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クラシック音楽の話(4)
フォーレの《レクイエム》
ショパンは、亡くなる前に「私が死んだらモーツァルトのレクイエムで送ってほしい」と言い残し、実際の葬儀ではその希望どおりにモーツァルトのレクイエムが奏でられるなか、多くの参列者に見送られたといいます。ショパンはさぞや満足し、心安らかに天国に召されたことと思います。皆さまには、ご自分の葬儀で流してほしいと思う音楽がおありでしょうか、あるとしたらどんな曲でありましょうか。
ところでレクイエムは「安息を」という意味の鎮魂歌であり、キリスト教の死者のためのミサとしてすでに中世に成立していました。本来はそうした実用の音楽だったわけですが、その後、オーケストラを伴った芸術音楽としても作曲され、数々の作品が生み出されました。その中で三大レクイエムとして知られるのが、モーツァルト、ヴェルディ、フォーレの作品です。
そして、ここで触れたく思いますのが、フォーレのレクイエムです。フォーレはドビュッシーやラヴェルの少し先輩にあたるフランスの作曲家です。レクイエムを作曲したきっかけは父母の相次いだ死によるともいわれますが、彼が残したスケッチには「私のレクイエムは、特定の人物や出来事を意識して書いたものではない」と記されており、「あえて言えば、自分自身の楽しみのため」とも。
また、初演時には、曲調が斬新すぎることや、死者のミサには必須とされた『怒りの日』の典礼文を欠いていたために、異教徒的だとか、死の恐ろしさが表現されていないなどの批判を浴びたといいます。これに対してフォーレが語ったのは、「私のレクイエムは、死に対する恐怖感が表現されていないと言われ、この曲を死の子守歌と呼んだ人もいます。しかし、私には、死はそのように感じられるのであり、それは苦しみというより、むしろ永遠の至福の喜びに満ちた開放感に他ならないのです」
そんなわけで、フォーレのレクイエムは「死」という重い題材の音楽であるにもかかわらず、辛く悲しい気持ちを癒すというより、穏やかで明るい静かさに満ちています。ここに込められた死生観といいますか、「死」に対して抱く想いは、実は私もフォーレと同じようにありたく思うところです。すなわち「死」とは永遠の安らぎ、休息である、と。もっとも、あくまで順調に天寿を全うできての話ですけどね。不本意な死は嫌です。
愛聴盤は、もはや定番といってよい、ミシェル・コルボ指揮、ベルン交響楽団ほかによる1972年の録音です。女声合唱とソプラノ・ソロ、少年合唱、ボーイ・ソプラノが用いられ、実際の教会でのミサを思わせるような敬虔な演奏です。また、とても50年近くも前とは思えないほど、繊細で透明感あふれる優秀録音だと思います。静かな夜の時間に、じっくり耳を傾けられてはいかがでしょうか。
レクイエムとは
キリスト教において、死者のための典礼で歌われるミサ曲。わが国では「鎮魂曲」「鎮魂ミサ」などと訳されることがあるが、死者が天国へ迎え入れられるように神に祈る典礼のためであって、死者の霊を弔うものではないから、適切な呼称とはいえない。レクイエムの名は、このミサ曲の最初に歌われる入祭文(イントロイトゥス)の冒頭のことば「requiem(安息)」に由来する。
作曲されたものでは、オケヘム、パレストリーナ、ビクトリア、モーツァルト、ベルリオーズ、ベルディ、ドボルザーク、フォーレ、デュリュフレらのラテンの詩句による諸作のほか、シュッツ、ブラームスなどのドイツ語による『ドイツ・レクイエム』が有名。
音楽に関する名言
詩は音楽にならなかった言葉であり、音楽は言葉にならなかった詩である。~ヘルマン・ヘッセ
音楽は、それだけで何かを語るものだ。~マイルス・デイヴィス
人は幸せだから歌うのではない。歌うから幸せなのだ。~ウィリアム・ジェームズ
どうやって音楽を作っているのかと尋ねられたとき、ただ音楽の中に踏み入るだけだと答えます。それは川の中に足を踏み入れて、流れに身を任すようなもの。川の中のすべての瞬間が、それぞれの歌を持っている。~マイケル・ジャクソン
音楽は決して耳ざわりであってはならない。むしろ耳を満足させ楽しみを与える、つまり常に「音楽」でなくてはならない。~モーツァルト
同じ 曲を千回弾いても色々な発見がある。毎回同じように弾くのは本当の音楽家ではない。~ライナー・キュッヒル
音楽は世界語であり、翻訳の必要がない。そこにおいては、魂が魂に話しかけている。~バッハ
いい 作曲家は盗む。悪い作曲家は真似する。~ストラヴィンスキー
作曲家は何よりもまず、最初の聴衆なわけですから。~武満徹
音楽のあるところには、真の悪は存在できない。~セルバンテス
牧場の奏でる調べや、森をたたえる交響曲に耳を傾けるひまもなくなるほどあくせく働いたり、せかせかしたって始まらない。この世には富よりはるかに重要なものがある。楽しみを味わうささやかな心がけもその一つだ。~カーネギー
音楽はあらゆる知恵や哲学よりも高度な啓示である。~ベートーヴェン
音楽は無用のようでありながら、じつは調和を考えるうえで大いに有用であり、仁義という、人の愛情のありかたも、調和がなければ自我のけわしさに埋没するしかない。極言すれば、音楽がわからなければ、人を愛する愛しかたがわからない。~宮城谷昌光
人生とはひとつの壮大で甘い歌なので、音楽を始めなさい。~ロナルド・レーガン
良い音楽には、人を良い方向に向かわせるエネルギーがあります。~新実徳英
生きることは音楽的であること。体内の血が踊り出すところから始まる。すべての生命がリズムを刻んでいる。君は、君の音楽を感じているかい?~マイケル・ジャクソン
草のそよぎにも、小川のせせらぎにも、耳を傾ければそこに音楽がある。~バイロン
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