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ほんとは素晴らしいって伝えたい


見ると

空に、彼が浮かんでいた


ふわふわした

見えない何かにくるまれて

気持ちよさそうに浮かんでいた


「そこで何してるの?」

僕は聞いてみた


「夕陽を見ているんだよ」

答えた彼の横顔は笑っていたのに

右目から

涙がこぼれたのが見えた


「なぜ泣いているの?」


「こんなに素晴らしいんだって、伝えたいんだよ~-」


彼の全身が

真っ赤な照り返しに映えている


ここに来た時 人は

元気も勇気もあったのに

ここで呼吸を始めたら

諦めとため息に替えられた


目の前にあるドアは

押すのか引くのか

スライドするのか


どっちにだって

開くんだよ

きみ次第


ドアにカギはかかっていないし

きみは鎖に繋がれてもいない


書かれた言葉も

話された言葉も

きみのモノじゃない


きみの言葉を

きみの中から出てくるものを放てば いい

こんなに素晴らしいんだよ

ほんとうは

こんなに素晴らしいんだよ

ほんとうに


そう言って ずっと

彼は夕陽を眺めていた


そうか! そうだね!

「ありがと~~っ!」


だから

そして

僕は歩き出す









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あとりえぽえとりあ  
素晴らしい世界をたくさん見たい。たくさん感動したい。知らない世界を知りたい。幸せは循環させたい。ありがとうございます。