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漫画「虫けら様」を読んで。

あることがきっかけで虫が苦手になった。

昔、会社の新人研修で東京で一人暮らしをしていた。帰宅後、シャワーを済ませ目の前の壁にふと目やると、そこにはGOKIBURI(文字にするのも恐い)がとまっていた。遠くから見てもパソコンのマウスくらいの大きさなのが分かる。

生まれて初めて見たGOKIBURIに衝撃を受け、しばらく放心状態だったが、急いで捕まえようと大きなビニール袋を持って近づいた。しかし素早く飛び立ち、すぐに見失った。その晩は恐ろしくてまったく眠れなかった。

研修が終わり、地元へ戻って来たころ、お気に入りの本屋で「虫けら様」という文庫本を見つけた。「虫けら」と言っておいてそれに「様」をつけている題名が異様で、とても気になったが、GOKIBURI事件以来虫はもうトラウマで、その場では手に取らず通り過ぎた。(今思えばもったいないことをしたなと思う。)

それから何回かその本を思い出すことはあったが、結局買わずに数年経ち、引っ越し先の本屋でたまたま再会した。

あの時からだいぶ傷も癒えていたので今度はすんなり手に取ることができた。パラパラパラ…。おお。なんて美しい絵だろう。一話立ち読みしたらこの、なんと言うか「凛」とした気持ちになり、迷わずレジに持っていった。

あんなに嫌いになってしまった虫たちが、とても愛らしく描かれている。登場「虫」たちは絵が上手でリアルさもあるのだが、キャラクターっぽさもある。著書の秋山あゆ子さんが本当に虫を愛しているんだろうな、というのが伝わってきた。また、「虫ってすごくかわいいんだよ!」と言われている気もした。

なかでも、ミツバチの巣から見たミツバチの話が好きで、ミツバチのことが気になり始め、しばらくハマっていた時期もあった。

人間よりはるかに寿命が短いのに、常に懸命に生き、短い期間に命を受け継ぎ、寿命をまっとうする虫たちはすごい。それに比べて寿命が長い私はあの時取るべき本さえ手に取らず、まだいいかと後回しにし寿命の長さに甘えていた。

これからもっと気温が上がり、やがて夏がくる。虫も活発になり地上に出てくるだろう。

暑さにバテ、このままでは干からびてしまう。ただでさえ長く生きられないのに。そんな虫を見つけたら近くに生えている葉っぱなどを使い、そっと日陰に移動させよう。余計なお世話かもしれないが、この本を読んだらそうせずにはいられないから。




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