、アパートでひとり暮らしをしていた頃はすごくみだらだったのよ」などと言ってもいいことになる。それを聞いた彼氏はドン引きするだろうけど。
また、「礼儀の正しくないさま」もみだらの範疇だから、先生や親の言うことを聞かないわんぱくやおてんばな小学生などは、いつもみだらな放課後を過ごしているのかもしれない。
きちんと挨拶できない中学生や高校生なども、「B組のみっちゃんって、スゲーみだらだよな」なんて言われるかもしれない。困った困った。
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ということで、「困った困った」のオチで締めたのだが、ふと、みだらの意味を再確認しようと思った。で、広辞苑(ある理由によって第五版までしか買っていないので、第六版以降にはどう出ているか知らない)以外の国語辞典を調べてみた。
その結果、日本国語大辞典(第二版)、大辞林(第四版)、大辞泉(第一版)、三省堂国語辞典(第八版)、旺文社国語辞典(第十一版)、岩波国語辞典(第八版)、新明解国語辞典(第八版)では、すべて性的なことや男女間のことに関係する説明だった。
つまり、単なる「だらしがないさま。礼儀の正しくないさま」という趣旨の意味が載っていたのは広辞苑だけなのだ。
ただし、これはあくまでも私が持っている国語辞典での話であって、広辞苑同様の説明が出ているものがほかにもあるかもしれない。ただし、あったとしてもきわめて少数派であろうと思う。
「広辞苑によれば」などと前置きされることも珍しくない、天下の広辞苑だから間違いなどはないだろう。それに、よく言われるように言葉は生き物であり、曖昧でもある。
結局、みだらも曖昧のままなのだ。またもや、困った困った。