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14 夫婦喧嘩につつーっと降りて蜘蛛光りぬ

 句集「むずかしい平凡」自解その14。

 この句は人気ある句ですね。情景はこの句のまんま。

 夫婦喧嘩がだんだん熱くなってきた。たがいに自説を曲げない。相手のちょっとした言葉尻をとらえて責め立てる。過去の間違いも引き合いに出して、だからあんたは、だからおまえは、と果てるところがない。

 そんなとき、天井からつつーっと蜘蛛が降りてくる。夫婦喧嘩の間に入って、蜘蛛がきらっと光る。べつに何を言い出すわけでもない。

 さて、このあと夫婦はどうする?

 そこはみなさんのご想像にお任せします。

 この句の人気の理由は、みんな夫婦喧嘩の不毛さを経験しているからですしょうね。

 でも、まあ、生きていれば軋轢や葛藤、言い争いくらいは必ずあります。ですから、それをいかにお互いの理解につなげるか。

 夫婦だけじゃなく、国と国との間にも、つつーっと降りてきて、おいおい、もうそのへんでいいかげんにしておきなよ、と諫めてくれる蜘蛛がいたらいいですね。

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