俺の読書感想文 #7 【星の王子さま サンテグジュペリ】
前回読んだ「球体の蛇」にて、何度か「星の王子さま」の逸話が象徴的に挟まれていて、そう言えば星の王子さまって最後まで読んだ事なかったわ。
って事で、読んだ次第だ!
『星の王子さま』(ほしのおうじさま、フランス語原題:Le Petit Prince、英語: The Little Prince)は、フランス人の飛行士・小説家であるアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの小説である。彼の代表作であり、1943年にアメリカで出版された。
2022年現在、初版以来、200以上の国と地域の言葉に翻訳されている。
……ってWikipediaに書いてあるけど、日本だけでも何種類も違う訳され方をしたものが出てるんだってさ。
俺が読んだのは「池澤夏樹」という人が翻訳をしたバージョン。集英社文庫から出てますね。
ていねいで柔らかい印象の文章でしたよ!
(他の版読んでないからわかんないけど)
翻訳って難しいんだろな。
同じストーリーやキャラでも、翻訳の仕方でかなり印象が変わるもんなー。
日本語なんて一人称がたくさんあるから面倒くさそう。
「ぼく」なのか「俺」なのか「おいどん」なのかで印象が変わるもんなぁ。
おいどんって言う星の王子さまは見たくねーな。
『星の王子さま』のマニアは複数の翻訳を読み比べて、その中から自分が一番好きなバージョンを見つけ出したりしてるんだろな。
けど、複数のバージョンを読んじゃったら、○○版の翻訳はココがいいけど、あそこの表現は△△版のが好み、とか。
××版の翻訳は全体的にいいんだけど、あそこの場面だけは解釈が違う。とか、頭ん中ぐしゃぐしゃになっちゃって、好きな翻訳が一つに決められなくなっちゃって、もう自分で翻訳しちゃった方が早いやー!ってなったりする人もいそうだな。コミケとかで「私版 星の王子さま」とかって同人誌出してたり。……いや、多分、普通にいるな。
みなさんも、「星の王子さま沼」いかがですか?
ハマったら抜けられなさそー。
で、読んだ感想だ。
「憂愁とアイロニーに満ちた大人のための童話」
と(デジタル版 集英社世界文学大事典)では紹介されてるけど、マジで、そんな感じの作品だよね。どーのこーの長々と感想を言葉に変換して並べなくてもいいタイプの、まっすぐなメッセージがストンって伝わってくる作品。
人間が日々、生きるために必死で戦ってるその日々の中で、つい忘れて雑に済ましちゃってる本当は一番大切でロマンティックな事を思い出させてくれる、時代を超えて愛される普遍的な作品。だと思う。
石版に刻んで未来永劫、残したい作品だな。
何千年後の新人類や、文明が滅んだ後に宇宙から辿り着いた異星人なんかに、こんなロマンティックな物語を愛した知的生命がこの星にいたんだよって伝えたくなるもんな。
遠い未来の文明の途絶えた乾いた砂が吹きすさぶ荒野に、古ぼけた石板が埋もれてて、まだ知能が発達しきってない新々々人類なんかがキーキー言いながら食い物争いとかしててさ。半分土に埋もれてるこの「星の王子さま 石碑バージョン」を拾い上げて、モキーなんて叫んでさ、争い相手の敵の、新々々人類の頭に向かって振り下ろしちゃったりしてさ、この石板で引っ叩いたりしちゃったりなんかして新々々人類が初めて道具を使った瞬間ですって、ばかやろー。
それにしても、こういう時代を超えて愛される作品って、ソリッドだよねー。
物語終盤の「大事なことは目では見えない。」から始まる、仏教のありがたい経典の如き教えを諭される禅問答みたいなシーン、あれは時折思い出して読みたくなるような名シーンだよなー。
ラストシーンで主人公の「ぼく」から楽しげに問いかけられる羊の口輪の革紐についての「謎」とか、ああいう楽しいギミックがあるのも素敵だよね。
星空を見てて、ふと星の王子さまのことを思い出せば、いつでも楽しい空想で遊ぶことができるっていう著者からのプレゼントだもんな。
めちゃくちゃ小粋な演出だよね。
デートの帰り道とか二人で並んで夜道とか歩いててさ。そうだな、冬の晴れた夜がいいな。日がとっぷり落ちて、駅前からちょっと路地に入れば、シーンとあたりは静まり返っているそんな冬の夜だ。
空気の乾燥した夜空は蒼暗く澄んでいる。
路地を歩く二人は寄り添いながらもどこかぎこちない。葉っぱが落ちて枝だけになったクヌギとかカシの木とか、そういう他人の家の馬鹿でかい広葉樹が月影を落とす。その影を見て、月が出ていることに気がついて夜空を見上げた。登ったばかりでまだ腫れぼったいお月さまがぽっかり浮かんでる。そんな冬の夜を二人は歩いてる。
今夜、生まれて初めてできた彼女が、初めてうちに泊まりにくるのだ。
彼女は大学の一個下の後輩だ。仙台から出てきた。男の人と手を繋ぐのも初めてだって恥ずかしそうに微笑むピュアな女の子だ。
ちょっと鼻が大きいけど、可愛い女の子なのだ。
二人とも緊張していて、会話が弾まない。
そんな時、「星の王子さま」の話をするのだ。
あのちょっぴり切なくてロマンティックな普遍的な愛の物語を。
「星の王子さまって読んだことある?」
鼻の大きな彼女は、うーんと唸る。
「小学校の時、学校で読んだような気はするんですけど、話はぜんぜん覚えてないです。どんな話なんですかっ」
彼女はにこりと微笑んで、こちらを見上げてくる。上目使いの、その表情、少し大きな鼻が月に照らされて、頬に三角の影を落とす。サン=テグジュペリが不時着したリビア砂漠の夜。故障した飛行機が月に照らされた時も、こんなに美しくも物悲しい影をその砂の上に落としたのだろうか……。
彼女の大きな鼻がなんだかとても愛しく感じた。
って。ロマンチックベイベーじゃん!いいな!いいな!
第二次世界大戦の時、南方で戦った日本兵がめちゃくちゃ餓死とか病気で死んだんだが、その時、食うものがなくてガリガリで死んでる兵士の傍に、食べ物の絵が描かれた手帳が落ちてた、みたいな話をなんかで見たのだが、
「絶望の中で見る夢。」
……に、近いというか対局にある遊び方だよね。
原初的な遊びと言うか、欲望とか煩悩の消去法として相似な関係というか。わかんねーけど。
突き詰めて考えると、
「食べる物がないから絵を描く。」
「楽しい事がないから空想する。」
的な、満たされてない時にしか出来ない遊びなんだよな。
スマホだなんだで少しの暇さえゲームだショート動画だSNSだで時間を潰すような現代でさー……。
……まあ、そんなことないか。「星の王子さま」から受け取るメッセージは簡潔で飾り気がない分、何度も新鮮な気持ちで考えることができるんだ。
ま、「星の王子さま」は、現実主義の人には合わない作品だろうとも思う。どんな色であっても、メガネをかけていたら見えないものもあるから。
夢見がちすぎな少年少女にもちょっと合わないだろな。彼らが望むのはもっと純粋で果てのない欲望だからな。物足りないと思われる。
となると、やっぱり自分の人生に悩む三十代くらいの男女に「星の王子さま」は響くのではなかろうか。
それが俺の結論である!(異論は認める)
頑張ってはいるけど窮屈だし、周りを見てると焦っちゃうし、疲労を癒す元気もないし、、、
みたいな現代っ子三十代の方!
ぜひ、いいんじゃないでしょうか。
生活に疲れた大人に、よく効く成分がてんこ盛りなんじゃないでしょうか!
出てくるキャラはみんな個性があって可愛いし。
ある小さな星のひとりぼっちの星に住んでる王様とか、その星にはひとりぼっちだから家来もいないのに、星にやってきた王子さまに偉そうに威張るんだけど、根は優しいし、時々、寂しそうだったりして、でも性格は変えられないから、威張るばっかで。
滑稽なんだけど、なんかその姿に親近感とか沸いちゃうんだよね。
俺もひとりぼっちの王様だよ。自分の世界でふんぞり返ってるだけで、何も出来ないのにな。
やめやめー!
……ネガティブになっちゃったよー!
以上ー!!
またお会いしましょ。
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