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中年じじぃの(愉快な)主張vol.5

やめてよかったことについて(その1)

2024/09/25

 私の貧弱な人生においても、あぁこれはやってよかった、と思えることがいくつかある。
逆に、これは本当にやめてよかった、と思えることもいくつかある。
どちらかというと、やめてよかった、ということのほうが、その後の人生を変えた気がする。大袈裟ですが。

 それは例えば、タバコやギャンブルだが、これはやめたほうがいいに決まっている。当たり前だ。
私がやめてよかったと思うものの一つは、TVゲームだ。いや、別にゲームを害悪とは全然思っていない。楽しいのはわかっている。
ここまで市民権を得るものになるとは思ってなかったけど。

 はるか昔、スペースインベーダーというゲームが世の中に誕生したとき、私は小学校高学年だった。しかも名古屋打ちでおなじみの名古屋市のとなりの豊田市に住んでいた。
今考えれば一回100円の、とんでもなく高額なゲーム機に友人と群がっていた。
どうやってゲーム代を工面したのだろう。謎だ。

 やがてインベーダーのあとパックマンやドンキーコングが登場し、アーケードゲーム機は家庭用コンピューターゲームになった。

 中学、高校と、部活やら受験やら恋愛やらで少しゲームから遠ざかってしまった。貧しい大学生時代は、そもそもテレビがなかった。もちろん携帯電話は世の中にない。
だから毎日、本ばかり読んでいた。(読書は好きだ)

 そしてとうとう社会人になり、テレビとビデオデッキと、スーパーファミコンを手に入れた。
いやぁ、スーファミの楽しいこと楽しいこと!
私は主にマリオカート(たぶん初代)や、スターフォックス、シムシティなどをやっていた。

 なにせ駆け出しの社会人で、当時は労働基準法など、少なくとも私の周りには存在しなかったので、とにかく朝から深夜まで働いていた。
仕事でヘトヘトになって夜中に帰って来る。ところが、晩飯もそこそこに私はまたテレビ画面と向き合い、マリオカートのタイムを1秒でも縮めるべく、朝方まで格闘するのである。

 あのころはムダに体力があったので、少なくとも指先と目と脳みそは、マリオがいるレース場に毎晩、馳せ参じていた。
あぁ、あの頃のムダな体力を全部貯金できていたらなぁ。いま毎日少しずつ引き出すのに。

 そんな日々を過ごしながら、ある日ふと思ったのだ。
『まてよ。インベーダーから始まったゲームが、あっという間にこんなに面白くなっている。
おかげで好きな本も読めないし、仕事もいつも寝不足だ。ゲームはこの調子だと、もっともっと面白くなっていくに違いない。ヤバい、ヤバいぞ俺!』

 そして私は、全てのゲームソフトとスーファミをテーブルの上に並べ、テーブル脇に置いた段ボール箱の中に、ガサガサガサっといっせいに放り込み、あくる日、仕事場の主婦さんに(小学生の子が二人いる)差し上げたのである。

 その日以来、ゲームには近寄らないようにしている。あの時の二人の子供よ、おれのせいで君たちの人生に何か悪影響がでてたらごめんよ。

 私の予測通り、ゲームはどんどん面白くなったようだ。まさかゲームをすること(作ることではなく)が、生きる手段や仕事にまで高まるとは予想しなかったが。

 毎朝の通勤の電車の中では、スマホのゲームに夢中になっている勤め人たちが大勢いる。
いや、ダメじゃないよ。ダメじゃないけど、、、。

 私はいま、あのときの自分にこう言いたい。
『えらい、えらいぞ、おれ。時間もお金もムダにせずにすんだぞ。しかしな、もっと要領よく仕事しろ!上司に媚びろ!酒は飲み過ぎるな!』

 ところで、〝スマホ〟って言わなきゃダメ?〝ケータイ〟じゃ通じない?
このあいだ、職場の若い後輩と話してたら、一瞬、話が通じなかった。

 いいよ、いいよ、スマホでも。どうせ私は〝携帯〟してるだけだから。


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