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誰でもわかる包括利益

包括利益の計算を5つのステップで解説します。

1 包括利益とは何か?

包括利益は、一定の期間で純資産(資産-負債)がどれだけ増えたか?という金額です。

包括利益=純資産の変動額

包括利益と損益計算書の当期純利益(純利益)の違いは、評価益を含むかにあります。
純利益はただの評価益を含みません。
包括利益はただの評価益を含みます。
まだ資産を売却等して現金を手にしていないただの「絵に描いたもち」である資産の評価益を含んだ利益が包括利益です。

包括利益は、期末の純資産から期首の純資産を控除して計算できます。
*増資等の株主との直接的な取引による影響を除きます。

包括利益=期末純資産-期首純資産

簡単な例で確認しましょう。


例1)設立第1期の包括利益はいくらか?
   ・現金100円で会社を設立、払込金は全額資本金とした。
   ・全額でその他有価証券を購入した。
   ・期末有価証券の時価は130円である。


解答)30円

解説)期末純資産130円-設立時純資産100円=30円

  一連の仕訳は次のとおりです。
設立:現金預金   100 資本金         100
購入:投資有価証券 100 現金預金        100
期末:投資有価証券   30 その他有価証券評価差額金  30


包括利益は、純資産の変動額であり、期末純資産から期首純資産を控除して計算できます。

期末純資産(資本金100円+その他有価証券評価差額金30円)
-設立時純資産(資本金100円)=30円

期首と期末の純資産は、資本金以外にはその他有価証券評価差額金だけで、期末のその他有価証券評価差額金の30円でもいいです。

純資産は、資産と負債の差額なので負債がないこの例では、期末資産-設立時資産として計算できます。

期末資産(投資有価証券130円)-設立時資産(現金100円)=30円

2 その他の包括利益とは何か?


包括利益は、純資産の変動額でした。
しかし、実際の包括利益の計算は、定義とは異なり、当期純利益にその他の包括利益を加減して計算します。

包括利益=純利益+その他の包括利益

その他の包括利益は、まだ純利益には含められていない評価益です。
その他の包括利益には、その他有価証券評価差額金等があります。
貸借対照表の計上額は、期中の「増減額」です。
「その他有価証券評価差額金の変動額」がその他の包括利益の代表です。


例2)第1期及び第2期のその他の包括利益はいくらか。
   ・現金100円で会社を設立し、払込金は全額資本金とした。
   ・第1期にその他有価証券を現金100円で購入した。
   ・第1期末のその他有価証券の時価は120円であった。
   ・第2期末のその他有価証券の時価は130円であった。


解答)第1期20円 第2期10円

解説)第1期:第1期末純資産120円-設立時純資産 100円=20円
   第2期:第2期末純資産130円-第1期末純資産120円=10円

   一連の仕訳は次のとおりです。
設 立:現金預金   100 資本金          100
購 入:投資有価証券 100 現金預金         100
1期末:投資有価証券   20 その他有価証券評価差額金20
2期末:投資有価証券   10 その他有価証券評価差額金10
*なお、包括利益の計算に合わせるため、期首の振戻処理はしていません。

注意したいのは、その他の包括利益であるその他有価証券評価差額金は、あくまでも利益(フロー)という点です。
上記では第1期のその他の包括利益(OCⅠ)は20円、第2期のOCIは10円です。
第2期末の貸借対照表のその他有価証券評価差額金は30円になりますが、これはその他の包括利益の累計した金額(ストック)です。
フロー(利益)とストック(在高)の違いに注意しましょう。

3 包括利益を実際はどう計算するか?

包括利益の定義は「純資産の変動額」です。
しかし、実際にはは純利益にその他の包括利益を加減して計算します。
こんな感じです。

包括利益=純利益±その他の包括利益

純利益はとても大事なのでまずこれを示し、これに加減する形で包括利益を計算するため、純資産の変動額という形では計算しません。

例3)第1期の純利益、その他の包括利益及び包括利益はいくらか。
   ・現金100円で会社を設立し、払込金は全額資本金とした。
   ・第1期に現金100の手数料を受け取った。
   ・第1期にその他有価証券を現金100円で購入した。
   ・第1期末のその他有価証券の時価は130円であった。


解答)純利益100円 その他の包括利益30円 包括利益130円

解説)純利益は受取手数料:100円
   その他の包括利益:130円-100円=30円
   包括利益:純利益100円+その他の包括利益30円=130円
   または*期末純資産230円-設立時純資産100円=130円

   一連の仕訳は次のとおりです。
設 立:現金預金   100 資本金          100
購 入:投資有価証券 100 現金預金         100
受 取:現金預金   100 受取手数料        100
1期末:投資有価証券   30 その他有価証券評価差額金30

4 リサイクリングとは何か?

いったん計上されたその他の包括利益を純利益に振替えることをリサイクリングといいます。
リサイクリングは、組替調整再分類ともいいます。
その他の包括利益という包括利益の一種にしていたものを純利益という別の利益に組み替えて調整したり、再び分類し直すためにこのように呼ばれます。
過去に包括利益に含められた金額を改めて純利益に計上し直すからリサイクリングです。

包括利益の計算は、純利益からスタートします。
純利益に計上し直した金額は、過去に包括利益に含まれた金額ですから、包括利益の計算上は同額を控除して、包括利益を計算する必要があります。
この控除額が組替調整額です。
組替調整額は、純利益計算に含まれた金額をそのまま除くため、売却益は減算し、売却損は加算する必要があります。


例4)第1期及び第2期の純利益、包括利益、その他の包括利益(OCI)はいくらか。
   ・現金100円で会社を設立し、払込金は全額資本金とした。
   ・第1期にその他有価証券を現金100円で購入した。
   ・第1期末の他有価証券の時価は130円であった。
   ・第2期にその他有価証券を130円で売却した。


解答)第1期:純利益  0円 包括利益30円 OCI 30円
   第2期:純利益30円 包括利益  0円 OCⅠ△30円(組替調整額)

解説)第1期包括利益:第1期末純資産130円-設立時純資産100円=30円
   第2期純利益:売却益の30円
   第2期包括利益:第2期末純資産130円-第1期末純資産130円=0円
   第2期OCI:その他有価証券の時価変動額0円-組替調整額30円

   一連の仕訳は次のとおりです。
設 立:現金預金                   100 資本金           100
購 入:投資有価証券                 100 現金預金          100
1期末:投資有価証券                   30 その他有価証券評価差額金 30
売 却:現金預金           130 投資有価証券        130
    その他有価証券評価差額金30 投資有価証券売却益            30*
*包括利益の計算のイメージに合わせるため、期首振戻処理はしません。
*リサイクリングをしないと次のとおりです。
      その他有価証券評価差額金30 繰越利益剰余金30*
*リサイクリングをしないことでCF(130-100=30)と当期純利益(0)は一致せず、純利益と株主資本とのクリーン・サープラス関係も成り立たないことになります。

5 当期発生額があるときの計算は?

当期の時価の変動額(当期発生額)があるときはちょっとやっかいです。
この当期発生額も包括利益を構成します。

例5)第1期及び第2期の純利益、包括利益、その他の包括利益(OCI)はいくらか?
   ・現金100円で会社を設立し、払込金は全額資本金とした。
   ・第1期にその他有価証券を現金100円で購入した。
   ・第1期末の他有価証券の時価は120円であった。
   ・第2期にその他有価証券を130円で売却した。


解答)第1期:純利益  0円 包括利益20円 OCI 20円
   第2期:純利益30円 包括利益10円 OC1△20円

解説)第1期純利益 :0円
   第1期包括利益:期末純資産120円-設立時純資産100円=20円
   第2期OCI :20円
   第2期純利益 :30円(売却益)
   第2期包括利益:期末純資産130円-期首純資産120円=10円
   第2期OCⅠ :当期発生額10円-組替調整額30円=△20円

   一連の仕訳は次のとおりです。
設 立:現金預金   100 資本金           100 
購 入:投資有価証券 100 現金預金          100
1期末:投資有価証券   20 その他有価証券評価差額金 20
売 却:現金預金   130 投資有価証券        130
    投資有価証券   10 その他有価証券評価差額金 10 *発生額
    その他有価証券評価差額金30 投資有価証券売却益30*組替調整
*包括利益の計算のイメージに合わせるため、期首の振戻処理はしません。
*仮にリサイクリングをしないと最後の仕訳は次のようになります。
 その他有価証券評価差額金30 繰越利益剰余金30 *


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