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心を開いた相手【徳の湯@東白楽駅】(1/2)

 僕は友達が少ないほうだと思うし、増やしたいとも思わない。そもそも警戒心が強いために、不特定多数の相手とのコミュニケーションが苦手なのだ。初対面の相手との会話は精神的に疲れるし、必要に迫られない限り、僕は特定少数の人とだけ一緒に時間を過ごしたいと考えている。相手に心を開くまでに時間を要するのである。
 逆に、一度信頼をした相手に対しては、とことん心を開いて接するようにしている。「広く浅く」ではなく「狭く深く」が僕のモットーなのだ。ただ、結局のところ狭く深く付き合った相手を通じて、新たに信頼できる別の人と出会えることは多い。無理に出会いの機会を増やそうとしなくても、目の前の相手と関係を構築することができれば、そこから人脈は太く育っていくのである。

 では、僕がどのような相手のことを信頼しやすいのかというと、その共通点は「自己開示をする人」ではなく「相手の話をよく聞く人」だ。逆説的かもしれないが、自分自身のことを包み隠さずさらけ出してくれる人よりも、こちらの話を聞いてくれる人のほうが信頼できるのである。
 そもそも信頼関係を構築するためには、お互いがお互いのことを理解する必要がある。そして、相手のことを理解するために何が重要なのかというと、それこそが傾聴力なのだ。
 当たり前の話だが、自分ばかりが意見や情報を発信しても、その受け手となる相手の本心や価値観は見えてこない。もしも相手のことを理解したいと思うのであれば、自分から何かを発信する以上に、まずは相手のことを知ろうと思う姿勢、つまり傾聴力が大切なのである。これこそが、信頼関係構築の第一歩なのだ。
 コミュニケーションは「伝えてなんぼ」ではなく「伝わってなんぼ」なのだから、こちらが投げたい場所にボールを投げるのではなく、相手が立っている場所に向かってボールを投げなければならない。つまり、ボールを投げる前に、まずは相手が立っている位置を確認することが大切なのであって、自分がボールを投げた位置まで相手に動いてもらおうだなんて、実におこがましい考えなのだ。

 実際、これは僕だけに言えることではない。相手の信頼を獲得している人は相手の話をよく聞いているし、話を聞くのが非常にうまい特徴がある。
 僕の本業はライターだが、仕事では別のライターの取材に付き添いで同行することがある。これまでに複数のライターの取材を隣の席で聞いていたのだけれど、取材がうまいライターとそうではないライターには大きな差があった。前者は自然と相手の心を開き、次々と話を引き出すことができるのだけれど、後者はなかなか相手が心を開いてくれないために、どうも表面的な話しか聞くことができないのだ。
 なぜこのような差が生まれているのかというと、それは「話し方がうまいかどうか」ではなく「聞き方がうまいかどうか」によるものである。相手の心を開くことができるライターは、相手の話を最後までしっかりと聞いた上で適度に相槌を打っているのに対して、もう一方のライターは相手の話が最後まで終わる前に発言をしているのである。それではお互いに気持ちのいいコミュニケーションなどできるはずがない。

 僕は、そのようなコミュニケーションを取ることができる相手を中心に友人関係を維持するようにしている。それが僕にとっての安心に繋がるためであり、笑って毎日を過ごすための要素となっているためだ。そして今日、僕は珍しく、そんな友人らとサウナに行く計画を立てていた。4月25日(月)の横浜市内は、過ごしやすい気候だった。

ーー後半に続く

(written by ナオト:@bocci_naoto)

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