1on1ではなく2on2の対話を試みることで組織の適応課題に向き合う方法
「他者と働く」で関係性を再構築する方法を学んだ。
組織はお互いのナラティブ(物語=語りを生み出す解釈の枠組み)で成り立っている。この関係性で生じた適応課題は「対話」が有効と説いていた。対話を通じて問題を観察して、私のナラティブに気づくのだ。
この「対話」にフォーカスした話が続編となる本書「組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2」だ。対話の具体的な方法と2on2というやり方を提案している。
自分も問題の一部である
本書は組織の問題をテーマに、問題が起きた時は人間の慢性疾患のように徐々に悪くなっていることが問題と解く。突然悪くなるのではなく、蓄積した結果大きな病になるイメージを持つとよいのだろう。
期限を守れないやアイデアの発案がないとか、何かうまくいかない・何かしなければいけないという状態。この状態が組織の慢性疾患と定義している。じゃあ、どうしたらいいかとなるがそれがわからない。
今見えている問題の枠組みから抜け出し、問題の捉え方を変え、組織をよりよい状態に導くための取り組み。
引用:P.84 組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2
その状態に向き合う方法に「対話」を提案している。
組織の中にいる私もあなたもナラティブの眼鏡をかけて世界を見ている。その世界から見た問題は問題の一部かもしれない。違う問題も隠れているかもしれないことを観察する必要がある。
そして、自分もその問題の一部であると気付く必要がある。その気づきに対話を用いる。
問題を単純化しない
対話は同調ではない。雑談でもない。相手に対してわかると気持ちを伝える行為でもない。ディベートでもない。特にディスカッションではない点に注注意したい。議題を解決する結論をとりあえず出すという行為は避けたい。
対話は、ディスカッションや雑談のコミュニケーションの基盤となるナラティブ(生きている物語)自体を変容させる行為です。
引用:P.99 組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2
なぜなら、対話は、新たな問題に気づく行為だからだ。問題発見をすること。それすなわち私の問題に気づくこと。私のナラティブを変容させる機会であって、問題解決策となる結論を急ぐ行為ではない。
つまり、問題が起こることそのものをナラティブの変容の機会と捉えて組織が変わることを受け入れる行為なのだ。その問題を通じて良くなるかどうかは対話次第だと解釈した。
問題とは、慢性疾患の存在を組織全体に教えてくれるありがたい存在です。
引用:P.160 組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2
対話をせずに回避したり問題を単純化した局所対処は、自分を通じても組織を通じても感じることはある。これが問題に気づけないモヤモヤなのだとしたら、私のナラティブが変わらない結果なのだとしたら対話するしかない。
自問自答(私のナラティブ)では出ない答えを他者を通じて知ることが必要だ。自分では気づけなくても他者なら気づくことは往々にしてある。
2on2はWhyではなくいつ頃からかを聞く
問題解決にはなぜと聞くことが重要だ。しかし、対話は問題解決をゴールとしない。結論を急がない。問題を捉えるためにいつ頃から発生していたのかを観察する必要がある。その方法に2on2の提案がある。
具体的な2on2のやり方は本書に委ねるが、おすすめテーマは以下とのこと。
当事者が困っていることについて語ることが大切で、他人や組織単位の困りごとについて語ってもあまり意味がありません。
引用:P.156 組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2
何に困っているのか。そして以下を話せるとよいそうだ。
・そのとき、自分がどんな気持ちになるか
・何が嫌なのか
・相手がその行動をしなくなったときに残るものは何か
引用:P.157 組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2
このように具体的に自分が困っていることを話すと、問題の見え方が変わってくるとのこと。これは実践したい。2on2(四人一組)でなくても、対話はこのような行為であると認識したい。
このとき、なぜと問うのではなく、いつ頃から・どこで起きたことか?を聞くことで問題にフォーカスすることができると学んだ。なぜを問うと問題解決策である結論を急ぐ行為になるからだ。まだ早い。問題が見えていない。
反転の問いかけ
対話では問いが大事と見る。本書より、反転の問いかけが有効に思った。たとえば、上司のナラティブと仮定して「部下が会議で主体的に発言しない」だったとする。このとき本書のやり方を参考にすると反転は以下だ。
・部下が主体的に発言しないためには会議前にどのような話をするとよいか
・途中から入ったメンバーが会議で発言しなたいためには、どんな経験を積ませることが有効か
といったあたりだろうか。つまり、今の状況をより悪化させる方法を考えるということだ。
この反転により、その状況を作り出すためにはどんな行動を取ると良いのかという掘り下げになり、本書では発生プロセス(P.162)と、自分がその問題とどのように関わっているかがわかると書いている。
そこまでいって、はじめてモヤモヤや困っていることが問題として外部化され、発生プロセスや他者の視点が入る。2on2ではその問題に名前をつけるといったポジティブな行為で問題を歓迎する誕生を祝う様な行為が目新しい。
問題探しをすることを目標に置いていある点が2on2の特徴だろう。
2on2を知ることで対話の真価を知る
今すぐ2on2をやろうということではない。もちろん、できるに越したことはないが本書にあるように注意点ややり方の実現性には慎重になるべきだろう。それこそ関係性の架け橋が必要だ。
ただ、この2on2というやり方を知ることで、組織の慢性疾患とは何か。前著にあるように対話を通じてお互いのナラティブを知るとはどうすればよいのか、対話の具体例が見えたように思う。
1on1でも問題を発見することはできる。2on2であれば組織単位で問題を発見することができるだろう。どの組み合わせであっても、モヤモヤとなる気持ちは組織に所属する限り感じることがある。
そのモヤモヤを問題として困っていることとして外在化することで、初めて解決する方法や、プロセスを変えることで発生しない方法を見つけるといったそもそも論を見つけることができるのだろう。
私はというと、対話という行為を組織単位でやるときの回数を多めにしているつもりだったが、最近あまりうまくいかないなと感じる場面に遭遇している。
私が問題から逃げたり対話を拒むことを気づかずにしているときもあったからだ。問題が起きて初めて対話ができていなかったということがあった。時間だの方針変更だの言い訳はいくらでも浮かぶ。
これは、私も問題の一部である、という思考が抜けていたためではないかと思う。せっかく前著で学んだことが活かせていないと感じた。その問題には内省や自問自答で気づくには限界があると2on2の方法を見て理解した。
結局、自分でなんとかしようという行為が組織の中で様々な問題となって、不健全な衝突が起きているのではないだろうか?組織の中で誰か一人ががんばろうとしている結果問題が大きくなるのではないか?
そう気づくことができた。そこで変わらないとなれば退職や休職となるのかもしれない。
ちょっと変わればよい
組織にいる限りは、自分のナラティブの問題は、自分自身で気づくには難しい。その仕組みの中にいる限り、わかる・できると思わない方がよいだろう。それは傲慢だ。
その思い込みがナラティブの強化になり、問題を見失う。見失っては解決しようがない。
この問題の見失うことを知ることで、問題解決に翻弄したり結論を急ぐ行為つまりはその場限りの対処といった、とりあえず解決案とか、これだけやっとれとか、これをしなさいといった行動が減る様に思う。
問題を単純化したいのは思考をサボる行為なのかもしれない。相手のことを組織のことを自分自身のことを考えてあげる時間を持てていないだけかもしれない。
前著の感想で書いたように人間相手の仮説検証は負担が大きすぎる。感情をないがしろにしてはいけない。組織の問題解決は単純化できないので、アプローチを多角的に捉える必要がある。
問題はそんなに単純ではないのだ。ちょっとずつ変わるしかないし、ちょっとずつしか変われない。ちょっと変わっただけでも進歩と見て積み上げていきたい。
単純化したがる思考を認識して、モヤモヤの発生プロセスを皆で発見していきたい。そんな組織作りに携わり続ける人でありたいと感じた。それを話せる場を作るためにも、互いに弱さを見せ合える関係を作りたい。
その上で無理なものは無理。ダメなものはダメ。となるのが人間だ。それを理解できなくてもいい。わかりあえなくてもいい。ナラティブは違っていても共に生きることはできる。
これが多様性を受け入れるということではないか。あなたが見えている世界をお互いが知り、私が見えている世界を変化し続けるのだ。そうやって世界が変わることができる。
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