2024年。新しい価値観が芽生えた本『「社会モデルで考える」ためのレッスン』
今年出会った本の中で、特に心の奥まで届いた書籍。
『「社会モデルで考える」レッスン』(著:松浪めぐみ・生活書院)
私は、子供達に【二次障害】が起きたとき、親として思考停止せず最善を尽くせるように、日々起こる事の整理を兼ねて、そして、同じような困りごとがある親御さんへ向けて書いていますが、この本に出会えたこと、子供たちに感謝したいです。というのも、脳が喜ぶ価値観に出会えたから。優しいアップデートって気持ちいいです。
2024年、障害者差別解消法の改正法が施行され、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。そんな障害者差別解消法と合理的配慮の理解を深めることができる本が、この本です。こう書くと難しく感じるかもしれませんが、単純に読み物として面白いんです。「角度が変わると、世の中が違って見える」を体感できる本で、近い将来、この本の考えがスタンダードになって欲しいと強く思った次第です。
この本を読むまで「社会モデル」という言葉が体に沁み込んでなかったのですが、「社会モデル」とは、障害のある人が制限や不利益を受けるのは、その人の心身の損傷のせいではなく、「多数派に合わせて社会がつくられてきたために、さまざまな社会のバリアがあるから」と捉える枠組みのことと書かれていました。なので、いま、国・県・市町村の「社会モデル」はどうなっているのかを考えると、色々な気づきを得られるのです。
この本で、私がハッとした「社会モデル」は、視覚障害の人達の外出する際の困りごととして、よく「点字ブロックの上に自転車を置かれている」ということが発信されていますが、それ以上に、公共トイレの不便さがあるという点。他の人の助けを受けることが難しいうえ、トイレを製造する企業によって水洗レバーやペーパーの場所が違うので、ナーバスになるという。「公共のトイレに行くことが怖い」という生活、自分に置き換えたら、ゾッとしました。
このように、「社会モデル」を軸にすると、相手の困りごとに耳を傾けやすくなりますし、発信することもできるなど沢山の利点が。そうすることで市の条例が生まれる事もあり、モデルケースができたことで、国の法律まで動かせることができるそうです。最初の道を作る人って、やっぱり偉大です。
そして「その場の空気を吸う」という言葉は心に留めておきたい言葉。要は「少しでも体験・経験しましょう」の言い換えですが、確かに空気を吸うぐという表現だと一歩踏み出したくなります。子供たちのおかげで非常に素敵な本に出会えた2024年でした。
もうひとつ。泥ノ田犬彦先生の『君と宇宙を歩くために』が、漫画好きが選ぶ『このマンガがすごい! 2025』オトコ編1位に。今年、『マンガ大賞2024』でも大賞に輝いていますが、発達障害にまつわる漫画が評価されるって、漫画好きには、優しい人が多いなあと思うと同時に、新しい価値観を得たい人が多いんでしょうね。そして、こういう本や漫画を読めば、「その場の空気を吸う」際に、いい方向に転がるはずです。