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かま夜のロケ地にようやく行った話(2/2)
長いです。
だいたいオタクの語りが短いわけないじゃん。
前編はこちら。
1)ここまでのあらすじ
ゲーム『かまいたちの夜』の(特に初代)の熱狂的ファンである筆者は、かねてからロケ地であるペンション「クヌルプ」に行きたいと願っていた。
ある日突如、フォロワーからの誘いのDMによってその願いが叶うことになる。
雨雲をかいくぐり、白馬村観光と散策を楽しんだ筆者一行は、いよいよオーナーの車で「クヌルプ」へとたどり着く──!
※白馬村観光の様子は前編から読むことができます。
※ペンション内の写真は、他のかたのご迷惑にならないように、人のいないタイミングに撮影しています。
2)いよいよチェックイン。
夏場なので、別に日もとっぷり暮れているわけでもなく、吹雪の予報があるわけでもなかった(線状降水帯はあった)が、夕方頃にオーナーに拾っていただくようお願いをしていたため、待ち合わせ場所へ。
少々待ち、やってきた大きいワゴン車に乗る。
途中でさらに他の泊まり客をピックアップし、いよいよクヌルプへと向かう。
見慣れない景色が突然見覚えのある雑木林になったかと思いきや、あっという間に車のスピードは落ち、砂利の駐車場に停まる。
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そうして車から荷物を持ってヨッコイショ……と降りると。
ウワーーーーッ!!!!!!ウワーーーーーーーッッッッ!!!!!!!
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ヒエーーーーーッッ!!!
というわけで、談話室(ロビーとかラウンジとか言うのだろうが、もう我々には談話室と呼ぶことしかできない)で宿帳代わりのアンケートに記入し、オーナーから鍵をいただく。
アンケートには「当ペンションを選んだ理由」にマルをつける項目があったのだが、しっかりと「ゲーム『かまいたちの夜』」の項目があり、「そ、そうですう…///」という若干の気恥ずかしさもありつつ、しっかりとマルをつけた。フォロワーが(予約したのはフォロワーであるため)。
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建物は、それ自体に使用されている木材の香りに満ちている。
ゲーム中テキストにも「ログキャビン風」とあったが、こうして木の香りを嗅いでみると、より真実味が増して来る。ここシュプールじゃないからな。ロケ地だからな。
ところどころ補修された痕がある(そりゃゲーム発売から30年が経とうとしていればその通りである。現状維持をしてくださっていることに感謝しかない)が、それを差し引いてもホコリひとつ髪の毛一本落ちていないほど建物全体がピカピカに磨かれており、清掃にかける手間を考えてちょっと気が遠くなった。すごい。
あと、涼しい。長野、さすが避暑地というだけある……。ここ海抜何mあるんだろう。標高高いのもありそう。
前編でも申し上げたとおり私は生粋の浜育ちなので、標高が高いところの気候がめちゃくちゃ新鮮に感じるのである。なんだこれ〜!
実際夏でも夜は冷え込むことが多いらしく、オーナーから「寝具は厚めにしてあるので、もし暑く感じたら床に落としてもかまいません」と案内された。やさしい……。
3)部屋とか、周辺とか。
いざ部屋へ。ルームキーを見てみると201号室(北西側の角部屋)。
……主人公(透)の部屋やんけ!
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ぶっちゃけ二人で泊まるとなると部屋で会話しないのは不可能なので、角部屋はたいへんありがたい。オーナーの気遣いと、長年蓄積された経験をひしひしと感じて、本当に頭が下がる思いだ。
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ドアをあけて、極力他の方に迷惑にならないように静かに目一杯はしゃぐ。ヒャア〜〜〜!!!本物だ〜〜〜〜〜!!!!!
普通、ホテルやらに到着して部屋に入ったらいろんな戸をあけてひとしきり設備の確認をしそうなものだが、もはやゲーム内でここに来すぎている我々は、
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迷うことなくクローゼットに荷物を置き、雨を浴びた上着を乾かし、
周囲が静かなのをよいことにその辺をウロウロすることにした。
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乳飲み子の頃から『かま夜』に慣れ親しんでいる私(何度見てもパワーワードすぎる)としては、もうことあるごとに『かま夜』を遊びすぎて、もう誰推しとかを通りこして登場人物全員なんか親戚くらいの距離感になっている(おかげさまで、美樹本推しであるにもかかわらず、香山さんに申し訳なくて美樹本が本領を発揮するサバゲーを読みにいくのに未だにげっそりする)のだが、こうしてロケ地に来てみるとなんか知んないけど実家に来たみたいな謎の親しみが湧くのにびっくりする(まあ、親しみが湧きすぎて過去に落書きしちゃった人とかいたみたいだ。器物損壊だからやめようね)。
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フォロワーと二人で「初めて来るのに何もかも覚えてることあるんだ……」とか言いながら外もうろつく。渓流の音が心地良い。
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そういえば渓流のせせらぎってちょっとホワイトノイズっぽい周波数があるらしく(ソース未確認)、クヌルプにいる間ものすごいリラックス効果が得られたのがものすごい収穫であった(※筆者はADHD傾向があるため脳が過活動状態の時はホワイトノイズを聴かないとダメなときがあるぞ!)。
なんか心身が限界になっちゃったら路銀と宿代を握りしめてクヌルプに来ればなんとかなるのではないかと思った。その一ヶ月後にマジでぶっ倒れたのは内緒だ。
なお、近隣に天然温泉「おびなたの湯」があるとのことで、そこでひとっ風呂浴びようかという話をしていたのだが、オーナーに「外出してきま〜す!」と声をかけたところ、
「もしかして、おびなたの湯ですか? 確か、休業中だったような……。」
おっと!?
それはそれとして、オーナーも休業期間がわからないとのことだったので、元気に「じゃあ我々で確認してきます!」と言って5分ちょっと歩いたところ、
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しっかり休業中だった。
しかしながらクヌルプにも24時間使える人工温泉があるため、ヨッシャそっち入ろうぜ!ということでルンルンで戻る。
雨で冷えていたのと湿気で汗が乾かずもうなんかえらいこっちゃだったので、戻るや否や即お風呂をお借りした。めちゃくちゃいいお湯でした。ポッカポカになった。多分寒い時期は寝る前とかに入ったほうが良さそう。
三人くらいまで同時に入浴することを想定した作りになっているようだが、今は感染対策のため1グループごとの入浴になっている(オーナー曰く、「ご入浴の際は脱衣場に鍵をかけてください」とのこと)。すごくしっかりしている……。
4)夕食とかだ!
さて、人工温泉で温まった汗も引いたところでいよいよ夕食である。『かま夜』では今日子さんがなんかすごい料理を作るため小林さんが作っている食事だが、クヌルプではオーナーの奥様が作られているのはもはやファン界隈では有名な話だ。
この料理が本当に美味しいということで、それはもう楽しみで仕方なかったし、なにより腹ペコであった。
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食堂に顔を出し、厨房にいるオーナー夫妻に「2名です!」と声をかけて、席に着く。テーブルウェアがセットされているのも『かま夜』といっしょ。
さて、どこの席が2名向けかな……っと。
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はい(大歓喜)。
なんかもうどうしたらいいんだろうな!?!?!?!??と思いながら、乱れる情緒を必死に押し殺してお行儀良くしておく。
と、追加でお酒やミシシッピマッドケーキが注文できるそうなので、もちろん注文。食べたかったんだよねミシシッピマッドケーキ。
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とにかく地酒・地ワイン・地ビールのラインナップが豊富で、今だけザルになりたいと思った。もちろん無理なので我慢する。
そうこうしているうちに前菜が運ばれてくるのだが(そしてオーナーが配膳してくれるのだが)、
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ウワ〜〜〜〜ッなんかすごいの出てきた!!!!!おいしそう!!!!!おいしい!!!!!!!
とにかくおいしい。おいしいしか言えなくなった。
すでに「レストランとしてもやっていけそうだった」の文言が脳裏にちらつく。
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料理も多国籍というか無国籍で……とあのフォントでテロップが浮かぶ。
というか本当に美味しい。食べるとなくなってしまう。でも美味しいので食べる。全部食べる。残すとかない。なぜなら美味しいので。
スープを食べ終わったところで、オーナーが主食をパンとご飯のどちらにするか確認しにきてくれる。ちなみにおかわり自由らしい。えっ?すごすぎる。そして、
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メイン。サラダもつく。そしてここで主食も出て来る。私はご飯にした。
とにかくここでお腹いっぱいになる、が、デザートとミシシッピマッドケーキが待っている。いけ、やれ、私の胃。お前ならやれる。
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このデザートがまたうまいのである。一口サイズなのだが、食べるとなくなってしまうので、ちまちまと食べる。
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そしてお待ちかねのミシシッピマッドケーキのご登場である。
ブラウニー系のねっちりぎっしりした濃厚な生地に、クルミなどのナッツがこれもぎっしり詰まっている。
あまりに濃厚かつ具沢山なので、ところによってはフォークが通らなかったりする。「チョコそのまま食ってます」系である。すごくおいしい。
ちなみにミシシッピマッドケーキはテイクアウト可能だそうなので、お家で食べたい人たちは何かお持ち帰りできそうな容器を持っていくといいかも。
というわけで全て残さずに完食した我々は、談話室で一息つくことに。ごちそうさまでした。
談話室のフロント横には交流ノートが置いてあった。
これには『かま夜』のファンのみならず、我孫子武丸氏や中村光一氏などが書き込んでおり、変な声が出た。嘘、奇声はよくないので息を呑む程度にした。
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我々もアツい思いを書き残しつつ(このブログに書いてあることと大差ないので割愛するが)、雨がけっこうな勢いで降り始めたこともあってか、窓から入って来るすっごい涼しい風で急に冷えてきたので部屋に戻ることに。
東京とか猛暑だったのに完全にどこ吹く風である。冷風だけに。
5)くぬるぷの夜だ!
部屋に戻った我々は、私が家から発掘してきた公式ファンブックやら完全攻略本やらを読んだり、かま夜輪廻彩声を遊んだりして過ごした。
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フォロワーにどのエンドが見たいか尋ねたところ、「体当たり」とのことだったので、一直線にそこに向かう。乳飲み子からやってると分岐全部覚えてるもんだ。怖すぎ。
エンドロールが終わる頃にはとうに夜半を過ぎており、深夜一時。
そういえば歯磨いてなかったな……と共用の洗面所に向かうと。
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アッ!!!消灯されとる!!!!!まあ日付変わったしな。
無音で盛り上がる我々。みんな寝てるからね!!シーね!!
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写真だと明るい(iPhoneがシャッタースピードを遅くしてくれるため)のだが、この時非常灯しか点灯していなかったため、本当に暗かった。足元に気をつけつつ、歯磨きをして戻り、この晩は就寝した。
6)朝だ!
朝である。一晩降りしきった雨も止み、空気も爽やかだ。
朝食を摂りに、食堂へと降りる。
そういえば初代『かま夜』だと、たいていのシナリオでは朝を迎えることができたとて、朝食どころの騒ぎじゃない感じだったことを思うと、なんだか感慨深い。いやここシュプールじゃないんですけどね。
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朝食だ!栄養バランスがすごい。健康になる。
そして何より、当たり前のようにおいしい。
バターロールにバターとジャムをぬりぬりしつつ、プレートも食べる。
ナポリタン的なパスタをフジッリで調理するの、すごく良いアイデアだ。少量ずつ取り分けやすいし、食べやすいし、巻き取らなくていいのでソースが飛ばない。覚えておこうと思った。
もう本当にご飯がおいしいので、逆にシュプールの宿泊客のみんなもこの朝ごはんが食べれてほしくなり、「今までずっと受け入れられなかった『かま2』で初代『かま夜』がなかったことになっていた件、あれ、「ない事件」でよかったかも知れんな……」と思うまでになっていた。面倒臭いオタクが成仏する歴史的瞬間である。成仏した。みんな小林さんの美味しい朝ごはん食べて帰ってくれ(?)
7)チェックアウト。
朝食を食べ、帰りたくなさすぎたため限界までのんびりし、いよいよチェックアウト時刻に。
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宿を出る直前、ずっと厨房にいらした奥様がお見送りしてくださったので超大声で「ごはんおいしかったです!!また来ます!!」と言って出て来る。
私が食いしん坊なのを差し引いても本当にご飯がおいしくて……
これもまたオーナーの送迎で、バスターミナルまで乗せてもらった。
送っていただいている最中、乗るバスの時刻を気にしていただいて、本当に気遣いとやさしさが骨身に沁みた。もしかしたら日頃やさしくされてなさすぎるかもしれないが、本当にオーナー夫妻がやさしい。あとお人柄に魅力がある。本当に(実はオーナーもブログをやっていらっしゃるので、クヌルプのサイトから読みに行っていただきたい。すごく多趣味な方です)。
ちなみに完全攻略本のインタビュー記事には、「リピート率が5割」と書いてあったのだが、私も5割側になりそうである。また来ますほんとに。
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こうして我々は主たる目的である「クヌルプに泊まる」というミッションを達成し、バスターミナルでバスを待っていると、この旅行中ずっと曇っていた空が一瞬だけ晴れてくれた。やった〜〜〜!!
最後にお天道様からもお見送りされつつ、高速バスに乗り、白馬村を後にした。
この後新幹線の時間が来るまで長野市内も観光するのだが、なにせもう前編の倍以上のテキストを書いてしまっているため、それはもう番外編みたいな感じで別記事にまとめようと思っている。ので、そちらもご期待いただければ幸いである。
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ここシュプールじゃないって。
ここまでお読みいただきありがとうございました!