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たかが1ミリされど1ミリ
「朗読者」という本も「愛を読む人」という映画も話題になったことは知っていたけれど、当時そういう恋愛系に全く食指が動かなかったため完全にスルーしていた。2008年ということはもう16年も前の話?!
そんなの見てときめいてnoteに書こうとしてるんだからどうかしてるけど
ま、いっか。
あらすじを書くまでもないと思うけれど、私が忘れないために。
15歳の少年マイケルと35歳の女性ハンナが出会い体の関係に。
セックスの前にハンナは彼に本を読んで欲しいとお願いする。
色々な本を読んでもらいながら二人の関係は体だけではなくなった・・と
思った頃にハンナが突然姿を消してしまう。
数年後、マイケルは法科の学生になり勉強のために行った裁判所で
ナチの看守だった女性が裁かれる裁判を見学する。そこでマイケルは
ハンナを見つける。裁かれる側の看守だったハンナ。
ハンナは文字の読み書きができないことをひたすら隠し重い刑を受け入れる。
マイケルは妻と離婚して実家に戻り、そこで自分の本をテープに録音し
刑務所のハンナに送る。ハンナはそのテープで文字を覚えマイケルに手紙を書く。もう少しで刑務所から出られる、という時に彼らは再会するのだが・・・という話。
私のばあちゃんは文字を書くことができなかった。新聞や週刊誌は見ていたから読めたけれど自分の名前の「よし」と書くことが精一杯だった。
ばあちゃんは本当に気丈な人でどれほど辛いことがあってもどれほど体が痛くてもそれを外に出すことがない人だった。じいちゃんは気弱な男で外ではへらへらしているのにばあちゃんにはひどく意地悪いことを言っていた。
ばあちゃんは100回中99回は言い返して逆にこてんぱんにじいちゃんをやっつけていたけれど、その内1回の「お前、字も書けねえくせに」という言葉には黙ってしまっていた。
どうしてそんなことを言うのかな、といつも思っていた。字が書けないのはばあちゃんのせいではないのに、それを本当に恥じているのにどうしてそこを言うのかじいちゃんの気が知れなかった。
文字を読み書きできないということは、私が想像する以上に「恥ずかしくて辛いこと」なんだなとばあちゃんを見て知った。
ハンナが時折見せる「恥ずかしくて悔しそうな顔」は、だからなんとなく見たことがあった。自分の刑が重くなり、それで一生を棒に振るとわかっているのに隠さなければいけないことなのだろう。
そんなハンナが15歳のマイケルと出会い体の関係から始まる。
ハンナはたぶん仕事だけの人生。マイケルが現れ文字が読めなくて本を読めなかった頭と心と体も満たしてくれる。
こんなに幸せな事ってある???。相手は性に貪欲な15歳。自分が初めての女性で全てを受け入れてくれる。旅行にも連れて行ってくれる。本も沢山読んでくれる。怒れば機嫌もとってくれる。大人の男と違って駆け引きとかを知らないから「どうやったら許してくれるの?」と素直に聞いてくれる。「ハンナがいない人生を考えるだけで怖い」って彼の初めての女性なのに、会ったばっかりなのにそんなことも言ってくれる。
男って年をとるから女の扱いが上手くなる(パートナーの、という意味)というわけじゃないんだなと思った。なぜならマイケルは15歳だけれどハンナと付き合っていくうちにどんどん「男」になっていったからだ。
これ、マイケルのお母さん気づくよなーー。うちの息子の色気半端ないんだけど。彼女ができたにしたって同級生の彼女とかじゃないよなあ、でも聞けないしな~と思っていたと思う。
実際、マイケルがハンナに捨てられて家に帰ってきた時「帰ってきたのね」と言って髪の毛を触ったら、たぶん今までのように何気なく触っただけなのに手を振り払われていた。マイケル、すっかり大人の男になっちゃった!
顔はかっこよくないんだけど「きゃ~~~~~」っていう案件。
マイケルはハンナに捨てられてからそれなりに女子と付き合って家庭ももって娘もできる。でもいつまでも心にハンナがいるから誰との距離も近づけない。娘とまでも。
私中学生なんて人生の一時でしかないと思っていた。定規でいえば1ミリぐらい。だから気づけばその1ミリなんてすぐ忘れたければ忘れられるものだと思っていた。それは私がそうだから。大学が10センチぐらいだとしたら中学は1ミリもないかもしれなくて、だからその時にあった辛いことなんてなかったことにできるんじゃない?と思っていた。
子供らがコロナで色々な行事がつぶされて嘆いたけれど「小学生や中学生の出来事なんて人生の一部だって!これからもっと楽しいことあるから」って言ったけど、それは私だけのことだった。
長男は中学生の時が一番楽しかったと言った。
みんなそれぞれ目盛りは違うのに、また私に当てはめて考えちゃった。
1ミリでもそこに存在すれば傷つきもするし楽しかった思い出は一生だ。
マイケルは成就しなかった恋だからこそ一生それを持って人生を送ったけれど、もしかしたら成就してもそうだったかもしれない。
多感な中学生の頃に出会ったハンナ。自分を男に育ててくれて
何より本を読むだけで喜んでくれた女性。
忘れないか・・・忘れないよねえ・・と思った。
そしてマイケルはずっと怒っていたんだと思う。何も言わずに自分を捨てたハンナを。取り返しのつかない罪を犯したハンナを。
怒っていたから大事な時に声を出したりハンナに手を差し伸べられなかったんだと思う。
願わくはそれをこの先の人生で後悔しないでほしい。
ハンナとマイケルは体だけの一時の関係だっただけではない。
心と体を満たされた30歳を越えた女性でもこんなにかわいらしい表情をするのかと驚いた。ハンナが教会で子供たちの歌を聴くシーンだ。
そしてそれを優しく見守るマイケルは15歳の少年ではなく
完璧にハンナのパートナーとしての顔だった。
そしてそこが彼らにとって特別な場所だったと最後にもわかる・・・
という、素晴らしい映画だった。
ケイト・ウインスレット素晴らしかった。
マイケル、下手に15歳で色々教わったものだから、なんか手練れみたいになってたけどある意味かっこよかった(笑)
素晴らしい映画をみたので原作も即買い。本を読んだらまた書きます。