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テスト前に掃除したり漫画読んじゃうようなことは、大人になってもあるもので。

ライブの前日。

ステージ用の楽譜が準備したかったし
楽器のチューニングもしたかった。

なにより、睡眠不足は良くないから早く寝たかった。

そのつもりだった。



ただ…


ちょっと仕事が終わるのが遅くなったので

帰って夕飯食べ終えて

ひと段落する頃には

金曜ロードショーが始まった。



今週の金曜ロードショーは『Coda』。

知らない映画だったけど
予告観てたら音楽の映画だったから
気になってしまった。


ざっくりストーリーに触れると
主人公以外、全員が聴覚障害の家庭。
そして主人公は歌が好きで、才能もある。

序盤、主人公は
家族の通訳をする役目があるため
生きる世間は家族の中という狭い世間

そして、そこは主人公の歌が理解されない場所。


主人公は、
自分の歌を人に聴かせたことがないことや
家族が歌に興味を示さないこともあり
※耳が聴こえないので必然。

歌うことが
自分の好きなことなのに
自信を持てないでいる。


そんな主人公が
自分のやりたいことを見つけ、夢を持つ。

けれども家族は
主人公の歌がわからない。
主人公の夢がわからない。

物語の中盤、一見して家族側が
主人公を蔑ろにしていて、我儘に見える。


でも、主人公のステージを
家族が観にいくシーンがある

主人公は最高の歌を歌い、会場中が感動する。
そんなシーンの途中。
作中唯一、無音になるところがある。

家族側の視点で会場が映る。
周囲の反応で、主人公が素晴らしい歌を歌っているのであろうことはわかる。
でも、無音の世界。
主人公の歌がどんなものか。
自分たちだけは、やはりわからない。

物語上、
家族が主人公の歌の才能や夢に気づき
理解しようとするシーンなんだけど。


映画を視聴している自分には、
家族側が主人公を蔑ろにしていたわけではなく。

家族の「わからない」を頭だけじゃなく
体験として理解させてくれるシーンに思えた。


そうして、物語終盤。
主人公は夢にチャレンジする話なわけだけど。




無茶苦茶感動した。



そして、ここまでの話でわかるように


ぼくは、がっつり映画をみちゃったのである。
ライブ前日でやることあるのに…



しっかり…みちゃったのよ。


結局、楽譜つくりもチューニングも
当日の午前中とリハから本番までの空き時間ですることに。


当日、朝早起きして家事を手早く済ませる。
可能ならウォームアップくらいして出発もしたい。



まずは楽譜。
曲と曲が繋がるところは楽譜をめくる暇がないため
A3で書いてた楽譜をA4一枚に収める。

2曲分用意したところで出発の時間。

急いで家をでる。

次には道中、河川の公園による。
楽器のチューニングを人の迷惑にならないところでするために。

音を整え、ある程度のあたりをつける。
最後は会場で微調整します。
空間の環境によって調整はどうせするから。

とにかく急いで10分くらいで済ませると、再出発。


ギリギリ、入り時間には間に合い。
リハを済ませる。



今度は、また楽譜の準備である。

ぼくは近場のカフェにいって作業することにした。



仕切りのあるひとり用の席があるカフェだったので、
ちょうどよかった。作業に集中できる。


頭を働かせるため、
ベリーをのせたソフトクリームとアイスコーヒーを注文する。


もくもくと作業を進め、
あと一曲で終わりというところまできたので
ひと段落し一息入れていると。



後ろの二人用席の会話が耳に入ってくる。


高齢の、男性と女性が世間話している。


初めは、
女性の愚痴を『うん、うん。』と男性が聞いていて


なんとなく口調から二人は夫婦ではない気がする。

友達か、あるいはカップルか。


いくつになっても、人の縁がある。
いいじゃない。と思いながら
続きの作業を始める。



最後の一曲も残りあと少しとなった頃、
気付いたら話し手が女性から男性に変わっている。

男性の口調が時折棘がある言い方をしており
雲行きが怪しい。
気づくと、女性の相槌もだんだん減っている傾向に思う。


それでも作業を進めなければ。

ぼくはこのあと、ライブなのだ。

時間内に済ませて、あわよくば軽く仮眠もしたい。



しかし、男性の放つトゲトゲした言葉が耳に入ってくる。

高齢男性「…でね、これはバカにはわからないんだよ」

ぼく(おぉう、上から目線きっついな、なにごと?!)

高齢男性
「例えば、発明とかする頭のいい人たちだって最初は誰にも理解されず、その人だけが見えているものがあるでしょ。それで発明中は周りから白い目で見られるけど、発明が形になって、役に立って、やっと周りは理解するんだよ。発明している人からしたら、周りはみんなバカに見える。だってすごいことしているのに理解しないんだから。それと同じなんだよ

ぼく(周りが自分の視点にたてないことをバカというのは、なんだか幼い感覚ではないのかな…。なぜなら、自分も周りの誰かの視点には立てないことを理解していたらバカにしないのでは…?記憶力と論理的思考だけが頭の良し悪しか?想像力や共感力も脳が発達することで他の動物から抜きん出た能力じゃないのかなぁ)



などと頭の片隅で考えて珈琲を飲む。

高齢男性
「つまりね、死後の世界や神様・仏様ってのを目に見えないからって信じない、わからないのはバカだからなんだよ」


ぼく(宗教絡みかい!…教えを説くには、いささか心が狭いですな〜)


一度だけ女性が
「わたしにはちょっとわからないわ」
と言っていたけれど


男性は若干のフォローを入れたあとに
結局、自分の語りたい教えを「わからない人はバカだ」というマウントを織り交ぜながら説いていた。


ついつい、聞いちゃうから
予定より遅くなりながらも
なんとか楽譜を書き終え、店をあとにする。



店を出る前に一瞬、女性の様子を見たら、
困り顔のまま相槌もなく、ただただ説法を浴びてた。



「いくつになっても、面倒くさい人間関係もあるんだろうな…」



と、複雑な心境になりながら、ぼくはライブ会場へ向かった。



そんな

社会人のひとりである僕の

なんでもない週末の話。



そんなふうに
楽したり、焦ったり、緊張したり、うぉおっ?!てなったり
しながら過ごしていく。

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