中年じじぃの(愉快な)主張 vol.30
ゴルフ引退について(神様の言葉と空き地ゴルフについて)
2024/11/7
私は、30年近く会社員をやってきたので、一応ゴルフ経験者である。
しかし昨年、ゴルフを引退した。その経緯とは。
私が初めてゴルフというものに触れたのは、小学校低学年。と言っても、ゴルフを習い始めたのではない。
ゴルフ場がある山に入り、ゴルファー達が打ち損じた球を拾い集め、家に持ち帰り綺麗に洗う。
そしてスポーツ用品店に売りに行くのだ。
ときには未明や夕暮れに、コース内に忍び込み、池の中の球を拾い集めた。これはいま思えば、わりとしっかりした犯罪。
しかしスポーツ店の店主も、よくもまあ、子供が拾ってきたロストボールで商売をしていたものだ。
ボロボロで売れない球を手元に残し、空き地で棒っきれを使い、ゴルフごっこをした。
回を重ねるにつれ、大人のホンモノのゴルフを真似て、バンカーらしきものや、クリークらしきものをこしらえて〝プレイ〟した。
それはけっこう楽しかった。
これが私とゴルフの出会いだ。
長じて社会に出て、先輩に教わりながらホンモノのゴルフを覚えた。
少しずつ上達もした。
何事につけ、上達すると楽しくなる。楽しくなるともっとやりたくなる。
しばらくはこの好循環でゴルフがいつも身近にあった。だいたい15年くらい。
ゴルフはとても人間性が出るスポーツだ。
真面目な人はコツコツと堅実なプレイを、荒っぽい人はギャンブル性の高い攻め方を、理論家は練習もコースもまず頭で理解してから実践、という具合に。
プレイもさることながら、クラブハウスでの食事やビール、プレイ後の大浴場(ゴルフ場によっては温泉)が楽しみ、という人もいる。私のように。
同じ頃ゴルフを覚えた同僚は、仕事に対してすごく真面目で努力家、かつ理論派でありながらも現場仕事を大事にする、まるで私とは対極にいる男だ。
こんな男がゴルフを覚えたんだから、結果は見えている。
今やもう、プロ一歩手前の腕前。
もちろん、仕事でも出世をはたす。
私はと言えば、〝血のにじむようなイメージトレーニング〟と、コースに出る前にちょっと練習場で打つだけ。スコアが良くても悪くても何の振り返りも無し。道具にも特にこだわりはない。
当然スコアは伸び悩んだまま。
もちろん仕事で出世するわけがない。
いやぁ、出ますね、人間性が。
そんな感じで、〝伸び悩みゴルフ〟または〝下手の横好きゴルフ〟を何年も続けていたが、ある時ふと思う。
『なんか、おれって毎回、高いお金払ってメシと風呂に来てない? スコア全然良くなってないし』
何にでも手を出し、浅く広くがモットーの軽薄な多趣味人間である私は、その時ゴルフの神様の言葉を聞いた。
〝そろそろ潮時です。空いた時間とお金は、他の趣味に費やしなさい〟
他人の言葉には素直に従えない私も、神の言葉は素直に聞き入れ、ゴルフ引退を決意した。
何の結果も実績も残してないので、引退というよりは、試合放棄だ。
こうして私は、〝グリーン上にそっとクラブを置いて〟ゴルフを引退した。
気の変わらないうちに、と思ってゴルフ関係のものを全て売り払ったら、まあまあの小遣いになった。
神様からのプレゼントだ。
全て売り払って、ガランとしたクローゼットを見て思った。
『あぁ、棒っきれでやった空き地ゴルフが一番楽しかったなぁ、、、』