37 冬の月きれいに積まれいるマネキン
句集「むずかしい平凡」自解その37。
マネキンというのは、洋服をいろいろ着せ替えて、ショーウインドウに並んで、たくさんの人に見てもらって、人々の購買意欲を高揚させる、一種の広告のための道具ですけれど、なんとなく単なる道具というのとも違いますね。
じゃあ、かといってアート作品化というと全然そうでもなく、むかしのギリシャのトルソーみたいなもんだけれど、やっぱり工業製品化されているものだから、道具でしかないことは明らか。
やっぱり人間の形をしているからですかね。
服を脱がされているマネキンを見ると、ちょっとなんとなく見てはいけないようなものをみてしまった感覚がある。卑猥な感覚はゼロなのに。
この句、たまたまマネキンたちがトラックの荷台に並べられてところに遭遇したときの光景。トラックの荷台に、ずらーっと何台も、いや何人ものマネキンが積まれている姿は、やっぱりなんともいえないオーラがありました。
なぜ、こんなに積み込まれているのか。
搬入か、それとも搬出か。これから何が起こるのか。
まったく想像がつかなかった。
そこに冬の月。怪しいような、寒々しいような、でも人間味のあるドラマがありそうな、そんな映像。
みなさんももしよければいろいろ想像してくださいまし。