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楠木ともりさんに配慮されたA・ZU・NAランドの秀逸なステージ演出。

2021年10月23日、24日に幕張メッセで開催された「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 UNIT LIVE & FAN MEETING vol.3 A・ZU・NA 〜The Night Before〜」のステージ演出がよくできていたよというお話です。A・ZU・NAに限らずUNIT LIVE & FAN MEETING全般およびシャッフルフェスティバルのネタバレが含まれます点、ご了承ください。

開演に先駆けて演者のひとりである優木せつ菜役の楠木ともりさんに関して、下記のお知らせがありました。

所属事務所のニュースには結論として以下のことが書かれています。

この度の診断を受け、誠に心苦しい決断とはなりますが、自身の活動、及び、参加する全てのコンテンツでの稼働におきまして、大きな動きを必要とするダンスに関し、今後は差し控えさせていただきますこと、ここにご報告いたします。

何も今に始まったことではなく、2021年5月に開催された「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 3rd Live! School Idol Festival ~夢の始まり~」でも曲数を絞ってパフォーマンスすることが予め告知されていました。当時は「CHASE!」も「DIVE!」もバリバリ踊っていたので「意外と動けるじゃん」という印象をもったものです。そのときに比べると「大きな動きを伴う運動を続ける限り症状を抑えるのが困難」という点も含めて強めのメッセージであると思います。

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会はラブライブ!シリーズにしては珍しくソロを主体としているため、楠木さんがステージに立たなければならない場面が他のタイトルに比べると少ないだろう点は、いくらかやりやすいのかもしれません。一方で、今回のようなユニットライブとなると話は別。A・ZU・NAの「NA」である楠木さんは基本的にはステージに必要不可欠なのです。3rdライブのように「曲数を絞る」対応が難しそうな中、いったいどのような形でステージを見せてくれるのか、ステージで魅せてくれるのか、とても楽しみにしていました。

まずはセットリストをご覧ください。

01: Dream Land!Dream World!(ショートver.)
トークパート
幕間アニメ
02: Maze Town
03: Kakushiaji!
MC
04: Cheer for you!!(トロッコ)
05: Happy Nyan! Days(トロッコ)
ゴーストDJタイム
06: やがてひとつの物語/桜坂しずく
07: LIKE IT!LOVE IT!/優木せつ菜(トロッコ)
08: Say Good-Bye 涙/上原歩夢
寸劇
09: あなたの理想のヒロイン/桜坂しずく&上原歩夢
幕間アニメ
10: フォルクロア ~歓喜の歌~
MC
11: Dream Land!Dream World!(トロッコ)
12: 全速ドリーマー(トロッコ)

以下は参考までに同じ会場で行われた同じUNIT LIVE & FAN MEETINGであるQU4RTZのセットリストです。

01: Sing & Smile!!(ショートver.)
トークパート
幕間アニメ
02: Swinging!
03: Beautiful Moonlight
04: Twinkle Town
MC
05: Make-up session ABC(トロッコ)
06: Not Sad(トロッコ)
07: 未来ハーモニー(アコースティックver.)
08: Sing & Smile!!
幕間アニメ
09: Märchen Star/近江彼方
10: Margaret/中須かすみ
11: アナログハート/天王寺璃奈
12: 哀温ノ詩/エマ・ヴェルデ
MC
13: Love U my friends

これらを見比べながらステージ構成を振り返ってみましょう。

・トロッコの回数が多い
これは予想できていた演出でした。踊れなければ回ればいいじゃない。QU4RTZが2曲だったのに対してA・ZU・NAはせつ菜ソロ曲も合わせて5曲です。たくさん回ってくれました。たくさん近くに来てくれました。スタンドやアリーナ後方だった人にとってはむしろ嬉しい演出だったのではと思います。

・幕間にキャストが捌ける回数が多い
QU4RTZは2回の幕間アニメと自分以外のソロ曲の時の多くて3回。A・ZU・NAはそれに加えて謎のゴーストDJタイムと寸劇がありました。楠木さんが舞台裏で一休みできるタイミングを増やすための構成であると考えています。幕間アニメが増えるだけだと面白みに欠けますが、どのように時間を埋めるかの工夫がみられて楽しかったです。

・あなたの理想のヒロインの演出が理想的
本項はこれが書きたかったと言っても過言ではありません。まずは何が起きたか説明します。幕間アニメが始まったかなと思ったら、始まったのはヒーローショーでした。そもそもアニメではありませんでした。ヒーローせつ菜がステージ2階に登場して何やかんやあった後に向かって左の扉からヒロイン登場。ヒロインといえば歩夢かなと思ったらしずくでした。では歩夢は? 歩夢は向かって右の扉から登場。「いやいや私こそがヒロインである」と主張しています。ちょっとした言い争いになり、最終的に「あなたの理想のヒロインは私です」という旨の言葉を2人で発して、2人でしずくの最初のソロ曲「あなたの理想のヒロイン」を歌い始めました。ヒーローショーのテンションが楽しくて全く読めていませんでした。「何だかよくわからないけどいいぞやれやれ!」くらいの心持ちで見ていました。2人がヒロイン問答を始めたあたりで気がつきます。「しずく……ヒロイン……歩夢……まさか……!」と自分の中で点と点が線に繋がる感覚が面白かったです。なぜ歩夢がしずくの曲である「あなたの理想のヒロイン」を歌えるのかといえば、すでに校内シャッフルフェスティバルで歌ったことがあったからです。つまりこれは本家とシャッフルのコラボ。この形のコラボ自体はUNIT LIVE & FAN MEETINGの皮切りであるDiverDivaの公演で愛と果林もやっていました。だったら予見できなくなかったのでは? と言われればその通りです。しかしDiverDivaでソロ曲のコラボが披露できたのはDiverDivaがデュオであるからと、デュオであるためにソロ曲の数が他のユニットより少なく何かで埋め合わせなければ曲数が少ないからだと思っていました。実際、カルテットであるQU4RTZはやっていません。完全に油断していました。DiverDivaのように前触れなくいきなりサプライズでコラボが始まってもそれはそれでよかったのかもしれませんが、寸劇にも大きな意味があったと思います。それは楠木さんが参加できることです。トリオなのに1人を差し置いて2人で歌うことは不公平感とまでは言わなくとも小さな違和感に繋がります。そこに寸劇を付け足すとあら不思議。2人で歌う「あなたの理想のヒロイン」はA・ZU・NAの3人で作り上げる「あなたの理想のヒロイン」に進化するのです。それでいて楠木さんはゆっくりお休みすることもできる。うまい。うますぎる。私の理想の舞台演出でした。遊園地というコンセプトも活かした100点満点中1000点あげたい演出でした。

・1曲フル尺で自立しなければならない曲がない
より正確に言えば「いざというとき何かに体重を預けることができるようになっていた気がする」になります。2回目のMCで楠木さんだけイスが用意されたのはちょっとビックリしました。立ち続けるだけでも大変なのかという視点で改めてステージ演出を振り返ると、驚くべきことに何の支えもなしに1曲フル尺で歌っている楽曲がないんですね。トロッコ曲は言わずもがな。「Maze Town」はどこまで体重を預けられるかわかりませんがマイクスタンドがありました。「Kakushiaji!」と「フォルクロア ~歓喜の歌~」は座りながらの歌唱でした。座りながら歌うといっても、なんの脈絡もなく座っていたわけではありません。オープンカフェ風のセットに3人で横並びで座っていたり、ステージ階段の中ほどに座る楠木さんと階段下で踊る他の2人で綺麗にフォーメーションを組んでいたり、楽曲に沿った演出の一部として自然な形で足を休めていました。

・まとめ
2度目のMCで椅子が出てくるまで、楠木さんの足の調子がよくないことをすっかり忘れていた人や知らずに気がつかなかった人もいたのではないでしょうか。大きな動きができなくても見せ方次第で十分に魅せられることを示した公演だったと思います。9〜12人曲のフォーメーションダンスは現状を見ている限り流石に難しそうですけれど、せつ菜として「大好き」を叫び続けることは問題なくできそうで。これからも演出を工夫しながら素敵なパフォーマンスを見せてほしいなと思います。4thライブではトロッコから「ヤダ!」を叫ぶのかしら。

余談
今のところのUNIT LIVE & FAN MEETINGで唯一のアリーナを引けたA・ZU・NAランド。残念ながらいちばん後ろのいちばん端のブロックでちょっぴりがっかりしましたが、よくよく考えてみるとトロッコルートのすぐそばで。トロッコ増し増しの演出は私にとってはめちゃくちゃよかったです。ネコミミでNyanNyanする楠木さんを直近で見られてめちゃくちゃよかったです。

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春乃はじめ
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