ヘルマン・ヘッセの「詩人」 たったの10ページで浸れる幻想
ヘルマン・ヘッセの作品で一番有名なのは「車輪の下」だろう。
個人的にどれが一番好きかと聞かれたら絞るのは難しい。好きなヘッセの作品を選び始めたら「知と愛」「デミアン」「湖畔のアトリエ」「ペーターカーメンチント」「シッダールタ」・・・といくつもある。
でも、今回推薦するのは「詩人」という短編。文庫だと「メルヒェン」の中に収録されている5分とかからずに読めてしまう作品だ。
ある灯籠祭りの夜、「完全なる言葉の師」と出会った主人公、ハン・フォークの不思議な物語。
ハン・フォークは美青年でもあり、若いにもかかわらず優れた詩により文人たちに知られ、美しい婚約者もいたが満足していなかった。完全なる詩人になりたいという野心に満たされていたから・・・
ストーリーを書いてしまうと、初めて読むときの感動が薄れてしまうと思うので、詳しく書くのはよそう。
この作品をあまりにも愛しすぎている私にとっては、ストーリーを知っていても、何度も何度も読み返しても、その文章の美しさ、物語の美しさ、言葉の美しさに繰り返し惹きつけられてしまい、飽きることはない。
この作品だけでもヘッセを愛読するに値する。私にとってはそんな作品だ。
最近はヘルマン・ヘッセという作家のことを知らないという人も多くなってきたている。また、ヘッセが好きだと言うと「あ~車輪の下なら知ってるけど暗いよね」みたいな反応をされることがある。
だけど、言葉や文章表現の仕方も、叙情性も、物語も、心の機微も、こんな繊細な作家はそう多くない。
一度、5分で浸れる美しい幻想的世界を感じてみてほしい。
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