野球中継
子どもの頃、将来の夢は何ですかって聞かれたら迷わずケーキ屋さんって答えてた。ケーキが好きだから。今なりたいのは、ラジオパーソナリティ。(第二希望:何らかのキャッチコピーをつくる人、第三希望:直木賞受賞作家、第四希望:YouTubeの概要欄でひたすら動画と関係ない物語をつくって投稿する、概要欄委託会社とか。なさそう。)
要するに言葉を扱っていろんな人に共感してもらいたいんだと思う。目で拾ってもらえるような書きおこした文章だけじゃなくて、それこそラジオパーソナリティなんかは表情や仕草とかの視覚情報無しで情報を伝えてる。そういうことができるようになりたい。ラジオは、声色とトーンと抑揚、あらゆる手段を使って言葉を音に乗せて発信する。こんなに難しくて繊細な言葉を扱う仕事があるんだとハッとさせられたのはだいぶ遡って小5、平日夕方〜夜にかけて放送されていたある地方ローカルのラジオ番組にはまる。毎日ラジオを聴きながら寝落ち。曜日ごとにパーソナリティが違っていて、私のお気に入りは水曜日。毎週深夜まで聴き入ってたから木曜日の授業は眠くて仕方なかった。毎日毎日飽きもせず、ボロボロの家族共用ラジカセで、みんなを起こさないようにちっさい音で耳元で音を聴く。小6の冬、両親に懇願して、ついに自分用のラジカセを進級祝いで買ってもらった。水曜日どころか毎日夜更かししてラジオを聴く夜。気づけばよく流れるCMの歌を覚えたり、番組の宛先メールアドレスや電話番号を暗記しちゃったり、「日本道路交通情報センターです」をスラスラ言えるようになったり。今後おそらく何の役にもたたないであろうそれらを記憶して余計な脳みそをたくさん使ってしまったけど、思い返せばあの頃からラジオにはかなり馴染みがあった。ラジオ好きの小中学生時代を過ごしたおかげで、耳からしか入らない情報を自分なりに解釈するっていう意味ではかなりの想像力や読解力がついたと思う。韓国アイドルやAKBが流行る中での地方局ラジオ。いつかはあのスタジオで、マイクの前で、たくさんの人に聞いてもらいながら話せるようになりたいな。私の密かな野望。
ラジオはラジオでも、バラエティやお笑い芸人が話すラジオをよく聴いてた。有名どころだとオールナイトニッポンとかJ-WAVEとか。割とメジャーなものが好きだけど、初めて聴いた時に一番感動したのは野球中継。球場の雰囲気、投手の表情、ボールの回転、走るランナー。全部を目で追い、目で見て楽しむスポーツのはずが、実況中継を聴くだけでなぜかその場の状況が手に取るようにわかる。本当に応援席にいるような錯覚。すごい。すごすぎる。テレビで見ていても複雑な野球というスポーツを声だけで伝えるあの人たちは何者ですか。何を食べて生きてきたらそうなれるのですか。早くあれになりたい。将来の夢は野球中継さんになること。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?