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PERFECT DAYSがパーフェクト過ぎた。


結論から書くと素晴らしい映画だった。本当に見て良かった。
話が展開される毎に感想がコロコロと変わった。ラストシーンの役所広司さんの演技は喜怒哀楽全てが詰まっている物凄い演技だった。

始まりの10秒で心掴まれた。腕には鳥肌が立ち『あぁ、この映画は今の自分に必要な映画だ』と分からせられた。
台詞なく淡々と進んでいく主人公のヒラヤマのシーンが積み重なっていくだけ、物語は展開をしていかない。2日目3日目と大差なく積み重なり、カメラアングルとカットの長さが演出されていった。そのどれもが美しく理想で憧れだと思えた。がしかし【ヒラヤマは人間の皮を被ってはいるが人間ではない。】と思えて仕方がなかった。生前に物凄い業を背負って転生し今世で反省をしている物怪か何かか?とさえ思えるくらい同じ人間とは思えなかった。ただただ現代社会に対するアンチテーゼとしての理想像として見えた。

日々のノイズをモノともせずただ淡々と丁寧にトイレ掃除の仕事をこなし、落ちてくる木漏れ日に幸せを感じる。そんな人間はいない。ノイズ役として典型的なキャラクターのタカシさえもヒラヤマはかわす。『なんだか昔話みたいだ。』と物語前半では思ってしまう。

【主人公のように多くを求めず丁寧に仕事をして日々の暮らしを積み重ねていく事が幸せなんですよ】という昔話。説法でもある。仏陀的な感覚も感じた。(これは俺が仏陀が好きで、制作している作品にも影響を受けているからかもしれない。)都営浅草線の座席の演出もわかりやすくて苛立った。とは言え個人的には大好きな演出。

美しいものを美しく映して人の多面性を見せる手法。台詞が圧倒的に少なくシチュエーションも大きく変わらない、起承転結が少ない前半部分では、そこが少しイラつきもした。【分かりにくい(セリフの少なさ)ようで分かりやすい物(木漏れ日や丁寧な仕事ぶりが大切という意図)で構成されている押し付けが強い映画じゃないか。】しかしこれが後半から一変する。

口数の少なかったヒラヤマに来訪者があり、喋る頻度が増す。そこで彼の人間性が出てきて前半の感想を一変させた。

感情が出てくる出てくる。喋る喋る。前半でパンパンに張った弓がここで放たれた。喜怒哀楽の弓矢に射抜かれてしまった。なんなんだこの素晴らしい映画は。ここまで書いてとても疲れてしまった… 今度は今度、今は今、妹を抱きしめる、スナックのママと三浦友和の対極なセリフ、どれもこれも感情が揺さぶられた。

ヒラヤマはしっかりと人間だった。きちんと背負う過去があり過程を経て今の暮らしに幸せを感じている。『足るを知ること』役所広司さんがインタビューで仰っていた言葉。日々の小さな喜びだけで幸せを感じる事はなんて豊かな生き方なんだろう。
心を育て豊かな器を目指して私も生きていきたい。

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