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寂しさと優しさ、好きな映画の話

2024年は沢山の映画を観て、素敵な作品に出逢えた。その中で僕は、どことなく寂しいがそれと同時に優しさやあたたかさを感じられる映画、喪失からの再生を描いたような作品が特に好きだと気づいた。そこで去年観た作品をいくつか振り返ってみようと思う。

①aftersun(2022) 🇺🇸101分 
ずっと気になっていたけれど観れていなかった作品。美しい夏のバカンスだけれどずっと仄かに不穏な空気や寂しさを纏っている。余白の多い作品だし、何の情報もなければ疑問符が付いたまま終わってしまう、なんてこともあると思う。実際僕も観終わった直後、あまり腑に落ちない感覚があった。ただ、YouTubeで解説動画を観てからというもの、作品の中に散らばっている断片的な事象の意味が回収され、しんどくて苦しくて涙が止まらなかった。
あまり人におすすめはしにくい作品だけれど、もう一度観たらきっとさらに深みを増して感じられるだろうな。

②中村屋酒店の兄弟(2019) 🇯🇵45分
大好きな俳優の藤原季節くんが出演していたので観た作品。45分という短い作品ではあるけど個人的にすごく満足が出来た。
変わっていくことも変わらないことも、沢山あると思うけれど、生きていく中でこういった事が積み重なって人と人の間にズレが生まれていくのかなーなんて思った。
身近な人でも心の底に抱えている事は気づかなかったり、それを人に見せたりしなかったりすると思う。誰かを想う優しさが痛々しく感じたりするときもあるなーなんて。

③Ce sentiment de l’été (サマーフィーリング)
(2016) 🇫🇷106分
ミカエル•アース監督の『アマンダと僕』という作品を観たことがあって、それがすごく好きで気になって観てみた作品。
大切な人を失った喪失感や悲しみは何かで簡単に取り戻せる訳では無いと思う。ただ良くも悪くも時間や季節は流れていって、変わっていくことも少なからずある。この作品では短い間の出来事ではなくて、3年間という時間と異なる都市での物語を紡ぐことで、ゆっくり少しずつ向き合っていく、喪失から再生していく様子が描かれていてよかった。
辛いことって忘れられなくて当然だと思うし、無理して忘れる必要も勿論ないと思う。その中でどれだけ時間がかかっても、変わっていくことを徐々に受け入れられればいいのかなと感じる。
今年は『午前4時にパリの夜は明ける』も観よう。

④SUPER HAPPY FOREVER(2024) 🇯🇵94分
友人に教えてもらい新宿武蔵野館で観た。去年観た作品の中でもかなり好きな作品。
山本奈衣瑠さんは今泉監督の『猫は逃げた』に出演していて、素敵だなーと思っていたのだけど、スパハピでの奈衣瑠さんは本当に素晴らしかったと個人的に感じた。
『SUPER HAPPY FOREVER』というタイトルから想起されるような明るいイメージとは異なり、作品にはずっと喪失感に包まれている。ただ心の奥底にある深い悲しみだけではなく、幸せだった軌跡や思い出も繋がっていて、過去も現在もひと続きなんだ、と思わせてくれる。大切な人を失ってもその時の幸せまで全て消える訳では無い、だからSUPER HAPPY FOERVERなのかなって思った。
また今年も観たいと思う、大切な作品。

⑤ホノカアボーイ(2008) 🇯🇵111分
ずーっと気になっていたけれど観れていなかった作品、ようやく観れた。
ハワイという舞台で日本とはまた違う景観が作品の可愛らしさとか優しさを引き出しているように思う。日本を舞台にした作品より流れる時間がゆっくりと感じて好きだった。
食がきっかけで動いていく物語だけど、食は人の生に直結しているものだと思うし、そこからの人の繋がりや温かさがすごく心地よい。そして何より全てのご飯が美味しそうだった。食べたい。
これまであげてきた作品とは違って、物語が進むにつれてやんわりとかなしさや胸に込み上げてくるものがある作品だと思う。
「人は出会うために生きているらしい」
これから大事にしていこうと思ったセリフ。辛くても生きていれば何かにきっと出会えるし、そういう出会いって人生を思いがけない方向に進めてくれたりするような気がする。

本当はもう何作品か取り上げようと思ったんだけれど、少し長くなってしまったのでこのぐらいにする。
今回取り上げた作品は、人によっては変わり映えがせず退屈にうつる作品もあるように思う。これは僕が生きていて思うことだけれど、変わり映えしない退屈な日常に見えても、見上げた空に広がる景色や外から聞こえてくる子供たちの声とか、まったく同じ、なんてことはないと思う。だから映画の中で表現されている、永遠のように続く変わらない美しさみたいなものに惹かれるし、観た後に自分の日々の中に溢れる輝きや愛おしさに気づくことが出来るから好きなんだろうなーって思う。 
ここまで読んでくれた人、もしいたらすごく嬉しいです。ありがとう!

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