マガジンのカバー画像

訪問看護〜回想録〜

21
訪問看護歴20年あまり。訪問先での出来事、思い出、学び。訪問看護いまむかし。
運営しているクリエイター

#訪問看護ステーション

答えの無い問い

Sさん。 武道を趣味とされ、戦後生まれの男性らしく無口で無骨な感じの方。週1回、状態チェックと、自宅での入浴の介助でお伺いしていました。 がんと診断され、余命3ヵ月と医師より宣告をうけてから、1年半が経ちました。 浴室でも自分からはほとんどお話しされないのですが、時々、自分からお話をされます。 「どうしてこんな病気になったのだろう?」 「余命3ヵ月と言われてから1年以上も生きているのはどうしてだろう?」 「もし、あなた(私に向かって)のご主人が同じ病気になったら、ど

一杯の紅茶

私が訪問看護に従事して、数ヶ月たった頃の、訪問看護師としては駆け出しの頃の話です。 Mさんは、自宅で在宅酸素をしながら過ごされていました。 徐々に食事が減り、うとうとされることが多くなり、いよいよ水分も取れなくなりました。 自宅にて点滴をすることになり、お伺いした時のことです。 ご高齢で、しかも数日食事をされていないので、脱水状態。点滴できそうな血管が見つかりません。 (この日、私は自宅での点滴の実施は初めてでした) 1回、2回と試みるも失敗。3回目も・・・すぐに漏れて

怒りの向こう側

Mさん。70代・男性。 呼吸器の病気があり、在宅酸素を使用。奥様が仕事をされているため、日中は1人自宅で過ごされていました。 病気がすすみ、少しの動作で呼吸苦が出現するようになり、今までは何とか1人で出来ていた事が1人で行うのが難しくなりました。 また、奥様の手を借りながらの入浴も、動作に伴う呼吸苦の為に困難となりました。 Mさんは、今まで1人でやってこられた方法や、こだわりが強くありましたので、ヘルパーさんの対応では身体のケアに関する援助は難しく、看護師の対応を希望され