スケッチ02102021
赤い靴をはくと
彼女は
息絶えるまで踊り続ける。
絵もそれに似て
描き続けるようになる。
朝起きると
まず水を飲んで
小さな画面にほんの少しだけでも
絵の具を置くと、呼吸が始まる。
何日かに一度
両手に絵の具をつけて描いてしまう
道具を持つのは、いつも右手ばかり
利き腕は、自分をもねじ伏せようと
意図や欲望を増幅させ
画面は薄汚れる。
左手がどんどん離れて
体の左側が疎かなままの画面
右手首だけで描いた線の無残な結果。
だから、左手を使うよう、両の手で、粘土で、形作るように、描く。
道具という靴を脱ぐためには
ぬるぬる べたべた ぐちゃぐちゃ
そこに裸足で入ること
生の感触を得ようとすること
しかし、私は一瞬ためらい
野蛮に思うのはなぜだ。
料理はいつも素手で作っているにも拘らず。
憧れは
とんでもなく綺麗な色の泥絵。
身体中を使って描いた後は
ふうっと、深く息をする。
描き憑かれる前に
飽き性だから
きっと靴がスタコラ逃げてしまうだろう。
2021年10月2日 筆