知ること、感じること。【なにわ健康ランド湯~トピア@大阪府】(3/3)
無事に1セット目を終えた僕は、2セット目をいただく前に腹ごしらえをすることにした。
浴場を出て、なにけん名物の館内着を着た状態で階段を通って4階に降りたのだけれど、なにけんファンたちの間では、ここで階段の鏡に向かって「#なにけんポーズ」をキメるのが定番になりつつあるようだ。さすがに僕は恥じらいを覚えてしまい、無難な記念撮影にとどめておいたのだが。
4階には広々とした食事処があり、ここでは冷麺と唐揚げをいただいた。どちらも本格的な味わいで、サウナによって体力を消耗し、そして火照った僕の身体に栄養とエネルギーが沁み渡ったのだった。
食後、小休憩を挟んでから、僕は再び浴場へと向かった。念のため簡単に身を清め直し、サウナマットを片手にもう一つのサウナ室の扉を開けると、なんとこちらは室内の熱が逃げにくい二重扉となっていた。なにけんのサウナへの本気度が伝わってくる設計だ。そして僕は、いよいよもう1枚の扉を開けたのだった。
「なにこれ!?」
そこには、まるで迷路のような、複雑な構造の空間が広がっていたのだった。どこから説明すればいいのかわからないほど、これまでに利用したどのサウナ室よりも個性を感じたのである。
室温は92℃で程よい明るさ、そして音が流れるテレビが設置されているところまでは他の施設となんら変わらないのだが、居場所のバリエーションが豊富なのだ。
すぐ左側には3段構造のベンチがあるのだけれど、これもソルトメディテーションサウナ同様に最上段は天井と近く、先客の男性が頭をぶつけてしまっているほどだった。もちろん上の段に行けば行くほど体感温度は上がるため、自分のコンディションや好みに合わせて蒸されることができるようになっている。
そしてその隣にあるのは2人分のベッドだ。ここでは横たわってリラックスしながら蒸されることができるのだが、これに出会ったのは駒込のロスコ以来であり、非常に珍しい。
さらにサウナ室は奥へと続くのだが、ここには1人分の半個室ブースがあったり、突き当たりにはグループ客の利用に向いていそうな並びのベンチが設計されていたりと、遊び心が感じられた。まるで4種類のサウナ室が1つに合体したような構造である。
それだけさまざまなベンチがあるため、30人は蒸されることができるのではないだろうか。この大きなサウナ室を熱しているのは2台のガス遠赤外線ヒーターと、そして ”ししおどし” が組まれたサウナストーブだ。この筒が傾いた時、ロウリュが発生するのは明らかだった。
僕は天井付近のベンチに腰をかけ、静かに蒸されることにした。運良く先客が全員いなくなったため、贅沢に貸切である。テレビの音に耳を傾けながら、僕はししおどしを見つめた。
1分経過、2分経過……まだまだ傾く様子はない。3分、4分……いったいいつその時が来るのだろう。そこには、妙な緊張感が漂っていた。
僕は一旦落ち着こうと、ベッドに移動して横になった。そしてゆっくり深呼吸しながら蒸されていた時、いよいよその時がやってきたのだった。サウナ室の湿度が上がり、僕の体に追い討ちをかける。それからさらに数分が経ったところで僕は限界を感じ、サウナ室を出てすぐ脇にある水風呂に、汗を流してから肩まで浸かった。
「おお! これは冷たい!」
水温は14℃。1セット目に入った水風呂よりもさらに低い。そこで火照った身体を30秒ほど落ち着かせてから、次に36℃ほどに設定された不感風呂へと浸かった。
ーーこの無重力感。最高だ……。
あまりの気持ちよさに、もう言葉が出てこなかった。脳内で情報が処理できず、溢れた感情は恍惚とした表情へと変換されていた。それから露天スペースに移動し、インフィニティチェアに身を委ねて仕上げに入ると、次第に僕の頭の中は空っぽになっていき、時間を忘れて幸福を噛み締めていた。
ーーこれは好きになっちゃうよ……。
関西地方のサウナ愛好家たちとは以前からTwitterで交流があったし、なにけんに関するツイートも何度も見ていた。ただ、言葉だけでは伝わらないこともある。実際に自分で体験して、そこからさまざまなことを感じ取って初めて理解できることもあるのだ。
(written by ナオト:@bocci_naoto)