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休日

来週のいとこの結婚式に必要なカバンを選びに、新宿へ向かった。ルミネエストは相変わらず、私とは別の世界を生きているような女の子ばかりで、小さくなりながらコソコソと歩く。店員さんに話しかけられないように倍速で商品をチェックし、ここではないと思ったらすぐ店を出る、というのをくりかえしたが、結局1番最初に見たものを買った。
滞在時間数十分。移動距離の方が長い買い物を終えて、このままどこかでご飯を食べようか、家で過ごすか、ぐるぐると考えて、何度か行った最寄りの喫茶店で本を読むことにした。

最後に来たのは、数ヶ月前。その頃よく会ってた男の子との待ち合わせ場所に使っていた。その日はとても暑くて、家に居られなくなった私は本を持ってかなり早めに喫茶店に行った。1人でアイスコーヒーだけを頼み1時間以上本を読む私を、店主のおじさんは何も言わずに放っておいてくれる。
というか、お客さんの席の一角を自分のデスクのようにして競馬新聞に夢中になっているだけなのだが。

彼は大切にしてるバイクでやってきた。ヴィンテージもので、エンジンが違うとかいろいろ教えてくれたけど正直よくわからなかった。何回かそこで待ち合わせしてることを知っているおじさんが、バイクの音を聞いて私に「来ましたよ」とだけ声をかけてくれたのが、映画のようで、嬉しくなってしまった。
その子にはその日、自分から告白のようなそうでないようなことを告げた。けれど今はそういう気分じゃないって言われて以来会っていない。その喫茶店にもその日以来足を運んだ。

久しぶりに来ると、あの時よりは冷房は控えめで少し暑かった。テレビは相変わらず競馬が流れていて、おじさんはいつのもの“デスク”に座っていた。私の後に来た中国人4人組に「そちらの予約席どうぞ〜!」と元気よく声をかけたのち、(あの閑散具合、予約はされていない様子)中国人とわかると中国語で話しかけていて、まさかのバイリンガルであることが判明した。
新宿の雑多にやられてどっと疲れが出てきた私は甘いものが欲しくてケーキセットを頼む。前来た時に待ちながらちまちま食べたレアチーズケーキ。
競馬は今、馬たちがゴールしたところだった。前一緒にきた男の子は常連だったらしく、競馬についてぼやくおじさんと競馬について会話していたので、「競馬したことあるの?」と聞いたら「ない」と言っていたのを思い出した。あの適当な感じが心地よかった。

なんだか、特別な場所のように思えていたこの喫茶店も
1人で来てみれば、普通の喫茶店だった。かなり思い出のフィルターをかけていたみたいで笑ってしまう。偶然来たりしないかな〜と、ついついお店の外を通り過ぎるバイクの音に敏感になる気持ちを抑え、今日はあっという間にケーキを食べ終えた。

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