遊佐未森の『潮騒』がヤバかったので全アルバムを聴いた(その1)
遊佐未森のアルバム『潮騒』がヤバい
この記事で言いたいのは「遊佐未森のアルバム『潮騒』がヤバいからみんな聴いたほうがいいよ!」という一点です。
遊佐未森って誰?
遊佐未森といえば90年代前半に幻想浮遊系ポップス、叙情ロック、ネオアコの旗手として注目された歌手。
アルバム『ハルモニオデオン』『HOPE』『モザイク』はそれぞれオリコン5位まで行ってTV番組にもそこそこ出演していたので、特定の年代の人なら聞き覚えのある曲もあるでしょう。
一番売れたのはアニメ映画『アルスラーン戦記』の主題歌になった「靴跡の花」なのかな?
しかし、それ以降どんな活動をしていたのかは追いかけていない人も多いのでは?と思っています。
私もその一人で『HOPE』『モザイク』は当時よく聴いたけれどその後どんな音楽をやっていたのかは知りませんでした。(最近はアイリッシュに傾倒してるらしいよ、なんて噂は耳にしてたけど。)
『潮騒』はどうヤバいのか?
で、最近になって最新アルバム『潮騒』をたまたま耳にしたところ、これがヤバかった。
中身はエレクトロニカ、フォークトロニカを通過したポストクラシカル。
従来のJ-Popのフィールドでは絶対に実現できないシリアスな音楽。
本来であれば雑音として取り除かれるであろう細かなノイズ、ピアノのペダルの音、息遣いなどが音の立体感と質感を生み出している。
波形を見ると一目瞭然なんだけど、ダイナミックレンジが広くてそれだけ繊細な音が含まれている。
その分、他の音楽と混ぜてBGMとして聴いてしまうと何の引っ掛かりもなく過ぎてしまう。
ぜひ、ちょっと良いスピーカーかヘッドフォンで聞いてほしい。
オーディオマニアならご自慢のバックロードホーンの出番ですよ!
似た音楽もあまり思い浮かばない。
比較的近いところでアイスランドのamiina、あるいはPortisheadの『Roseland NYC Live』あたり。それもちょっと違うか?
遊佐未森の音楽はどう進化してきたのか?
そうすると90年代前半の幻想浮遊系ポップスから現在のポストクラシカルまでどんな風に変化してきたのかが気になります。
ということで現時点での遊佐未森の全オリジナルアルバム20枚を聞いて、その音楽性の変遷をまとめたのがこちらの図。
私の独断と偏見に基づくものですのであしからず。
背景にあるスタッフの変化などは考慮せず、あくまでも音だけを手掛かりに分類しています。
ざっと6つのフェイズに分けました。
メルヘン期
模索期
ニューエイジ期
エレクトロニカ期
シンガーソングライター期
ポストクラシカル期
メルヘン期について
デビュー作『瞳水晶』から『モザイク』までをメルヘン期としました。
遊佐未森のパブリックイメージになっているのがこの時期でしょう。
『瞳水晶』『空耳の丘』『ハルモニオデオン』は今聞くとまだ流行のガールポップに未練がある感じでファンタジーな世界観に振り切れていないところがあります。
しかし『HOPE』と『モザイク』ではコンセプトが明確に確立していてアルバムとしての完成度が高く、コンセプトアルバムとして聴けます。
『モザイク』については初のセルフプロデュースということなのだけど、それまでの路線を踏襲していて音楽的に大きな変化があるわけではなく、素直な進化形という感じです。
『潮騒』がリリースされるまではこの2枚が遊佐未森の音楽の頂点であったと思います。
代表曲をいくつか挙げてみます。(先に挙げた「靴跡の花」以外で。)
まずは「夏草の線路」。
メジャーになったきっかけはCMに使われた「地図をください」なんだけど、遊佐未森にハマったきっかけになったのはこの曲という人も多いのでは。代表曲と言っていいでしょう。
ちなみに印象的なギターリフは The Who 「Baba O'Riley」からの引用のようです。30秒目あたりから。
次に重要なのが「君のてのひらから」
この曲が遊佐未森自身の作詞作曲による最初の作品。ごめんなさい!
この曲にこの先のキャリアのすべてが詰まっているといってもいい。
自身が作詞作曲した作品は「川」(『空耳の丘』収録)の方が先でした!
そしてこれらのアルバムには含まれないシングル曲で「シリウス」
今聞くとちょっと平沢進のソロっぽくも聞こえる。
まあ、繰り返しになるけど『HOPE』『モザイク』はアルバムとしての完成度が高いので全部名曲なんですけどね。
あと、『HOPE』と『モザイク』の間にリリースされたシングル「ONE」も要チェック。
といったところで記事が長くなってきたので模索期以降は記事を分けます。