シフさんのこと
コロナが始まった2019年。
大好きなアンドラーシュ・シフさんの講演をテレビでみた。弾き振りと呼ばれる、自分で弾いて指揮もしちゃう、のだめカンタービレのチアキ先輩がやったやつをシフさんがやっていた。
ベートーベンの協奏曲を、自分が選んで連れてきたオーケストラと共に演奏をしていたのだ。
娘がバッハを弾き始めたころ、参考演奏を探していて色々聞いた結果「シフさん」に行き着いた。とにかく音が素敵。すごく静かな水の流れのように聞こえたのだ。最近、グレン・グールドにはまり中であれこれ聞いている最中だが当初グールドのバッハはあまり受け付けられなかった。音楽が一個一個に聞こえたのだ(当時は、ですよ)。
何かで書いている人がいた。
グレン・グールドは天才。アンドラーシュ・シフは遅咲きの天才だそう。努力、勉強を重ねて今の境地に至ったというシフさん。
私が天才のグールドになれる可能性はないとしても、遅咲き!とか努力!とかって言葉を聞くとなんとなく期待しちゃう。
私がこれから50年間バッハを研究して弾き続けたら、もしかしたらシフさんみたいなワンフレーズでも弾けるようになるかも✨
それはさておき、シフさんが大好きだ♥という話で、2020年に札幌のコンサートホールにシフさんが来るという情報を発見。即、チケット購入。私が「まさか本気?」と疑っている間に全世界が「コロナ」に本気になっていた。子供の卒業式が中止になるかも?よりシフさんのコンサートの中止の方が辛かった・・・その年、反田さんや横山幸雄さんのコンサートのチケットを買ったが悉く行けなくなってしまい、失意の中コンサートそのものに行くことをあきらめた。
今年になってやっと色々なコンサートが開かれるようになった。そしてシフさんのコンサートもあったのだ!!
というわけで、先日行ってきました。ピアニストとお客さんの距離を近くするためにということで、決まったプログラムはなく、シフさんが当日、会場と自分のコンディションによって選曲するそうな。ただ、バッハ、モーツァルト、ハイドン、ベートーベンの中からということでした(売られていたプログラムの中にはシューベルトが入っていて、ベートーベンはない、との記載があったのだが今回は違ったようだ)。
バッハとモーツァルト、モーツァルトとハイドン、そしてベートーヴェン。
曲について「このフレーズにはこういう意味がある」と説明しながら弾いてくれました。
1曲目、ゴールドベルク変奏曲のアリアで幕開け。これは「最後にベートーヴェンを弾くのだけれど、その後にアンコールを弾く気にはならないから最初に弾いてしまいます。アンコールだと思ってね」とのこと。アリアを聞いただけで「来てよかった・・・😢」と思いました。休憩はあったもののたっぷり3時間ほどのコンサート。最後にベートーヴェンのピアノソナタ31番を弾いてくれました。私はベートーヴェンをあまり聴いてこなかったのだけれど、色々きっかけがあり最近やっと聞くようになり、その中でもやはり後期ソナタである30~32番は別格だなと思いました。31番だけでも感動でしたが、何度かのアンコールのあと、ニコっと笑ってピアノに向かい「平均律1番」をアンコールに弾いてくれました。平均律1番を弾いて人を感動させることができるピアニストはたぶんとても少ないのではないのでしょうか。
奥様を通訳として伴い、最後は手をつないで舞台袖に下がって行かれました。バッハみたいな神様みたいな音楽を聴くことができました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?