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22歳 だんだん会社に行けなくなった

それは喉にキュウリの薄切りがつっかかっているような感じから始まった。

会社に着くとその不快感は強くなり、常に喉に何かがあるような感じになっていった。喉に指を入れても何もない。

そのうち、電車に乗っていても気分が悪くて何度も途中下車したくなった。会社に着くころには、額が汗びっしょりになって、とても不快で気分が落ち込んだ。

原因はさっぱりわからなかった。

精神的なものではないかと思い、会社近くの精神科を受診した。

診察室にある棚に小さなキューピー人形が置いてあった。それは色とりどりの毛糸で編んだ服を着ていた。先生が問診する間、なぜか私はずっとその人形を見ていた。

しばらく問診が続いた後、

「話からすると、うつ病のようですね」と先生は言い、飲み薬を出してくれた。
薬を飲んだら喉のキュウリはすぐ無くなった。
電車にも不安なく乗れるようになった。

でも、今度は薬のことが心配になった。
このままずっと薬を飲まなくてはいけないのか。それに、医者は薬と言っているけど、ただのラムネみたいなものではないのか、など別の意味で心が落ち着かなくなった。

そして、薬を飲むのをやめた。

薬をやめたら、また喉にキュウリがつかえて電車に乗れなくなった。
そのうち、バスにも乗れなくなった。
結局、私は3年勤めた会社を辞めた。
当時はうつ病と言われたが、今でいう「パニック障害」だったと思う。

「元気になったらまた戻ってきてね」とみんなが言ってくれた。

実家に戻っていたので、何もせず一日中ボーっとしていた。
ほとんど話もしなかった。

父も母も困っていた。

いきなり一人暮らしをすると言って実家を出たかと思うと、今度は訳も分からず戻ってきて、両親は言いたいことがたくさんあったと思うが、何も言わなかった。

あとで聞いたら、私が自殺でもするんじゃないかと思ったそうだ。

「やれることだけやればいい」という言葉に、本当にやれることだけした。


少しずつ気持ちが楽になっていった。

そして、約1年後、何かやりたくなってきた。

遠くが少し明るく見えてきた。

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