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40 凍蝶よ言葉を溜めているひかり

 句集「むずかしい平凡」自解その40。

 凍蝶(いてちょう)とは、冬の蝶のことです。ただし、ほとんど動かず、死んでいるかのように見えるけれども、じっと寒さに耐えて凍りついたようになって枯草にしがみついている蝶。生きているというより、仮死状態といったほうがいいかもしれない状態。でも、その凍蝶が冬の冷たい光をあびて光っている。

 それをみながら、なんか、この蝶も言葉を今一生懸命溜めこんでいるんじゃないか、とふと感じたところで生まれた句。

 この時は、よくわからないけれど、あんまり俳句ができずに、すこし沈んでいた状態だったかもしれません。

 自分自身に、あわてるな、じっくりやっていけ、と励ましていたころだったような気がしますね。

 言葉が生まれないときは、じっと生まれてくるのを待つ。

 決して死んだわけじゃない。死んだふりをして、内部から自分自身の言葉が生まれてくるのをあきらめずに待つ。

 そんな思いを抱きながら、凍蝶を、なかば自分自身のように感じていたかもしれませんね。

 俳句だけでなく、文芸一般そうだと思うのですが、自分だけの感覚や内面の思索を言葉にするというのは本当に難しい。

 個性的であり、かつ伝達性を持つこと。

 そしてその前に、まず自分の感性が動くこと。

 それがなかなかうまくいかないときは、この凍蝶のように、じっと耐えること。そしてその中でじっと言葉を溜めること。

 作品を書くって難しいですね。そして、さらにさらに書き続けるということも。

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