パワーとは? 筋力とパワーは違うの!?
Body Updation トレーナー中田史弥です。私は、アスレティックトレーナー・パフォーマンスコーチという肩書きで日々アスリートを対象に競技力向上、怪我の予防、アスレティックリハビリテーションなどを大きな目的に治療やトレーニング指導を行っています。
今回は、『パワーとは? 筋力とパワーは違うの!?』というテーマで現場で活躍するトレーナーの皆さんやこれからトレーナーを目指す皆さん、そしてスポーツ選手たちにプラスになる情報を発信できればと思います。
パワー≠筋力(パワーと筋力はイコールではない)
日々、さまざまな競技レベル(高校生〜プロアスリートまで)の選手たちとセッションしていると「パワー」や「筋力」という言葉を選手からよく耳にします。しかし、選手たちの中には「パワーと筋力はイコールではない」ということを理解していなく「パワー=筋力」と勘違いしているアスリートが多数いるというのが実状です。
この2つの言葉の違いや意味が理解できていなければ、目的に応じたトレーニングの種目の選択に失敗してしまうことも少なくないかと思います。
ただ、パワーや筋力という言葉は厳密には専門用語であり、トレーナーという専門家に正しくその定義を教わることが必要なので、勘違いをしている選手たちには一切、非はありません。ですので、今記事で「パワー」「筋力」という言葉について、それぞれ具体的にどんな意味を持つのか、違いは何なのか、ということを正しく学んでいきましょう!!
筋力とは?
筋力とは、筋肉が伸収縮をすることにより発揮される筋出力のことです。
例えば、上記のスライド内にあるダンベルアームカールを例にすると、10kgのダンベルを持ちカール(肘が伸びた状態から完全に曲げること)ができれば、上腕二頭筋の肘の屈曲動作の筋力・筋出力は10kgということになります。しかし、これは上腕二頭筋のパワーが10kgという意味ではありません。
このように筋肉が伸収縮をすることにより発揮される筋出力のことを「筋力」と言います。
筋力とは?:単関節運動と多関節運動
さらに筋出力について詳しく説明すると、筋出力の発揮の方法は主に単関節運動によるものと多関節運動によるものの2つの方法があります。
単関節運動とは、前例のダンベルアームカールのように肘関節という一つの関節のみを使っての運動のことを指します。
反対に多関節運動とは、スクワット動作などのように2つ以上の関節を使っての運動のことを指します。スクワットでは主に足関節、膝関節、股関節と3つ関節を同時に使っての運動になります。基本的に多関節運動では、関わる筋肉の数が多くなるので必然的に筋出力は高くなります。そして、多くのアスリートが行っている競技の中で必要な体の動きは、この多関節運動がほとんどです。
筋力とは?単関節的筋出力と多関節的筋出力の測定方法
ごく一般的な測定方法として、ダンベルやバーベルなどの重りを用いて測定する方法や、写真にあるようなダイナモメーターという測定器を用いて測定を行うこともあります。手術後のリハビリ目的や競技力向上のためのトレーニングなど目的に応じて単関節運動が適切なのか多関節運動が適切なのかを理解して筋力強化にアプローチすると良いかと思います。
パワーとは?
一方パワーとは、単位時間あたりの仕事の割合で以下のような公式で表すことができます。
Powerパワー = Force出力 X Velocity速さ
簡単に表現すると筋出力をどれだけの速さで発揮しているか、ということになります。例えば、ベンチプレスで100kgのバーベルを挙げるとします。100kgのバーベルを胸の高さまで下ろしてから肘を伸ばして、持ち挙げる動作の時間が1秒だとします。すると、同じ動作を2秒かけて行った時と比べて、前者の方がパワーの値が高いことになります。
したがって、前章で説明した筋力・筋出力をどの速さで発揮するかとうことになります。出力発揮の速さが速ければ速いほどパワー値は高くなります。
パワーとは?測定方法
どうすればパワー値を上げれるか?
前述したようにパワーの値を算出するには、筋出力と速さという2つの要素を掛け算で表せるということはご理解頂けたかと思います。
では、アスリートがトレーニングで求めるパワー値の向上をするには、どのようなアプローチをすれば良いのか主に2つ方法についてお話していきます。
①筋力を上げる
一つ目の方法は、筋力・筋出力を向上させることによりパワー値を上げるということです。このアプローチに関しては、一般的に筋力トレーニングをすることにより筋肉が発揮できる筋出力を上げて、パワーを向上させます。
したがって、自重、高重量、アイソメトリック、アイソキネティック、アイソトニック、コンセントリック、エキセントリック、単関節運動、多関節運動さまざまな筋力トレーニングの手法はありますが、目的に応じて根本的な筋出力向上を図ります。
②速さを上げる
二つ目の方法は、パワー公式の後者である、速さに目を向ける手法です。速さの公式は以下の通りです。
Velocity速さ = Distance距離 ÷ Time時間
Velocity速さを向上させるためには、Distance距離を伸ばす、Time時間を短くする、または両方を行うことにより実現できます。その結果、パワー値が上がるということになります。非常に簡単な表現ではありますが、理論上はこう言えるかと思います。
ここで強調しておきたいポイントとしては、パワー値を上げたい選手が筋トレは行っているが、
1、速さに対してのアプローチはできているか?
2、速さに関わる距離と時間を考えれているか?
ということです。
では実際にこのコンセプトを用いてのパフォーマンス指導の一例を野球のバッティングに当てはめて紹介します。
例1)バッティングのスイングのパワー値を上げたい、いわゆるボールへのインパクト力を向上したい選手に対して、距離を用いてのアプローチの一例を解説したいと思います。
要するに
一定の時間内でスイングの軌道(トップからインパクトまで)距離を伸ばす
⇨スイングスピードが上がる
⇨パワー値が上がる
結果:ボールへのインパクト力向上
①トップの位置を上げる:ステップ足と重心が前方方向に移動していくことに逆らって、グリップの位置を残しトップを作ります。
②バットの軌道距離を伸ばす:①の結果により点線の距離が伸びます。
同じ動作時間の間にバットの移動距離を伸ばすことでスピードが上がり、結果的にパワー値(インパクト時にボールに伝わる力)を上げることができます。
実際のパフォーマンス指導に置き換えると少し複雑になるかと思いますが、、、
今章のメインポイントは、あくまでパワー値を上げたい選手が筋トレだけではなく
1、速さに対してのアプローチはできているか?
2、速さに関わる距離と時間を考えれているか?
ということです。
まとめ
1、『筋力とパワーはイコールではない』ということ
2、筋力とは、筋肉が伸収縮をすることにより発揮される筋出力のこと
3、パワーとは、単位時間あたりの仕事の割合で以下のような公式で表すことができること Powerパワー = Force出力 X Velocity速さ
4、パワー値を上げたい選手が筋出力を上げるアプローチ(筋トレ)だけではなく、速さにも目を向けれているか。ということ
これらのコンセプトを理解し、これからのパフォーマンス向上、怪我の予防のためのトレーニングに役立てていただければ幸いです。
Body Updation 中田史弥
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