1.はじめに株主資本はいつ変動するのでしょうか? 株主資本がどのようなタイミングで変化するのかを会計学上の資本と利益の区別及び具体的な会計処理を前提に考えてみました。 2.株主資本とは何か?まずは対象となる株主資本とは何かを考えておきましょう。 株主資本とは、「純資産のうち株主に帰属する部分」をいいます。 マンションなどでは、所有者の持分といったりしますが、企業の純資産のうちの株主の持分、それが株主資本です。 「株主資本」の歴史は、それほど古いものではありません。 平成1
クリーン・サープラス関係は、「利益が出た分の財産が増えている」関係です。 投資家にとって大事なこのクリーン・サープラス関係を税理士試験の財務諸表論に必要な範囲で考えてみました。 1.クリーン・サープラス関係とは何かクリーン・サープラスとは、きれいな剰余金(≒繰越利益剰余金)。 一般的には、利益分の繰越利益剰余金が増え(損益/繰越利益剰余金)、 逆に利益がないのに繰越利益剰余金は増えません。 クリーン・サープラス関係とは、利益分だけ資本が増える関係を意味します。 なお、増資な
はじめに企業会計では、貸借対照表に資産をいくらで計上するかが大きな課題です。 単に評価といえば資産(や負債)の貸借対照表への計上額を決めることといってもよいでしょう。 かつて、すべての資産は基本的に原価で評価していました。 しかし、現在ではすべての資産を原価か時価の一方のみで評価することはせず、複数の測定値を使い分ける混合測定という考え方がとられています。 混合測定の考え方今日の制度会計では、資産を所有目的ごとに金融投資と事業投資に区分し、基本的に、前者は時価で評価し、後
1 資産の定義を考える概念フレームワークでは、資産を次のように定義しています。 「経済的資源」とは、キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉をいい、「支配」とは、所有とは異なり、経済的資源を利用し、経済的便益を享受できる状態をいいます。 リース取引における借手は、オペレーティング・リース取引における物件を使用し、そこから便益を受けているのですから、経済的資源に該当するのは間違いないでしょう。 また、オペレーティング・リース取引では、リース物件を専属的に使用し、そこから経済的
1 リサイクリングは違う種類の利益の振替えであるリサイクリングとは、過去(当期を含む。)のその他の包括利益(以下「OCI」。)の純利益への振替えです。 OCIの典型がその他有価証券の評価益(その他有価証券評価差額金)なので、その他有価証券を売却してこれが純利益に振替えられることといってもよいでしょう。 いったん計上した包括利益を種類の異なる利益に再び組み替えるため「組替調整」や「再分類」とも呼ばれます。 この前期のOCI50円を当期の純利益に振替えるのがリサイクリングです
はじめに資本取引をしっかりさせることで資本と利益を区別し、正しい損益を計算しましょうというお話しです。 1 資本取引とは何か?まずは資本取引とは何か?をはっきりさせておきましょう。 株主と直接取引をして、財産が増減するのが資本取引です。 増資のように株主から財産を受け入れたら資本取引です。 株主に配当をすれば会社の財産が減るので資本取引です。 原資(利益剰余金か、資本剰余金か)は問わず、配当は資本取引です。 今日の会計は株主の立場で行います。 このような考え方が資本主理
包括利益の計算を5つのステップで解説します。1 包括利益とは何か?包括利益は、一定の期間で純資産(資産-負債)がどれだけ増えたか?という金額です。 包括利益=純資産の変動額 包括利益と損益計算書の当期純利益(純利益)の違いは、評価益を含むかにあります。 純利益はただの評価益を含みません。 包括利益はただの評価益を含みます。 まだ資産を売却等して現金を手にしていないただの「絵に描いたもち」である資産の評価益を含んだ利益が包括利益です。 包括利益は、期末の純資産から期首の純