『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』を読んで
奥山沙織担当プロデューサー
ボヒゃまげ
僕がこの本を選んだのは、担当しているアイドルの奥山沙織さんが推薦図書として選んでいたからです。
本書の内容はオムニバス形式の短編集で、どの章も恋愛において様々な悩みを抱えた女性たちが「Closet」というセレクトショップを訪れ、不思議な雰囲気のオーナーに服を選んでもらい、自分を見つめなおしていくという形式で進められていきます。
タイトルにもある通り、この本の舞台はセレクトショップの、さらにその中の試着室がメインとなります。
恋人とのすれ違いがあったり、遠く離れてしまう男性に思いを寄せてしまったり、元彼の結婚スピーチを頼まれたりと、様々な想いを持った女性たちが「Closet」へと来店します。
白い壁、古いミシン、吊るされた裸電球と落ち着いた装いの店ですが、その一角のひと際大きい試着室。
その中で自分が選んだ服を当てながら彼女たちが歩んできた人生を思い返す、という形で話は進みます。
この本を読んだとき、一つの既視感を覚えました。
試着室の鏡の前で、自分が選んだ服を持ったもう一人の自分と相対し自分自身と向き合い見つめなおす。
これはアイドルのみんなが初めてステージ衣装を受け取った時と同じなのではないか。
不安や迷いと向き合い、今までの人生を振り返る。
そしてアイドルにならなければ着なかったであろう衣装に袖を通し、新しい一歩を踏み出す。
プロデューサーとしての経験のお陰で、試着室で誰かに思いを馳せるということの物語をより深く感じることが出来ました。
僕はこの本を読み終えた時、奥山さんは何を想ってこの本を読み推薦したのだろうか、ということを考えました。
本書では店のオーナーが登場人物にぴったりの服を一つ一つ選んでいきます。
いつもなら選ばない服、普段よりセクシーな服、自分では思いもよらなかった服。
試着室の中でその服を着た自分自身を見た彼女たちは、いつもとほんの少し違う自分に勇気をもらい、試着室に入る前より少し晴れやかな気分でその服を着た自分を見せたい相手の元へ向かっていきます。
それは、奥山さんが目指すアイドルの姿に近いのではないかと感じました。
素敵になった自分は、自分にほんの少し勇気をくれる。
奥山沙織というアイドルは、そういった想いを見ている人に届けたいのだとこの本を読んで改めて感じました。
最初にこの本が選ばれていることを知った時、奥山さんのイメージに合っているなあという感想と、思ったより大人向けの本で正直驚いたという感想を同時に抱きました。
ですが読み終えた今、奥山沙織という19歳のアイドルがこの本を素敵だと思い、推薦されたことの意味を感じ取れたように思います。
この本を読んで勧めてくれた奥山さんに恥じないようなプロデューサーになりたい、と感じさせてくれる一冊でした。
※本記事は「奥山沙織さんに推薦された本を読んで、お返しとして読書感想文を書いた」という体の記事です。