眠れない夜に〜
オンコール当番の夜。電話が鳴りました。
「夜分にすみません。父のことで相談です。どうしたら良いかわからなくて・・。」
電話口では、心配そうで、そして、夜に電話した事が申し訳なさそうな娘さんの声。
私は娘さんとのやり取りの後、今からうかがって様子を看させていただく事を提案しました。
「本当ですか!来ていただけるのなら、お願いします!」
娘さんの声が少し明るくなりました。
(うかがって、対処ができて、何とかなりますように)
私は内心ドキドキしながら、利用者さんのお宅へ車を走らせます。
―1時間後。
「それでは、失礼しますね。おやすみなさい。」
と私。
「こんな夜中に来ていただいて、ご迷惑をかけてすみませんでした。」
大変申し訳なさそうなご本人。
私が
「こういう時の為の私達なのだから、『すみません』は無しですよ。」
と声をかけると、少しほっとした表情をされました。
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訪問看護ステーションでは、24時間対応というものがあり、営業時間外、日祝日も24時間365日 連絡がつき、必要時は夜間であっても、いつでも訪問できる体制をとっています。
スタッフは自宅に緊急用の電話を持ち帰り、いつでも対応できる状態で過ごします。自宅で当直を行うようなものです。
その電話当番を、オンコール当番といいます。
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オンコール当番の夜。
いろいろな夜があります。
一度も電話が鳴らない夜。
夜中に電話が鳴ったような気がして何度も目が覚める夜。
お看取りの方が「いよいよ今夜かも」と、緊張して過ごす夜。
日中の体調が思わしくないとの申し送りを受け、その方のことを色々想う夜。
調理中の火を消して電話相談を受ける夜。
救急車搬送をしていただくよう電話でお話しする夜。
深夜、訪問看護にうかがう夜。
ぼんやり明くるくなった空を眺めながらの帰り道。
訪問看護から戻って布団に横になるものの、利用者さんのことが気になり眠れない夜。
昔、長男がまだ小さいころ、
「お母さん、行かないで!お母さ-ん。」
夫に抱えられ泣きじゃくっている長男に見送られながら、自宅を出発した夜もありました。
同じ夜。
何かあれば、看護師さんに相談すればいいからと安心して夜を迎えられるご本人やご家族。
苦しさや痛みがなく、夜を過ごされる方。
急な発熱や痛み、苦しさや体調の変化で眠れない方。
夜も介護をしながら、側についていらっしゃるご家族。
心配で、迷った挙句お電話をくださるご家族。
オンコールの電話連絡頻度は、その時々の利用者さんの状態や、医療依存度の高い方、お看取りの方がいらっしゃるかどうか等により異なります。
オンコール当番の責任感と緊張感は独特のものがあります。
とりわけ、訪問看護に従事して年数の浅いスタッフは、電話連絡があってもなくても、オンコール当番の夜は眠れぬ夜を過ごしている事が多いようです。
(昨夜はほとんど眠れませんでした)
という顔で、翌日出勤してくるスタッフもちらほら。
ただ一つ言えることは、オンコールをこなすようになると、訪問看護師としてのスキルは格段に上がるということだけは間違いありません。
今日で事務所は年末年始に入りますが、私たちの眠れない夜は続きます。
それでも、私達の眠れない夜があるからこそ、安心して夜を過ごされる方がいらっしゃる事を励みに。
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