51 花辛夷鬱じゃないはずなのに涙
句集「むずかしい平凡」自解その51。
前回に引き続き「花辛夷」。
べつに鬱じゃないんだけれど、なんだか涙が出てきてしまうんだよなあ。なんでなんだろうな。空が青いからかな。辛夷の花が咲いているからなあ。
涙腺というのは年齢を重ねると緩んでくるそうですね。映画なんか見ていても、何でもないような場面で、ううっときて、涙腺というか、鼻の奥というか、そのあたりが湿ってくることがあります。
ただ、これは老化ともいえないんじゃないかなと思います。涙腺が緩むという肉体的な衰えもあるでしょうが、感受性が豊かになったために、微妙な部分に心が感応できるようになったということかもしれません。感性というものは、それを磨いていけば、いつまでも成長させることができるものではないでしょうか。
たしかになんでもないようなところで涙が出てしまうというのは、困ったこと。
でも、そういうデリケートな感性は、詩を作るうえでとても貴重なものです。マイナスをネガティブなものにせず、なんとか自分自身の個性に磨き上げたいものです。
辛夷の花は、そんなときに何かを語ってくれるようなたたずまいがある花。